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プロダクトマネージャーのためのキャリア開発フレームワーク〜テンプレート公開

こんにちは、外資系SaaS企業でプロダクトマネージャー(PM)をしています、ハヤカワです。

年末になって、海外のチームはみんなホリデーシーズンに入ってしまったので、私も一足早く年末休みをいただいています。
この長期休みに入る前に、自身のキャリアについてマネージャーと会話をしました。
その時に参照した記事やフレームワークがとても参考になったので、皆さんにも共有したいと思います。
また、少し恥ずかしいですが、実際に私が用意したキャリアプランについての内容やフィードバックも公開します。少しでも参考になればと思います。

今回のnoteの内容

外資系SaaS企業でPMをしている私が、実際にマネージャ・メンターとキャリアについて会話したときに用意した内容です。
The GROW Framework というフレームワークに沿って、1時間のミーティングでCareer Conversation (キャリアの会話)を行いました。
今回のフレームワークを参考にしていただいて、皆さんのマネージャや、メンター、コーチの方とのキャリアの会話を行う際に参考にしてもらえればと思います。

GROW フレームワークとは

  • Goal (ゴール・目標)

  • Reality (現状)

  • Options (選択肢)

  • Will (今後やること)

これらの4つのステップの順に、マネージャとキャリアについて会話を行う時に使えるフレームワークです。

会話の前に

キャリアについて話す前に、以下を話してマネージャと合意しましょう

  • ✅ 「このミーティングでは、私のキャリアについての興味関心について共有して、フィードバックをいただくことで、キャリア開発プランを一緒に作りたいと思います。」

  • ✅ 「もちろんあらかじめ決めた内容以外にも、もし他にカバーすべき内容があったらぜひ言ってください」

それでは、GROWフレームワークによるキャリアプランについて見ていきましょう。


🎯Goal (目標)

ここでは明確で、わかりやすく、一貫した目標を設定します。ゴールの設定には、SMARTなゴールを考えましょう。

  • Specific (具体的) — 選んだアクションはキャリア目標をサポートしているか?

  • Measurable (測定可能) — アクションの結果は測定可能か?

  • Actionable (実行可能) — アクションは従業員のキャリア目標達成に効果的か?

  • Relevant (関連性) — アクションはキャリア目標達成に関連しているか?

  • Time Bound (期限) — アクションには明確な完了期限があるか?

特定のスキルやテーマに対して、数個のアクションが選ばれているのが最適なキャリアプランです。注意として、実行するアクションが多かったり、無理な計画を作成しないようにし、現実的で達成可能なゴールを設定します。

🗣Goalパートで使える会話の始まり

Goalパートで実際にマネージャーと会話する時に使える、頭出しの内容・観点を紹介します。あわせて、私が実際に用意した内容も例文として記載します。

  • 私の短期(1-2年)のキャリアの目標は…

    • 「"A true product manager" 本当のプロダクトマネージャーになるために必要なことを実際に経験したい」

  • 私の長期(3-5年)のキャリアの目標は…

    • 「日本のSaaSプロダクト開発市場や企業、プロダクトに携わる方を助けたり、リードできるようなプロダクトマネージャーになりたい」

少し抽象的かもしれませんが、自身が興味あること、モチベーションが高まることを目標に据え置いて会話を始められれば良いと思います。


📍Reality (現状)

次に、現状について、共有しましょう。つまり「今どこにいるのか」を意識するようにします。 目標からどれくらい離れているのかを、特に外的要因と内的要因の両方の観点で考えます。
外的要因は、スキルなどの強みや課題、具体的に抱えている問題や、他者との関わり方や活躍の場についてです。内的要因は、現状で興味のあることや、望んでいる変化に関する自身の感情や動機についてです。

🗣Realityパートで使える会話の始まり

このパートで話すべき内容と、例文として私が実際に書いた内容を共有します!

  • 自分の強みを感じていて、まだ成長の機会があると感じる点は…

    • 「Growth PMとして、実際に顧客や社内のステークホルダーと直接会話をして、特に日本やアジアなどの異なる地域で、近い関係性でプロダクトに関するフィードバックを得て、直接アダプションの向上に貢献できるという点」

  • 伸ばしたり、さらに深く身につけたいスキルは…

    • 「顧客の声をロードマップのバックログや、新機能の開発に変換し、高速にMVPを作り、リリース・改善すること」

      • 「小さなスクラムチームしか持っていないため、そのための経験がまだ足りない」

  • モチベーションに繋がり、最も興味がある点は…

    • 「Growth PMとしてのキャリアの成長」

      • 「製品のアダプション向上と、製品の改善のための高速なイテレーションによる新機能開発」

💬 Realityについてマネージャーへの逆質問

上記の会話を通してマネージャーからフィードバックをもらった上で、さらに深くフィードバックが欲しい場合は以下のような質問をしましょう

  • 「私の強みについてどのように見えていますか?さらに改善のチャンスはどこにありますか?」

  • 「キャリア開発のためにどのような新たなスキルや経験を得ることが重要ですか?」

  • 「私のキャリアゴールと今の現状をみて、"現実的"だと思いますか?」


🌱 Options (選択肢)

