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三番目にうちの子になったのはビビ

~鈴木千佳子の日記27~

11年前の、季節は冬だったか春だったかは忘れてしまったが、ともかく11年前のある夜。私は近所のケイちゃんから、
「仔猫を見にこない?」
との電話をうけた。

仔猫は、見てはいけない、ぜったいに。
だってぜったい一緒に生活したくなるからだ。


当時わが家には猫のチャムがいて、そうして犬のチロルがいた。

チャムは13年間ひとりっ子だったため、数年前ある事情で犬のチロルがうちの子になったとき、多大なストレスを感じたのだろう、かわいい頭にマルハゲができてしまった。


幸いすぐに、猫と犬は仲良くなり、ハゲも癒えたのだが、
「だからもう、これで動物を増やすのはナシね」
と、かねがね夫とも話していたころだった。


だから行かないよ、となんにも罪のないケイちゃんに、かなり強めに伝えたものの、彼女も引かない。
「すっごく小さくてすっごくかわいいよ。見においでよ」

スッゴクチイサイ? スッゴクカワイイ?

そんなワードを聞いたら、見たくなってしまうに決まっている。ケイちゃんは姑息だった。


夫は私がどう答えるか、耳をそばだてている。ついに私はいった。
「じゃあ行くよ。最近一緒に呑んでないからさ。呑みに行く。それだけだよ」

電話を切って夫に向かい、聞いたでしょう? 呑みに行くだけです、もらってきません、大丈夫ですよ、の満面の笑みを浮かべて、私はケイちゃんの家に行った。



結論からいおう。私は仔猫を家に連れてきた。

だから見てはいけないのだ、仔猫というものは。



ケイちゃんの家には、かわいい仔猫が三匹いた。茶トラとキジトラと、黒白の二毛と。生まれてから、まだ1カ月も経っていないという。
「茶トラとキジトラはうちで飼うんだけどさ。この子、ダメ?」


黒白の二毛は、他の二匹より明らかに小さく、手のひらサイズどころか小鳥サイズだ。


ケイちゃん、あんた、卑怯だよ、と私は彼女を心の底から罵りつつ、でもやっぱり仔猫の魅力には勝てず、
「じゃあうちの子になりなさい」
と、私はその黒白ちゃんをそっと抱きあげて、夜中に帰宅した。


むろん夫には事後報告だったので、夫はその日一日プンプンしていたが、夜にはすでに仔猫に夢中になっていた。



名前は私が『ビビ』と名付けた。ビビりのビビだ。

ほんとに怖がりで、抱きあげても震え、ゴハンも震えながら食べ、どこかでこっそり眠っているという日々が、けっこう長く続いたように記憶している。


先住猫のチャムはやはりハゲができ、先住犬のチロルは、ビビと会った瞬間に怖さのあまり、チッコを漏らした。この犬もかなり臆病なのだが、それはまた機会があったらお聞きください。


野良経験がまったくないビビは、自分の毛づくろいがヘタだった。チャムはやさしい猫だったので、背中に怒りマークを貼りつけながら、
「しょうがないなっ! もうっ!」
的な感じで、一生懸命ビビの体をなめてあげていた。


「遊んでー」
と、ビビが寄っていくと、
「シャーー!」
とか、
「はーー!」
とかいって威嚇するものの、気づくと一緒に寝ていたり、いつしかとても仲良しになっていた。

チャムビビ

チャムがこのようにカツオ節をねだるため、それに倣い、ビビもそうなった。


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ビニール袋で遊んでいて、それが首にかっちりはまり、ガサガサの音に怯え、ビニール袋と一緒に部屋中を走り回るというベタなことを、ビビはしてくれた。


去勢手術がとっても怖かったんだろう。帰ってきても隅っこにじっとうずくまって、ご飯をぜんぜん食べなかった。
「ホラ、食べなよ」
と、ネリネリご飯(わが家では缶詰ご飯をこう称する)を煮干しにつけて、食べた食べないと、半泣きになって過ごした夜もあった。


ビビはシモが弱い猫で、したくなるとところ構わずチッコをしてしまうので、よく被害に遭っていた夫はほとほと困り、困ってはカンカンに怒るをくり返していたが、実は尿管の病気だったことがわかり、
「ビビっ・・・。あんなに怒ってごめんっ」
と、夫を後悔のどん底に落としたこともある。



愚かにも数年前、私はガラケーを、酔った拍子にどこかで紛失してしまうというへまをやらかしてしまったため、ビビの仔猫時代の写真があまり手元にない。


いちばん身近でこんなところ、でしょうか。といいつつ、むろん厳選したのはいうまでもありません。かわいいでしょ。

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ペット自慢の投稿なので、猫バカぶりを許していただけるとありがたいものである。

ビビは、チャムのおかげもあって、こうして今も元気に生きている。
ビビを語ると、チャムが出てきてくれる。

チャムがお星になったのは9月。またチャムを書くことができてうれしいなと思う。noteのカミサマに感謝を申しあげる。


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