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ログラインを徹底解説【Part2:ログラインはこうやって書くのだ!!】

引き続き、ログラインについてご説明します。

※本記事はPart2。Part1からご覧になることをお勧めします。


Part1の振り返り


Part1ではログラインの<目的>をご説明しました。


すなわち……

・1:ログラインは、あなたの<アイデア>を売り込むためのツールである

・2:映画会社のプロデューサーやエージェントに「ほぉ!これは面白いアイデアだ。脚本を読んでみよう」と思わせることができたら目標達成

・3:ログラインが求められるのは、<プロデューサーやエージェントはクソ忙しく、すべての脚本を読むことができない>というハリウッド映画界の事情ゆえである。つまり、ログラインは現在のハリウッド映画界に最適化したツールなのである


これぞ、ログラインの主たる目的でした。


それでは本記事では、ログラインを書く時のポイントやコツをご説明しましょう。


参考サイト一覧


本記事を書くにあたり、以下の8つのサイトを参考にしました。いずれも、ハリウッド映画の脚本執筆術に関する英語サイトです。


▶参考サイトA:Filmarket Hub


▶参考サイトB:MasterClass

https://www.masterclass.com/articles/screenwriting-tips-how-to-write-a-logline


▶参考サイトC:NFI


▶参考サイトD:Studiobinder


▶参考サイトE:IndieWire


▶参考サイトF:New York Film Academy


▶参考サイトG:RAINDANCE


▶参考サイトH:SCRIPT READER PRO


人の心を動かす文章はどうすれば書けるのか?


<1>

上述の通り、ログラインの目的は【プロデューサーやエージェントに「ほぉ!これは面白いアイデアだ。脚本を読んでみよう」と思ってもらうこと】です。


つまりですね、

「えっ!この先どうなるの!?」と読む人(プロデューサーやエージェント)の好奇心を掻き立てたり、

「メッチャ続きが気になるんですけどー!」「結末を知りたいんですけどー!」とじらしたり、

「これ、絶対にハラハラドキドキする話じゃん!うわー、読みたい!」「絶対萌える話だよー!気になるなー!」などと脚本を読んだ時に生起する感情を示唆してやったりする文章

………それがログラインなのです。


<2>

しかし。

そんな人の心を動かしまくる文章をどうすれば書けるのでしょうか?

ルールやコツのようなものがあるのでしょうか?


ルールもコツも……ある!


ということで、以下1つずつご説明していきましょう。


【Point1】短く、簡潔に


<1>

ログラインは、兎にも角にも短く簡潔でなければならぬ!

……これ、考えてみれば当たり前のことです。


だって、そもそもログラインというのは、

・Step1:プロデューサーやエージェントはクソ忙しい

・Step2:ゆえに、すべての脚本に目を通す時間はない

・Step3:そこで、まずは脚本のエッセンスだけをコンパクトにまとめた文章(= ログライン!)を読み、気になった作品のみ脚本も読もう

……という経緯で登場したものなのです。


そのログラインが冗長だったら本末転倒ですよね。


<2>

参考サイトAを見てみましょう。

But, why so brief? Basically, because the readers of your logline, in other words, the producers, don’t have the time to read more. In fact, they don’t have time for almost anything. So, your presentation card for your work has to be able to strike their attention in a question of seconds. In a tenth of a second, even. If the first thing that the readers of your project come upon is a two page 1200 words essay, it will most likely end up in a drawer full of dust. Or in the bin.

曰く、「プロデューサーはクソ忙しい。もしもあなたがログラインですと言って2ページに渡るエッセイを書いてしまったらどうなるだろう?その時点でアウト、ゴミ箱行き確定である」とのことです。

まぁ、そりゃそうですよね。


<3>

ここからは、より具体的に考えていきましょう。

ずばり何文字くらい、何センテンス(何行)くらいが望ましいのでしょうか?


結論から申し上げますと、参考サイトの多くが、

30-50単語程度

・基本的には1センテンス、場合によっては2-3センテンスになることもある

……と規定しており、これがハリウッド映画界の標準と考えてよさそうです。


<4>

ここで実際のログラインをいくつかご紹介しましょう。いずれも参考サイトHからの引用です。


まずは、映画「セブン」のログライン。

Two detectives—a rookie and a veteran—attempt to catch a serial killer who uses the seven deadly sins as his modus operandi before he kills again.

