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かき氷が 食べられない

我が家には 「かき氷部」というのがある。

部長は、娘。副部長は私。部員は夫という、弱小部活である。ただ、弱小なりに、地道な活動は続けており、毎年、何軒かのお気に入りのかき氷やさんに行っては、味や量の確認をおこたらない。新規開拓した際には、必ず報告をしている。

「かき氷部」のお気に入りのかき氷は、いわゆる「映える」ってやつではなく、とことん味とお店の心意気を大切にしたものだ。

人気が出てきて、お店を改装なんかしちゃったりして、お客さばきもスムーズになり、こぎれいになってしまうようなお店は却下。そういうお店は、だんだんと氷の大きさが、小さくなってしまうものなのだ。

部活動は、部長と副部長での活動も時々はあったが、基本三人そろって活動していた。時には、喧嘩をしたままのすごく険悪な状態で、ほっぺがとろけそうな「梅氷」を食べに行ったこともある。そういう時は、無言で氷を食す。こういう時の、家族内部活はめんどうくさい。それでも、上品な梅シロップたっぷりの「梅氷」は、めちゃくちゃにおいしいのだからすごい。

部長の好みの氷は、はばひろく、同じみのお店の氷を大切にしながらも、新しい種類への挑戦をおこたらない。副部長は、和風一辺倒。抹茶や八女茶と小豆があれば、そればかりを食べる。新メニューなぞには、興味なし。部員は、フルーツものに弱い。柑橘系のメニューがあれば、最高のようだ。あとは、シロップ多めを好んでいる。吉野家でいうところの、つゆだくってやつ。と、三人三様の好みであるが、一押しのお店は同じなのがおもしろい。

ちなみに、我が家の部活動はもう一つある。「あるこう会」というそのままの名前の部活動である。こちらの部長も娘。副部長も同じく私。ただし、夫は、仮入部。かなりの長距離でもあるこうとする部長・副部長とちがって、すぐに車に乗ろうとする夫は、部長に入部を認めてもらえないのである。

とはいえ、娘が家を出てしまってからは、どちらの部活動も活動休止中である。どちらにしろ、あちこちお出かけをしにくい今の状況では、活動はできないけども。せっかく、10年以上続いている部活動なのに。「あるこう会」については、発足20年てとこか。


さてさて、そんなかき氷への思いが強い私が、今はかき氷が食べられなくなってしまった。

治療中のお薬の加減で、かき氷を食べることができないのだ。

冷たいものを食べると、一瞬にして腸の蠕動運動を引き起こし、お腹が痛くなるのだ。それも激痛。激痛の激痛。ひどい時には、トイレとお友達になること30分以上なんてことになる。

ドクターが言うには、病状悪化のリスクを考えると、今のお薬を引き続き使うのは当然のことらしい。

かき氷が食べられないくらい、どうってことないじゃないか。

ってことらしい。

寿命が延びるのと、かき氷を食べるのとでは、比べものにならないらしい。

他にも食べられるものはあるんだから。


それはそうなんだと思う。その通りだと思う。

でも、こんなに大好きな食べ物をあきらめることの辛さって、ちょっとは想像してくれたことあるのかなあ。

食べ物って、日常生活の中でかなり大事。好きな食べ物があたえてくれる幸せ感は、生きる意欲にだってつながる。

ねえねえ。想像してみてくださいな。

もう一生 チョコレートを食べたらあかんで。ビールを飲んだらあかんで。お寿司を食べたらあかんで。ごほうびのおやつなんか、食べたらあかんで。ほかほかのしろご飯をほおばったらあかんで。

自分の一番大好きな食べ物を 食べたらあかんとなった時の気持ち。

これって、すごい悲しいことって、ドクターはわかってるのかなあ。


ただ、私が一番好きな食べ物は、かき氷じゃなくて、フランスパンってところが、説得力に欠けるような気はするけど。

今年の夏は、かき氷にトライできるかなあ。一口、二口ならば大丈夫だとは思うけど、一人前全部食べないと気が済まないところが難点。

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