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「キャラAはいますぐ黒いスーツが必要らしい→しかしその理由は明かされない」という描写を通じて「なぜスーツが必要なんだ?」「何をするつもりなんだ?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する ~映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の場合

フランクの父「親父が死んだ。85歳だった。戦争の英雄だったんだ。午後に軍隊葬がある。戦闘機が飛び、21発の礼砲!」

映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」


◆概要

【「キャラAはいますぐ黒いスーツが必要らしい→しかしその理由は明かされない」という描写を通じて「なぜスーツが必要なんだ?」「何をするつもりなんだ?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

▶1

本作の主人公は、フランク(16歳の少年)。


彼は幸福な家庭に生まれ育った

・Step1:例えば、フランクの父は成功した商売人だ。街の有力者であり、経済的に余裕がある。

・Step2:また、家族仲も最高だ。物語冒頭、フランクは両親とともに幸福なクリスマスをすごす。


……と思いきや、直後のシーンでムードが一変する

・Step3:朝。フランクの部屋のドアが開き、父が入ってきた。何やら慌ただしい雰囲気だ。父は焦っているように見える。

・Step4:父が大声で言った「フランク、起きろ!さぁ急いで!」。フランクは寝ぼけ眼をこする。一方、父はまくしたてた「今日は学校を休んでいい」「黒いスーツは持っているか?」「街でとても重要な打ち合わせがあるんだ」「さぁ早く朝食を食え」。


次いで、舞台は紳士服店に移る

・Step5:まだ朝早い時間だ。店は閉まっている。

・Step6:だが父は臆さない。彼は店の前で叫んだ「急いでいるんだ!開けてくれ!」。「何事!?」と店主(?)が駆け寄ってくる。

・Step7:父は言った「頼む、開けてくれ!」「大至急、息子に黒いスーツが必要なんだ」「親父が死んだ。85歳だった。戦争の英雄だったんだ。午後に軍隊葬がある。戦闘機が飛び、21発の礼砲!」などなど。かくして強引に店を開けさせ、フランクのスーツを入手したのだった。


▶2

ご注目いただきたいのは、Step3-7である。

父は、

・1フランクを叩き起こし、学校を休ませて紳士服店に向かった

・2:開店前の店先で大声を出して店主を呼び出した

・3:Step7では「親父が死んだ。85歳だった。戦争の英雄だったんだ。午後に軍隊葬がある。戦闘機が飛び、21発の礼砲!」と言うが、Step4では「街でとても重要な打ち合わせがあるんだ」と言っていた。……おかしい。さっきと言っていることが違う。そう、葬儀というのは嘘だ。父は、「今日葬儀があるんだ。喪服が必要ってわけさ。しかも死んだのは国の英雄だ。なっ、融通利かせて店を開けてくれよ」と言っているわけだ


「いますぐフランク用の黒いスーツが必要だ!何が何でも必要なんだ!」という強い気持ちが伝わってくる。

が、スーツを何に使うのか、その理由はまだ明かされていない。


というわけで多くの鑑賞者は、「なぜスーツが必要なんだ?」「何に使うんだ?」「フランクに何をさせるつもりだ?」と興味を引かれたに違いない。


つまり、【「キャラAはいますぐ黒いスーツが必要らしい→しかしその理由は明かされない」という描写を通じて「なぜスーツが必要なんだ?」「何をするつもりなんだ?」といった疑問を喚起し、読者・鑑賞者の好奇心を刺激する】というテクニックである。


なお、Step7の後で舞台は銀行に移る。そしてそこで父の真意が明かされる。


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