27単語、1センテンスです。


参考までに日本語に訳しておくと……「新人とベテラン、2人の刑事が<七つの大罪を手口とする連続殺人犯>を逮捕しようと奮闘する。殺人犯が次の事件を起こす前に捕まえるのだ」なんて具合でしょうか。


<5>

続いて、映画「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」のログライン。

Three buddies wake up from a bachelor party in Las Vegas, with no memory of the previous night and the bachelor missing. Now they must put together the pieces of the night before and get him to the altar before it’s too late.

こちらは43単語、2センテンスです。


日本語にすると、「ラスベガスで開催されたバチェラーパーティーでのこと。バチェラーの親友3人が目を覚ますと、前夜の記憶がなく、しかもバチェラーは行方不明になっていた。彼らはいま、前夜の出来事の断片をつなぎ合わせて、バチェラーを祭壇に連れて行かなければならない。手遅れになる前に」という具合でしょうか。


<6>

……とここまでご覧になって、「えっ!?30-50単語程度で1センテンス!?そんなに短く要約できないよ!冗談じゃない!!」と感じた方は少なくないと思います。

確かに。

相当きつい印象ですよね。


でも大丈夫!

だって、ログラインは要約ではないのですから!


参考サイトE曰く、

If you’ve ever tried to explain your entire feature film to someone in one sentence, you’ve surely found that it can be quite challenging. After all, it simply isn’t possible to convey every last detail of a 110 page script in a sentence or two. And unfortunately, when dealing with anyone that can really do something for your film, all you might have is a sentence or two worth of time to get your idea across. That’s okay though because you don’t need to give away the entire story — in fact you shouldn’t. The goal is to sell the idea of the script, rather than the story itself, and the most effective way to do this is with a strong logline.

「自分の作品全体をたった1センテンスで誰かに説明するのは、まぁ不可能です。しかし問題ありません。ストーリーの全体像を伝える必要はないのですから。だってログラインの目標は『ストーリーを伝えること』ではありません。『アイデアを売り込むこと』なのです」。


そうなんですよ!

ストーリー全体を要約しようとするから、「えっ!?30-50単語程度で1センテンス!?そんなに短く要約できないよ!冗談じゃない!!」と頭を抱えることになるのです。


原点に返りましょう。すなわち、ログラインとは【あなたの<アイデア>を売り込むためのツール】である!

ストーリー全体をまとめるのではなく、自分の作品の宣伝文を書くと思えば……まぁ結構いけそうな気もしますよね?


【Point2】ログラインに絶対に含めるべき要素:主人公


ここからは、<ログラインに絶対に含めるべき要素>をご説明します。


<1>

まずは、【主人公(protagonist)】

私たちはログラインを通じて、プロデューサーやエージェントに<主人公の個性・特徴>をきっちり伝えなければなりません


……って、まぁそりゃそうですよね。

主人公がどんなキャラかわからなければ物語に興味は持ちづらい。当然、「脚本を読んでみたい」という気持ちも湧いてこない。つまり、ログライン失格です。


<2>

が、しかし!

主人公についてきっちり伝える必要がある一方で、アレコレ細かく説明する余裕はありません。だって、ログラインは極めて短く簡潔でなければならないのですから。


参考サイトH曰く、

 The trick is to build as specific and as vivid a thumbnail sketch of your protagonist as possible in as few words as possible.

「重要なのは、『できるだけ少ない言葉で、できるだけ具体的に鮮明に主人公を描写すること』です」。


<3>

はて。

できるだけ少ない言葉で、できるだけ具体的に鮮明に主人公を描写するにはどうすればいいのでしょうか?何か秘訣があるのでしょうか?

……あります!


多くの参考サイトでは、

・Step1:まずは主人公の最大の特徴を明確にすべし

Step2:続いて、その特徴をずばり表現する<形容詞と名詞の組み合わせ>を考えるべし

……と説いています。


<4>

例えば参考サイトB曰く、

List out all of your main character’s biographical and physical information, then select the strongest adjective and proper noun combination that represents who they are. 

