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物語序盤、ヒーローの知人が「俺たちのボスに会いたければ、ズボンからベルトを抜いてそこに置いていけ」と警戒感を示す→物語終盤、強敵に苦戦するヒーロー。やがて彼は自らのズボンからベルトを抜き、手に取った

ディレクターの部下「ベルトもだ」

映画「ジョン・ウィック:パラベラム」


◆概要

戦闘シーンを盛り上げるには、戦闘前から伏線を張ったり、布石を打ったりしておくことが重要だ。

【物語序盤、ヒーローの知人が「俺たちのボスに会いたければ、ズボンからベルトを抜いてそこに置いていけ」と警戒感を示す→物語終盤、強敵に苦戦するヒーロー。やがて彼は自らのズボンからベルトを抜き、手に取った】はその一例。


◆事例研究

◇事例:映画「ジョン・ウィック:パラベラム」

▶1

本作の主人公は、ジョン・ウィック(男性、30-40代頃)。

彼は伝説の暗殺者だ。一時的に裏社会を離れていたものの、ゆえあって再び銃を握ることになった。


▶2

さて、物語序盤にこんなシーンがある。


いろいろあって、

・Step1:巨大組織から命を狙われることになったジョン。

・Step2:ジョンは「ディレクター」と呼ばれる裏社会の実力者を訪問して助力を求めることにした。

・Step3:ジョンとディレクターは昔馴染みだ。……が、いくら昔馴染みとはいえジョンは伝説の暗殺者である。危険な男だ。ゆえに面会前、ディレクターの部下が命じた「ポケットの中のものはすべてここに置いていってくれ」。ジョンは大人しく従う。

・Step4:さらに、ディレクターの部下は言った「ベルトもだ」

・Step5:ジョンはじろっと部下の顔を見た。「おいおい、そこまでさせるかよ」という感じだ。しかし、仕方がない。いまのジョンに選択肢はない。彼はズボンからベルトを抜き、それをテーブルの上に置いた。


このシーンを見た鑑賞者の多くは、「ほぉ。ベルトも持ち込み禁止か」「まぁジョンは伝説の暗殺者だ。警戒するのは無理ないだろう」「しかしそれにしても……ジョンはベルトを何に使うのだろうか?」「敵の首を絞めたりするのだろうか?」などと感じたことだろう。


▶3

次いで、物語終盤のシーンを見てみよう。


いろいろあって、

・Step6:武術の達人2人と対峙したジョン。

・Step7:敵は強い。しかも連携がよく取れている。ついでにナイフのような武器まで持っている。さすがのジョンも苦戦する。このままではまずい!

・Step8:かくして……スッ。ジョンは自身のズボンからベルトを抜き、それを手に持った。

・Step9:この後、ジョンはベルトを駆使して見事に敵をぶちのめすことになる!


ご注目いただきたいのはStep8である。

ジョンがベルトを手にした瞬間、多くの鑑賞者は「おおっ!」と興奮したに違いない。「出たぁ!ベルトー!!」「ここでベルトの出番か!!」とボルテージが上がり、「はてさて、ジョンはベルトをどのように使うのだろうか?」と気がそそられた人は少なくないだろう。


つまりは、そう!物語序盤のStep4が布石となり、物語終盤(クライマックス)のStep8-9が盛り上がるというわけだ。もしもStep4がなければこの盛り上がりはない。

巧い構成である。


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