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僕が小説を書くときに気をつけていること①

初めて書いた小説「コーヒーが冷めないうちに」が85万部、シリーズ累計で125万部を突破した。

ニュージーランドではイギリスUK版がブックランキング総合で2位、シンガポールでは「コーヒーが冷めないうちに」が総合1位、「この嘘がばれないうちに」が2位に入った。台湾では10万部を突破し、イギリス、イタリアでもたくさん売れている。

とはいえ、僕は小説家としてはまだまだ未熟で、読み返せば読み返すほど書き直したい箇所が沢山ある。

でも、一度、世に出してしまったものを直すのはフェアじゃない。

漫画だって第一巻と第三十巻の絵ではキャラクターが変わったのではないか?というほど差のある作品だってある。

大事なことはいつだって今からどうするか?だ。

そこで、小説を書くときに気をつけていること、気をつけなくてはいけないと思ったことを自分のために残すという意味で少しづつ書いていこうと思う。

僕が小説を書くときに気をつけていること①

とにかく最後まで書ききる。

2019年の春、製本すると280ページくらいの作品を書き上げた。書き上げてボツにした。面白くなかったからだ。

僕の場合は勢いに任せて書き上げることが多いので途中で読み返す、書き直すということをしない。

これをすると筆が止まることがあるからだ。

理由はもちろん、何度も読み返していると自分の書いているものがだんだんつまらなく思えてくる。

だから、なるべく最後まで書く。書いてしまう。全部書いてから読み返す。すると全体的に何が足りなかったのかわかる。テーマが弱いのか、キャラクターが弱いのか、書きたいことが散漫しているのか、人物のディテールが曖昧なのか、様々なことがわかる。

富士山を登っているときに富士山の全貌がわからないのと同じで、離れて客観的に全体を読んでみないとその作品の良さはわからない。

だから、とりあえず書き上げる。

それから面白くないなら潔くボツにする。先にも言ったが、僕は小説家としてはまだまだ未熟である。書きたいことを思い通りに書けないし、ちゃんとした本になるまでには何十回と書き直さないといけない。

書いてボツにして、ボツにして書くことを繰り返すしかないのだ。

だから、作品は一度全部書き上げる。これは「書き上げる」という力を身につけるためだ。

もちろん、連載とかをお持ちの小説家さんにはできない作業かもしれない。だから僕は連載は引き受けない。こんな未熟な作家が連載なんてどう考えても不可能だからだ。

でも、何があっても書き始めた作品は最後まで書くことにしている。

それは決して無駄ではない。

ボツになっても書いた事実は残る。書き上げたという自信は残る。

ボツになった理由をちゃんと受け止めて、次の作品に活かせばいい。

だから、僕はとにかく書き始めた原稿は最後まで書くことにしている。

執念を持って。

川口俊和