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早坂 里奈 / hayasaka rina


祭りの活気は心が躍る。京都三大祭のうちのひとつである祇園祭もそのような感じで街や人々が賑わっていただろう。来年こそは祇園祭に行こう。京都に向かう道中、そんなことを考えながら頭の中で道端に並ぶ屋台や鉾を想像して祭り気分を楽しんだ。本格的に夏の暑さが増していた京都だったが、日差しを浴びながらキラキラと輝いている鴨川からは以前まで京都で暮らしていた時の懐かしさと安心感を覚えた。

「遅くなってごめんねー!」

私がたそがれていると真っ青な夏の鴨川とは対照的に赤いワンピースを軽やかに着て里奈ちゃん(以降たろうちゃんと呼びます)が現れた。その姿は夏の日差しよりも眩しく、生き生きと輝いているようだった。

彼女と初めて出会ったのは3年前のこと。私が京都に引っ越して間もない頃、フィルムカメラの現像でお世話になっていた〈Photolabo hibi〉というお店で彼女がスタッフとして働いている時に出会った。フィルムを現像に出す際に彼女がいつも受付を担当してくれた。

スタッフは店主の松井惠津子さんと共に働く松井貴之さん、そしてたろうちゃんの3人。恵津子さんがフィルムの現像を行い、たろうちゃんは受付でお客さんのフィルムを預かったり、フィルムを現像機に流したりして業務を手伝っている。

フィルムカメラ専門店ではあるが、店内では貴之さんが提供するオリジナルドリンクやお菓子を楽しめるカフェスペースも併設されているため、フィルムを現像したお客さんが寛いで過ごすこともできる。

カメラ好きの常連さんにも、初めて来店するお客さんにも、いつも笑顔で接客しているたろうちゃん。

そんな彼女ももともとは〈Photolabo hibi〉のお客さんだった。

「新入社員として東京で撮影の仕事をしていて、転勤で大阪にやってきた時期に〈Photolabo hibi〉と出会ったよ。自分の撮っていたフィルムを現像に出したり、そこで出会った友人たちと一緒に写真を撮りに行ったりしているうちに気づいたら〈Photolabo hibi〉を通して楽しい時間に恵まれていたんだ」。

お店のスタッフとして働き始めたのは3年前のこと。勤めていたカメラスタジオを辞めた頃に惠津子さんと貴之さんにスタッフとして働かないかと声をかけてもらったという。〈Photolabo hibi〉の内装工事やカフェ新設を踏まえたリニューアルのタイミングもあり、ご縁があって働くことに。

そこでの日々にはこれまで働いてきた撮影という仕事とは違った写真との関わり方があった。

「〈Photolabo hibi〉ではフィルムの仕上がりについてお客様に指定してもらうことができるんだけど、最初はそのイメージを汲み取ることが難しかったかな。暖色寄りにすることを『あったかくする』と言葉にする方もいれば『青みを少なくする』と伝えられる方もいて、ひとつのイメージを表現するのにも様々な言葉があり、だからこそひとつひとつの言葉をしっかり理解して、お客さんと一緒にイメージを共有することの大切さを学んだよ」。

お客さんが使用しているカメラやフィルムの種類によって仕上がりが異なる他、シャッタースピードや絞りによっても光の加減で写真の見え方は変わってくる。デジタルカメラとは違うフィルムカメラだからこその難しさ。それ故、イメージ通りに写真が仕上がってお客さんが喜んでいるとそこにはやりがいも生まれる。たろうちゃんが直接フィルムを現像するわけではないが、お客さんの希望のイメージに寄り添う貴重な役割を果たしている。

続きは、以下のサイトよりご覧いただけます。
Leben「ある日の栞」vol.04 / 早坂 里奈



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Lebenはドイツ語で生活を意味します。正解のない様々な暮らしを取材しています。

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