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【OAK】今季残りの注目ポイント

先日、アスレチックスの歴史にまつわるnoteを投稿しました。この構想1日、執筆期間3ヶ月の超大作(?)に数多くのスキなどの反応を頂きまして、嬉しい限りです。

このままいくと2022シーズンは、このnoteで取り扱った1979年以来のシーズン100敗ペース
100敗回避のためには13勝14敗でシーズンの残りを乗り切らなければなりません。

再建中のこの時期の勝ち負けに対するスタンスは人それぞれでしょうが、個人的にはどっちでも良いというスタンスです。
世代交代を終えて若手が多い現状のチームが勝つも良し、負けて来年のドラフトロッタリーに活かすも良し。

ただ、最善のシナリオは、A'sが100敗を回避できる程度に勝ちつつも、他の弱小チームもそれを上回るペースで勝つというものです。
コンテンダーが下位球団にいじめられればペナントレースは盛り上がりますし、最終的にA'sが勝ちながらも勝率ワースト3位以内に入れば、これ以上ありません。ちなみに勝率ワースト3位以内に食い込めば、ロッタリーで16.5%の確率で全体1位を手にできます。

と、妄想を膨らませている間に、ドラフトロッタリーの日程が決まっていました。NBAのロッタリーはもう少しドラフト直前のイメージがありましたが、半年以上前のウインターミーティング中にロッタリーを行うそうです。

ドラフトロッタリー、行くぞ!


ルーキー打者たちの適応やいかに

ここからはタイトルの通り、残りのシーズンで注目すべき点を色々と挙げていこうと思います。

数多くのベテランとの別れを経て、ロスターは大いに若返りました。今や多くの若手がスタメンに名を連ねるようになっています。

名前赤枠がwRC+100オーバー

ランガリアーズが昇格した8/16以降を仮に”ランガリアーズ・エラ”として、成績を集計してみました。

サンプル数が少ないガルシアとトーマスを含めても、wRC+が及第点と言える100を超えた選手が5人しかいないのは問題です。
さらにその内の1人は御年37歳のスティーブン・ボートだというのですから、若手が奮っていない現状がより際立ちます。


特に、あれだけの守備的バリューを誇りながら、マイナスのWARを叩き出しているニック・アレンにとっては我慢の時期が続いています。
アレンは小柄な体格故に打球が弱く、なかなかヒットゾーンを見つけられていないのが現状です。

しかし、パワーレスは予め分かっていたことでもあります。その一方で噴出しているのがスライダーへの脆さです。

速球系に対して打率.305/空振り率10.6%と力負けしていないのは好材料ですが、スライダーにはきりきり舞い。打率.055/空振り率40.5%は赤信号です。

パワーレスな打者が生き残っていくにはアプローチ(選球眼,コンタクト)が良いことは絶対条件です。ただ、アレンはそこまでアプローチに尖りきったタイプではありません。マイナーでも二塁打の多い選手でした。
逆に引っ張り打球を増やしたり、パワーアップを図る方がアレンにとっては向いている活路なのではないかと思います。


アプローチの良さでいくと、ヴィマエル・マシーンの健闘も称賛に値します。
彼の場合はアプローチの良さのみならず、ハードヒット率も40.3%と比較的ハードヒットを打てることも証明できています。
しかし、ローンチアングルは9.1度といまいち打球が上がり切らず、外野手の守備範囲内に収まるラインドライブをよく目にします。

HRを打てるようになれば現状のロスターにひしめく若手打者に差をつけられるはずです。


ローテーションの顔ぶれが大きく変わる

エースのモンタスとの別れからはや1ヶ月。ローテーションの面々は大きく入れ替わりました。

開幕からローテにとどまり続けているのはコール・アービンのみ。アービンと共に唯一のフルシーズン経験者であり、昨年からローテを守っていたキャプレリアンはブルペンに降格する見通しです(追記:アダム・オラーのIL入りでローテにとどまる)。

