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「床に血だまりができている→布で拭く→むしろ血だまりが広がってしまい、いつまで経っても床はきれいにならない」という描写によって、「よかれと思ってしたことがかえって傷口を広げてしまったのかもしれない」と示唆する ~映画「ブラックホーク・ダウン」の場合

ハレル中佐「We got a Blackhawk down, We got a Blackhawk down.」(ブラックホークの墜落を確認、ブラックホークの墜落を確認)

映画「ブラックホーク・ダウン」




◆概要

【「床に血だまりができている→布で拭く→むしろ血だまりが広がってしまい、いつまで経っても床はきれいにならない」という描写によって、「よかれと思ってしたことがかえって傷口を広げてしまったのかもしれない」と示唆する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「ブラックホーク・ダウン」

▶1

1993年10月、舞台はソマリア。「モガディシュの戦闘」と呼ばれる凄惨な市街戦が発生した

事の顛末を大雑把にまとめてみよう。


ソマリアでは激しい内戦が続き、

・Step1:多くの人々が飢えていた。

・Step2:状況を打開すべく、米軍は「危険人物アイディードの側近を拉致する」という作戦を立案。アイディード派が支配する危険な地域に約100人の精鋭部隊を投入した

・Step3:なお、この作戦は30分ほどで完了する予定だった。


ところが、

・Step4:アイディード派の無数の民兵(=武装ゲリラ)が立ちはだかった。彼らはビルの屋上から、ビルの窓から、そして地上から、自動小銃やらロケットランチャーやらを撃ちまくった。撃って撃って撃ちまくった。

・Step5:というわけで、米兵は思うように動けない。もちろん彼らも反撃するが、しかし民兵は数が多い。多勢に無勢である。

・Step6:加えて、民兵はあちこちにバリケードを築いた。ゆえに米軍の車両部隊の動きも悪くなる。さらにはヘリまで撃墜される。次第に死傷者が増えていった……。


米兵たちは窮地に追い込まれる。

・Step7:彼らは民兵と戦いつつ、「Leave No Man Behind(誰も置き去りにするな)」の精神で負傷者を救おうとした。さらに、戦死した仲間の遺体を守ろうとした。司令部も救援チームを派遣した。

・Step8:が、負傷者や遺体を守ろうとした者がまた攻撃を受ける。救援ヘリも撃墜される。そう、被害はさらに拡大していった……。


その後いろいろあって国連軍などの救援を受け、米軍は撤退を完了した

・Step9:作戦開始から15時間(!)が経っていた。敵味方、そして一般市民にたくさんの犠牲が出た。


で、物語終盤。

・Step10:野戦病院では、負傷した米兵の手当てが行われている。ベッドから血がしたたり、床に血だまりができているのが見える。

・Step11:そこに、ガリソン少将(米軍の司令官)がやってきた。沈痛な面持ちだ。彼は血だまりに気づくと布を手に取った。そして床にひざまずいて血を拭いた。ごしごしごしごし……しかし血の量が多すぎるせいか、血だまりはむしろ広がってしまう。いつまで経っても床はきれいにならない。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step11である。

ガリソン少将がいくら拭いても、一向に床はきれいにならない。むしろ血だまりは広がるばかり――。


このシーンは、

・悲惨な現状(ソマリア内戦、飢餓)を打開すべく、米軍は精鋭部隊を投入した。 →その結果:激しい戦いが起きて、敵味方、そして一般市民にもたくさんの犠牲が出た

・「Leave No Man Behind(誰も置き去りにするな)」の精神で、米軍・米兵は救援を続けた。 →その結果:被害が拡大した

……といった皮肉な展開を象徴していると考えられる。


つまり、【「床に血だまりができている→布で拭く→むしろ血だまりが広がってしまい、いつまで経っても床はきれいにならない」という描写によって、「よかれと思ってしたことがかえって傷口を広げてしまったのかもしれない」と示唆する】というテクニックである。


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