ここでは、取りうる選択肢を見つけましょう

たまに Obstacles (障害物)と表現することもあるようですが、Options(選択肢)の方がポジティブな印象を受けるのでおすすめです。
基本的には、Reality (現状) から Goal(目標)までの道のりにおいて、乗り越えるべき障害物や、分岐点となる分かれ道(選択肢)があるはずです。
それらの障害や選択肢を特定することで、それに対処する方法を見つけ、前進することがこのセクションの目的です

🗣 Optionパートで使える会話の始まり

このパートで話すべき内容と、例文として私が実際に書いた内容を共有します!

  • 私がもっと探求したいキャリアの可能性は…

    • 自分がプロダクトオーナーの製品の成長への貢献

      • 「よりフィードバックを集め、機能の改善点を特定し、ロードマップを作り、成功を計測しながら、ギャップを特定し、実際に機能を作り、アダプションの向上を達成し、その製品の成功を実現したい」

  • 私が考えているやりたいことのオプションは…

    • 継続して、今担当しているプロダクトのPMとして働くこと

    • APACの異なる地域や国の顧客や社内の関係者ともっと働くこと

  • これからもっと学びたくて、興味があることは…

    • 製品可能性の探求 (Discovery product opportunity)

      • 「現状は上から落ちてきたビジョンに対して、PRDを作っているが、イチから新機能のビジョン、戦略を作りたい」

    • UXリサーチャーとのユーザーリサーチの実施

      • 「バジェットがないので現状はUX リサーチャーを巻き込めていない」

    • UXデザイナーとUIデザイナーとプロダクトを作りたい

      • 「バジェットがないので、現状はデザイナーを巻き込めていない」

💬Option についてマネージャーへの逆質問

  • 「私が共有したことに加えて、他に何がGood fitだと思いますか?」

  • 「私にとって、他にもっと学ぶべきオプションやチャンスはありますか?」


🔮Will (今後やること)

ここでは、自分が今後やりたいことを見つけます。

洗い出したオプションをもとに、次のステップに進むための明確なアクションプランを作れるようします。
ここで重要なのは、Accountability (説明責任) です。実際に何をいつまでにやるのか、その具体的な内容を示すことで、コミットメントを求め、説明責任を果たす仕組みを作ります。

🗣Willパートで使える会話の始まり

このパートで話すべき内容と、例文として私が実際に書いた内容を共有します!

  • この3~6ヶ月の間でやりたいと思う行動は…

    • APAC向けの新機能の認知度促進のためのイネーブルメントの実施

    • 次の2リリース内で、機能改善を繰り返し行う

    • 新機能[A]を来年Q1にリリースする

    • 来年度中に新機能の企画をして、PRDを作る

    • 社内の関係者と顧客と繋がり一緒に製品を使ってもらって、フィードバックをもらう

  • これらのゴールを達成するために必要はサポートは…

    • コミュニケーションギャップ、言語の壁、ステークホルダーとの関係性のなさと、自身のビジビリティ(認知度)の低さ

💬Will についてマネージャーへの逆質問

  • 「次に取るべきアクションとして他にアイデアはありますか?」

  • 「新たなスキルを得るためにどのようなトレーニングや学習リソースがありますか?」

  • 「経験としておすすめの体験すべきことはありますか?」


ということで、ここまでGROWフレームワークに沿って、キャリアについてマネージャーと会話をすべき内容をまとめてみました!

✍️キャリアについてのミーティングでやること

さて、上記のGROWフレームワークに基づいて、マネージャーとの1:1ミーティングで1時間しっかりと自身のキャリアについて話しましょう。そのときに言うべきことと、言わない方がいいことをあらかじめ見てみましょう

🚫キャリアについて言わない方が良いことと、おすすめの言い換え

  • 🚫ネクストステップとして何をすればいいですか?
    こう言おう→ 「私がモチベーションがあるのはXXXXXで、これにとても興味があります。」

  • 🚫18ヶ月経ちましたが、いつプロモーションできますか?
    こう言おう→「プロモーションのために必要なことを学びたいと思っています。どのようなスキルや経験が求められますか?」

  • 🚫別のチームや会社に行きたいんですが、どうすればいいですか?
    こう言おう→ 「他の会社やチームのXXXXというロールに興味があって、経験したいと思っています。 (もしかしたら、同様の機会を与えてくれるかもしれない)」

  • 🚫チームの○○さんと同じスキルがあるのに、なんで自分はプロモーションできないんですか?
    こう言おう→ 「プロモーションのために、私が持っていないどのような他のスキルが求められますか?」