古参の顔ぶれからローテの椅子を奪ったのがフレッシュな面々の3人、エイドリアン・マルティネス/JP シアーズ/ケン・ウォルディチャック、です。

中でも、エイドリアン・マルティネスは前半戦の炎上から、後半戦はERA1.72と進化した姿を見せています。

マルティネスの武器はデビン・ウィリアムズの”エアベンダー”を彷彿とさせるチェンジアップ。ただ、この被打率.163のマネーピッチを活かす術を知らず、前半戦は打ち込まれることがほとんどでした。

後半戦の飛躍の要因にあるのはシンカーの改善ではないかと思います。

エイドリアン・マルティネスのシンカー <~8月 vs. 8月~>

Run Value
5.0 → -1.6

xwOBA
.486 → .280

Exit Velo(mph)
91.8 → 89.1

Whiff%
21.2% → 33.3%

baseball savantより

8月以降から見違えるほどに良くなっています。

ここから改善の要因を探ってみましょう。

まずは球速が上がっています。93.4mphから94.2mphに平均球速はアップ。勝負どころでは90mph後半をマークする場面も増えてきました。

そして変化量も調べてみたところ、わずかにリリースポイントが上がり、そのせいか以前よりもややホップするシンカーを投げていることが分かりました。

シーズンが終わったらまた詳しく調べてみたいところですが、なかなか興味深い進化を遂げているようです。

一方で課題も山積です。

その一つが第三球種のスライダー。変化量がなかなか安定しない球種ですが、決まる時は大きく曲がって空振りを奪うことができます。スライダーまで安定してくるともう一段上の投手になれると思います。

そしてスタミナも要改善。打順の1,2巡目では平均94.2mphをマークできるものの、3巡目以降では93.6mphに下がります。

第三球種の不安定さとスタミナの欠如は、マルティネスがスターターよりもリリーバーの方に向いている可能性を示していると思います。
A'sはリリーバー向きと言われていた投手を我慢して育成する傾向にあり、その最たる成功例が先日トレードされたフランキー・モンタスです。がしかし、逆にケンドール・グレーブマンやジェシー・ハーンのように退団後にリリーバーとして頭角を現した投手もいます。
マルティネスは優秀なリリーバーになるポテンシャルがありますし、コンテンドが近づいた暁には潔くブルペンに回すのも手でしょう。


プロスペクトたちの昇格は

先ほど言及したランガリアーズ、ウォルディチャックをはじめ、続々とプロスペクトが昇格してきています。

先日は、コディ・トーマスがメジャーデビューを飾りました。トーマスは昨年AAAでホームランバッターとしてブレイクし、オフに40人枠入りを勝ち取った外野手の有望株。しかし、今季はアキレス腱の故障でシーズンを棒に振り、8月後半にAAAに復帰し、9月から早速MLBでプレーしています。

トーマスのデビューはこれ以上無いほど順調なものです。ここまで13打席で7安打を放ち、長打こそありませんがハードヒットを量産しています。

トーマスのプレーぶりは新人年のセス・ブラウンを思い起こさせます。ブラウンも持ち味であるHRは出ずとも、積極打法でラインドライブを打ちまくっていました。
AAAでプレーしていた時のように、上手く打球に角度を付けられるように適応していってほしいですね。


多くのプロスペクトが巣立ったファーム組織で、今最もMLBに近いのはジョーダン・ディアスでしょう。

ディアスは天才肌の打撃を見せる選手です。早打ちすぎるきらいはあるものの、傘下随一のコンタクトスキルと流し打ちの技術を誇り、今季は打率3割オーバー。パワーは過小評価気味でしたが、今年は17HRとついにパワー海岸の兆しも見せています。

現状、一塁のポジションはダーミス・ガルシアが猛アピールを見せており、割り込むスキは無いかもしれません。しかし、ディアスは既に40人枠に登録されている選手なので、故障で空席が出ることがあれば今季中のデビューもありえないことではないでしょう。