「主人公の経歴や身体的な情報をすべてリストアップし、そのキャラを表す最も強い形容詞と固有名詞の組み合わせを選びましょう」。


<形容詞と名詞の組み合わせ>はいろいろ例示されていて、

・参考サイトAの例:「シャイな億万長者(shy + millionaire)」、「大胆な冒険家(daring + adventurer)」

・参考サイトBの例:「陽気な学校の先生(cheerful + school teacher)」、「エリート主義の葬儀屋(elitist + funeral director)」

・参考サイトDの例:「美しい暗殺者(beautiful + assassin)」、「熱血漢のキャスター(hot-headed + anchor)」

・参考サイトEの例:「アルコール依存症の外科医(alcoholic + surgeon)」

……なんて具合です。


いかがでしょうか?

「シャイな億万長者」とか「アルコール依存症の外科医」とか、もうそれだけでちょっと面白そうですよね?ストーリーが気になってきますよね?


つまり……そう!形容詞と名詞を巧く組み合わせれば、たった数単語で主人公に興味を持ってもらうことができるというわけですね。


<5>

一方、大半の参考サイトは「ログラインには主人公の名前を載せるべからず。そんなものは不要!」と主張しています。

なぜか?


参考サイトG曰く、

It has no intrinsic information and so is a useless word.

「キャラの名前は本質的な情報を持っていません。だから役立たずなのです」。


考えてみればこれは納得です。

だって……

・Step1:「主人公の名前が佐藤だと!?つまり○○なキャラだな?これは面白そうだ!」なんてことを考える人はいない。佐藤だろうが高橋だろうがどうでもいい

・Step2:そして、ログラインにはどうでもいい情報を含める余裕はない

・Step3:ゆえに、ログラインには主人公の名前を載せるべきではない


<6>

しかしこれ逆に言えば、【キャラの名前が<本質的な情報>を持っている時にはログラインに載せるべきだ】ということになります。


例えば、

・例1:「私が書いているのは歴史もので、主人公は織田信長なんだ!」

・例2:「主人公はキラキラネーム。それがストーリーに大きく関わってくるんだよ!」

……なんて場合には、キャラの名前に大きな意味がある。ゆえにログラインにばっちり載せるべきなのです。


要するに、「主人公の名前は絶対に載せるべきではない!」ではなくて、<主人公の個性や特徴を読み手に伝える>という目的に照らし合わせて必要なら載せる、不要なら載せないと判断するのがいいでしょう。


【Point3】ログラインに絶対に含めるべき要素:主人公の目的/敵対者/対立


<1>

続いては、

・主人公の目的(protagonist’s goal / objective  want  need)

・敵対者(antagonist / villain / obstacle)

・対立(conflict / struggle)

……です。

この3つは重なり合っている部分があり、それどころか場合によってはほとんど同内容になることもあるので、まとめてご説明します。


<2>

さて。

そもそも大体の物語は、

・Step1:主人公が何かを為そうとする(目的

・Step2:邪魔が入る(敵対者

・Step3:主人公はそれを乗り越えんとして奮闘する(対立

・Step4:ハッピーエンド or バッドエンド

……という流れをたどるものですからね、ログラインにもこれらの要素が必要だというのは頷けます。


参考サイトA曰く、

Stories in general, and especially fiction, are, in essence, conflict. Someone who is confronting something. And it is precisely that challenge and that battle what makes the story so enticing. The objective of the main character and the obstacles he has to confront and overcome must be in the logline.

物語の本質は『対立』です。誰かが何かに立ち向かう、その挑戦や戦いこそが物語を魅力的なものにするのです。したがって、当然ログラインにもそれが必要です」。


<2>

一口に【目標/敵対者/対立】と言っても、その中身は多様です。


例えば参考サイトB曰く、

Goals can range from a character wanting to kill their nemesis to wanting to find her birth father or reversing the zombie outbreak.

「目標は『宿敵を殺したい』というものから『実父を見つけたい』、『ゾンビの発生を食い止めたい』というものまで様々です」。


また参考サイトH曰く、

Your antagonist can be a physical person, a storm, a pack of wolves, an asteroid, or whatever you choose. 