  • 🚫何をすればいいかわかりません
    こう言おう→「 XXXXに興味があって、学ぶ機会が欲しいのですが、何をすれば良いですか?」

これらの内容を日本の会社で働いている方が見ると、マネージャーに対してこんなに直接的にプロモーション(昇進・昇格)について聞けないよ!という方も多いかもしれないです。これは文化というか企業風土の違いかもしれませんが、グローバルの企業ではかなり積極的にプロモーションへの興味をアピールし、そのために何が必要なのかをしっかりと会話して、握り合う必要があるので、逆にこれらのことを明確に言わないと、プロモーションの機会を失ってしまいます。

実際に私が事前に用意した、言うべきことリスト

1.モチベーションと興味関心ごと
→ 「より良い経験やナレッジを持ったプロダクトマネージャーになることに興味があります。それによって、長期的には日本の企業やプロダクトに携わる多くの人に還元したいと思っています。」
2. プロモーションのために
→ 「これまで初期のプロダクトのPRD作成と、デザイン、ローンチを経験しました。プロモーションのためには次にどのようなスキルや経験が求められますか?」
3. 学びたいスキル
→ 「顧客の声をロードマップや新機能に変換できるスキルを構築したいと思っています。そして、高速にプロダクトを開発して改善していきたいです。そのために何をすればいいですか?」

✍️キャリアの会話が終わったら

キャリアの会話の後、マネージャーとのキャリアの会話の後で、話した内容や目標に向かって前進するための明確な次のステップを共有するために、以下のことをやりましょう。

  • 共同編集ができるドキュメンテーションツール( Salesforce QuipやNotion, Google Docs)で、ここまでの会話や内容を共有する。

  • ✅ 社内のキャリアフレームワーク (SalesforceにおけるV2MOMや、OKR) に当てはめて、会話内容をまとめる

  • 次のステップを明確化する

  • 定期ミーティングをセットして、進捗に関して会話する (最低でも四半期ごと)

🎍年明けに実施に移すために

ここまで読んでいただきありがとうございます。なるほどな〜と思っていただけたら幸いですが、さらに実際にこのようなキャリアの会話をマネージャーと話していただけたらもっと嬉しいです。
そのために最後にチェックリストを用意しました。ぜひ年末休みに入る前にこれらのことを行って、自身のキャリアについて考えてみてください!

  • ✅ マネージャーとキャリアについて"だけ"会話する1時間のミーティングをセットする

  • ✅ 事前にメールやSlackで、GROWに基づいて話したいことの概要を共有しておく

  • ✅ 自身の強みやキャリアの機会、ゴールについてフィードバックが欲しいことを事前に伝えておく (急に振られてもすぐには出ないので!)

✍️ 実際に私が受けたフィードバック

最後に、恥ずかしながら自信がうけたフィードバックも公開したいと思います。
(レポートライン上のマネージャーは年明けまで不在だったので、私の同僚かつメンターからもらったフィードバックになります)

  • カウンターパートのプロダクトリーダからもっと信頼をもらうために、関係性を深めて、フィードバックをたくさんもらおう

  • 今年ローンチした機能を使ってくれている顧客を明確に作り、少なくとも特定の顧客の製品利用状況・アダプションを改善し、成功事例を作ろう

  • 新機能の構想からイチから企画して、機能リリースまでやってみよう

  • 来年の10月頃にプロモーションできるように、それを証明する成果や実績を作れるようなタイムスケジュールを立てよう

  • 十分に次のレベルに必要なことはできているから、もっと自信を持って、周りの人にアピールして、認識されるように頑張ろう

どれもとても参考になることで、来年にやるたいことが色々頭に浮かんできたので、休みの間に少し考えてみたいと思います。

Notion テンプレート公開 📖

いかがでしたでしょうか?実際に私が使っているキャリアデベロップメントのためのフレームワークと、実際に会話した内容を公開してみました。
もちろん、今回紹介したフレームワークはプロダクトマネージャーの方のためだけではないフレームワークです。しかし、プロダクトマネジメントという職種自体、定義も難しく、正解があるものでもないですし、特に日本では認識がバラバラなので、キャリアについて考えたときに悩んでしまう方も多いと思います。そこで、このような内容を透明性を持って公開することで、誰かのために役立つことを願って、今回のnoteを書きました
そこで、今回のフレームワークの内容をご自身でまとめていただくことができる、Notionのテンプレートも作成しましたので無料で公開します!

Notionで作成したテンプレート
GROWフレームワークに基づいた記入欄

興味がある方は以下のTwitterの返信かDMでご利用の旨をご連絡ください!RTなどしてくれると喜びます。

さいごに

来年もプロダクトマネジメントに多くの人が興味を持ってもらって、ハイプサイクルにおける幻滅期のようにならないように、これからも情報発信をしていき、来年も良いプロダクトの年になればと思います。
最後に、この記事が良かったと思った方は、ぜひTwitterのフォロー、そしてnoteのいいねをお願いします!励みになります🙇‍♂️
それでは良いお年を! 🙌

参考記事


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