ディアスにしても、アプローチや長打力が抜けているわけではないですから、昇格しても三振とゴロ打球の増加に悩まされる可能性はあると思います。ただ与えられる打席は与えるに越したことはありませんし、同じ消費オプションなら昇格させた方が有効な使い道のはず。シーズン残り3週間程度、楽しみに待ちたい選手です。


その他のニュース

マット・オルソンが凱旋

昨年までA'sのコアプレイヤーだったオルソンがオークランドへの凱旋を果たしました。

温かいスタンディングオベーションに迎えられたオルソンは3回には3ランHR、8回には守備での好プレーと、A'sの選手として培ったものを惜しみなく発揮。
もはや敵軍の選手となったオルソンですが、コロシアムのファンはHR後に温かい声援を送りました。

オルソンの再三の好プレーを見て、一ファンながらも誇らしい気持ちになりました。これからもっともっと活躍して、殿堂入りを狙える選手になってほしいなぁ…(クーパーズタウンで被る帽子は同じAの字でもアトランタのものでしょうけれど涙)


まだまだスティーブン・ボートを信じてる

先ほど紹介した通り、”ランガリアーズ・エラ”においてwRC+100超え5傑に名を連ねているのがベテランのスティーブン・ボートです。

シーズン全体のスタッツこそ奮いませんが、ボートは序盤から勝負強い打撃を披露してきました。
数々のクラッチヒットの中でも今季のハイライトとなりそうなのが、8/28のNYY戦での代打同点2ランでしょう。

子供の新学期が近づき、家族が球場に観戦に来られるのは今季最後と分かっていたボートは、試合後のインタビューでも感極まった様子。
「成績の観点では理想的なシーズンとは言えないかもしれない。だけど、このチームのメンバーを愛しているし、この球団を愛している。ここに戻ってきて未だに勝利に向けて貢献するのは最高の気分だよ。」とコメント。

もはやレギュラーの選手ではないボートですが、レギュラーの選手並に準備は怠らず、毎日早入りして練習に臨んでいるそうです。数多くのベテランが世代交代の波に呑まれてチームを去る中、フロントがボートを残したのには理由があるのです。

ボートは間違いなくA'sのユニフォームで現役を終えるべき選手です。マーフィーのトレードが迫り、来年は正捕手ランガリアーズで迎えることになりそうですが、左打ちの控え捕手兼教育係としてボートは適任のはずです。FA市場の他のオプションを見ても、来年もボートが控えでいいのではないかと思います。


終わったプロスペクトが謎の大変貌

熱心なA'sファンでもジュニア・ペレス(Junior Perez)という名前にピンと来る人はそこまで多くないと思います。

彼はホルヘ・マテオをSDにトレードした時の後日指名選手として獲得したプロスペクトです。

そもそも当時のオプションが切れたマテオの対価で、しかも後日指名選手。たかが知れていたといえばそれまでですが、A'sに加入したての2021年は物足りない成績に終わってしまいました。

ペレスは今年も6月半ばまでは昨年と同様の低迷したパフォーマンスでした。
打率は.222、四球はそれなりに選んだものの、37.7%の三振率が全てを台無しにしていました。

しかし、ペレスは6月半ばから打撃フォームの改造に着手。

そこからはまるで別人のように生まれ変わりました。
7月以降は打率は.278まで向上、出塁率は.421、OPSも.908と大爆発。
この爆発の要因はアプローチの改善で、三振率は24.2%にまで減少し、四球率は19.5%にまで上がりました。7月の1ヶ月間でいえば四球が三振を上回ってもいました。

持ち前の恵まれた体格と身体能力もそのままに、成熟したペレスは再びプロスペクトとして耳目を集める存在に返り咲きました。まだ21歳と若く、今後が楽しみな逸材です。


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