「敵対者は『物理的な人間』でも『嵐』でも『狼の群れ』でも『小惑星』でも何でも構いません」。


<3>

そう、【目標】も【敵対者】も【対立】も何だっていい。クリエイターが好きなように設定すればいいのです。


……が、しかし!いくつか注意すべきことがある。


<4>

まず、【目標】はなるべく具体的に明記するようにしましょう


例えば、

・例1:主人公は愛を取り戻すために戦う

・例2:正義のために命がけの戦いに挑む

……なんて書いてあっても、どんな物語かイメージがつきませんよね。


参考サイトD曰く、

If you wrote a movie logline that stated, "a man sets out to build a robot," it may be a goal, but it is a bit too bland, and possibly too broad. That same logline can be strengthened by adding a specific, testable goal. A man sets out to build a robot to win a competition. Immediately, we can visualize a competition and a clear way to benchmark the protagonist's success.

「『主人公がロボットを作ろうとする』という目標はいまいちです。しかしこれが、『主人公はロボットを作ってコンテストで優勝を狙う』になれば、ストーリーが見えてくる」。


<5>

また、【目標】がそう簡単に達成できてしまっては物語は盛り上がりません。ゆえに、「本当に乗り越えられるのか!?」「これは絶望的だわ……」と思うくらいの【敵対者】と【対立】する方がいい


参考サイトH曰く、

What’s important to get across in the logline is just how super frustrating this struggle will be for your protagonist.

「重要なのは、敵対者が主人公の目標達成を徹底的に妨害するということです」。


<6>

なお、大体の物語には複数の【敵対者】が登場し、複数の【対立】が描かれるものです。


例えば「ドラえもん」。

のび太がしずかちゃんとデートしようと思った時に彼の前に立ちはだかる【敵対者】は、ジャイアンだけではありません。スネ夫や出木杉くん、学校の先生、ママやパパ、さらには学校のテストや体育の授業、宿題、悪天候、金欠、しずかちゃんの習い事などなど、たくさんの邪魔が入るのが常です。


しかし。

複数の【敵対者】、複数の【対立】が登場するといっても、そのすべてをログラインに列記するわけにはいきません。何しろ、ログラインは短文なのですから。

ではどうすればいいのか?


参考サイトB曰く、

Select the conflict with the highest stakes (but make sure it still makes sense in your story).

「ハラハラドキドキ度が最も高い対立、最もヤバそうな対立をピックアップして記載すべし」とのことです。


【Point4】ログラインに含めるべき要素:物語の舞台、世界観


<1>

ここまで申し上げてきた【主人公】と【主人公の目的/敵対者/対立】は、ログラインに絶対に含めるべき要素でした。ほとんどすべての参考サイトがそう明言しています。


これに対して、<絶対に含めるべき>とまでは言えないものの、しかし<含めた方がいい要素>もあります。

それが、

・物語の舞台、世界観(context / setup)

・インサイティング・インシデント(inciting incident / catalyst / call to adventure)

……の2つです。


<2>

この2つをログラインに含めるか否かは、「含めることでログラインはより一層魅力的になるか?」「脚本を読みたいという気持ちはより一層高まるか?」という点から判断するべきでしょう。


参考サイトCは、この辺りの事情を以下のように説明しています。

For example, a movie follows a French mother looking to deliver a child in the 1500s. It is a fact that scientific advancement in France at that time had not seen a lot of advancement. Therefore, there is a high chance the delivery will go awry. This probability helps to add more stakes that compel the viewer to watch the movie.

すなわち……1500年代のフランスを舞台にした出産を描いた映画がある。そしてこの映画では、<作品の舞台 = 1500年代のフランス>と明言する必要がある

なぜか?

当時のフランスは科学技術の水準が低く、出産がいまよりもずっと難事業だったからだ。<出産 = 難事業>の時代が舞台だからこそ、「ほぉ。どんな物語なのだろう?」「出産は成功するのだろうか?」と気になり、脚本を読んでみたいと思うのだ


まさに、【物語の舞台、世界観】を含めることでログラインが魅力的になる例ですね。


【Point5】ログラインに含めるべき要素:インサイティング・インシデント


【インサイティング・インシデント】とは、主人公が目標を抱くきっかけ、または敵対者と対立するきっかけとなる出来事のことです。


例えば、【巨大隕石が地球に落下してくると判明、主人公は隕石を破壊して地球を守らんと決意した】という物語。この場合、【巨大隕石が地球に落下してくると判明】がインサイティング・インシデントです。

同様に、【主人公が高校に入学し、その後○○部に入部してライバルたちと対立することになる】という物語なら、【高校入学】がインサイティング・インシデントに該当します。


【Point6】ログラインを書くコツ:ハラハラドキドキ感のある作品だと示唆する


ここからは、ログラインを書くコツ、ログラインを書く時に意識しておくべきことをご紹介しましょう。


<1>

まずは、【ハラハラドキドキ感(stake)のある作品だと示唆する】


ハラハラドキドキ感は重要です。

というか、物語においてはハラハラドキドキ感ほど重要なものはないと言っても過言ではありません。


だって、考えてみてください。ハラハラドキドキ感皆無の物語……そんなもの見たいですか?見たくありませんね。退屈で居眠りしてしまうに違いない。


<2>

参考サイトDは、映画「スピード」を例にあげています。

Having stakes is the basis of how to write a logline. Consider the movie logline for the 1994 film, Speed. A young police officer must prevent a bomb exploding aboard a city bus by keeping its speed above 50 mph. Without "by keeping its speed above 50 mph," this logline loses not only its stakes but also what keeps us invested in the plot.

「スピード」のログラインは、【若き警官が、市営バスに仕掛けられた爆弾の爆発を防ごうとして悪戦苦闘する。爆発を防ぐには、市営バスの速度を50マイル以上に保つ必要がある!】。


これ、どう思われますか?

「『市営バスの速度を50マイル以上に保つ必要がある』ということは……なるほど!主人公が速度を保とうとして試行錯誤するわけか!『まずい、50マイルを下回ってしまう!』『おー、ぎりぎりセーフ!』なんて風に手に汗握る展開が期待できそうだなぁ!ハラハラドキドキの物語に違いないぞ!うん、脚本を読んでみたい!」と思いますよね?


つまり、ハラハラドキドキ感のある作品だと示唆することができれば、脚本を読んでもらえる可能性がアップするというわけですね。


【Point7】ログラインを書くコツ:ひねりや意外性のある作品だと示唆する


<1>

2つ目のコツは【ひねりや意外性(irony)のある作品だと示唆する】です。


※補足:日本語の書籍やWebサイトの多くがこのironyを「皮肉」と訳し、「ログラインには皮肉が求められる」と解説しています。しかしこれは適切とは言いがたい……というか誤訳だと思います。というのも、日本語の「皮肉」には意地悪なニュアンスがありますよね。一方、ログラインに求められるironyは必ずしも意地悪なものではありません。意地悪なものから笑えるものまですべてを含んでいる。つまり「ひねり・意外性」などと訳すのが適切だと思うのです。


参考サイトB曰く、

The best loglines contain a sense of irony. Irony draws the reader in and tells us that we are in for an unexpected and unconventional story.

「優れたログラインには、ひねり・意外性が込められています。ひねり・意外性は読者を惹きつけ、予想外の型破りなストーリーが待っていることを教えてくれます」。

予想外の型破りの作品……ってメチャクチャ気になりますよね!脚本を読んでみたくなる!


<2>

参考サイトDは、例として映画「キューティ・ブロンド」をあげています。


「キューティ・ブロンド」は、【<ブランドものが大好きで、ノリだけで生きてきたような金髪ギャル>が、猛勉強の末にハーバード・ロー・スクールに進学し、そして大活躍する】という物語。

つまり、<ブランドものが大好きで、ノリだけで生きてきたような金髪ギャル>と<ハーバード・ロー・スクール>という組み合わせに【ひねり・意外性】があるわけですね。


もしもこれが<勉強一筋の地味女がハーバード・ロー・スクールに進学する物語>だったら……まぁ【ひねり・意外性】はなく、脚本を読んでみたいという気持ちにはならないかもしれません。


【Point8】ログラインを書くコツ:ジャンルを示唆する


3つ目のコツは【ジャンル(genre)を示唆する】です。


参考サイトA曰く、

Genre. It shouldn’t appear in an explicit way (“It’s a horror film that…”), but the reader should be able to glimpse it through in a clear way.

「『これはホラー映画です』などと書くわけではありません。そうではなくて、読んだ人が「おっ、これはホラー映画だな」と感じられるようなログラインに仕上げるのです」とのこと。


確かにジャンルって大事ですよねー!

だって、例えば「主人公が敵を倒してヒロインと結ばれる」という同じストーリーでも、それが恋愛ものか、バトルものか、あるいはミステリなのかによって、まったく異なる物語になりますからね。


【Point9】ログラインを書くコツ:能動的・視覚的な言葉を使う


<1>

4つ目のコツは【能動的・視覚的な言葉(active and visual language)を使う】です。


なぜ【能動的・視覚的な言葉】を使うべきなのか?

理由は簡単です。

受動的な言葉よりも能動的な言葉を使った方が、抽象的で観念的な言葉よりも視覚的な言葉を使った方が、面白そうなログラインになるから。以上!


<2>

例えば、

・パターン1:主人公は友を救うために険しい道を歩まざるを得なくなった

・パターン2:主人公は友を救うために敵をぶち殺すと決意した

……どちらの方が気になりますか?


大体の人は後者を選ぶと思います。

だって前者は何だか重苦しくて、堅苦しくて、見ていて鬱々としそうじゃないですか。一方、後者はスカッとできそうですよね!


【Point10】ログラインを書くコツ:結末は書くべからず


<1>

さてここまで、ログラインに含めるべき要素やログラインを書くコツを見てきたわけですが……逆に、「これはやってはならぬ」という禁止事項はあるのでしょうか?


ずばり、あります!

すなわち、【結末(resolution / ending / final plot twist)を書いてはならない】!


<2>

まぁこれ、考えてみれば当たり前のことなんですよね。

だって、ログラインは<アイデア>を売り込むためのツールであり、プロデューサーやエージェントに「ほぉ!これは面白いアイデアだ。脚本を読んでみよう」と思わせることが目標です。

それだのにネタバレしてしまっては……そう!本末転倒ですよね。


参考サイトD曰く、

Remember, you’re selling your story, not telling the whole thing.

「脚本を売り込んでいるということを忘れるな!ストーリー全体を説明することが目的じゃないぞ!」。まさにその通りですよね。


<3>

ところで……「結末を書くべからずとのことだが、『結末』というのは具体的にどの辺りのことを指すのだろうか?」という疑問を持った方もいるかもしれません。

本当に最後の最後、ラストシーンだけ伏せておけばいいのか?

それとも、物語の後半をまるっと隠すべきなのか?


ここでは、参考サイトEの以下の文章をご紹介しましょう。

It should also be noted that when using this formula you generally don’t want to give away the third act, but rather tease the third act with points from the first and second. In other words none of your questions should pertain to anything after the 3rd act break.

つまり、伏せるべきは三幕構成でいうところの第3幕なのです。


※補足:三幕構成について詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ!


<4>

また、「私の作品はラストシーンに超強力なネタが仕込んである。ラストシーンまで書かないと魅力が上手く伝わらないと思うのだが……それでもログラインに結末を書いてはいけないのだろうか?」という疑問を持った方もいるかもしれません。

確かに悩んでしまいますよね。


そんな方には、参考サイトGの以下の文章をご紹介します。

Do not reveal the script’s supercool twist ending, even if it is the next The Usual Suspects. The story, and thus the logline, should be good enough to hold up by itself; a surprise ending should be a lovely bonus found when reading the script. 

「たとえあなたが『ユージュアル・サスペクツ』のような超クールな結末を持つ作品を書いたとしても、それでもログラインに結末を書いてはいけません!」。


【Point11】ログラインを書くコツ:その他


最後に、細かいコツをまとめてご紹介しましょう。


<1>

ログラインの文体は、【三人称、そして現在形(in the third person and in the present tense)】が基本です。

※参考サイトAより


<2>

「果たして主人公は○○できるのだろうか!?」などというように、読み手に対して【質問(question)】を投げかけるのは止めましょう。

※参考サイトA、Cより


<3>

基本的に、【脇役(supporting character)】について触れる必要はありません。というか文字数が限られているので触れる余裕がないはずです。

※参考サイトAより


<4>

同様に、【サブプロット(subplot)】についても触れる必要はありません。

※参考サイトAより


※補足:<サブプロット>とは、メインストーリーと並走するもう1つの物語のことです。例えば多くのラブストーリーでは、主人公の恋愛と共に、主人公の友人の恋愛模様も描かれます。それがサブプロットです。



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(担当:三葉)

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