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「天使ガブリエルが伝えようとしている」 第15回トゥールーズ国際交流アート・フェスティバル 作品カタログ

「視覚と聴覚の関連」を追求した、ビデオ・アート「天使ガブリエルが伝えようとしている」の作品概要は、2021年7月31日に書いていますから、そちらを読んでください。

画像データから音楽を取り出すビデオ・アート「天使ガブリエルが伝えようとしている」は、フランス南西部の都市トゥールーズで毎年開かれる「XXV Rencontres Internationales Traverse(第15回トゥールーズ国際交流アート・フェスティバル )」に、2022年4月6日〜30日まで参加して、高評価を得ました。

作品ビデオ:The angel Gabriel is about to tell

その後、全参加作品のカタログが編纂され、ウェブ上で自由に閲覧できるようになったのですが、フランス語だけで書かれていますから、多くの日本人には英語ほどの馴染みもなく、なかなか詳しく伝えられないこともあって(実は私もフランス語がわかりません)、翻訳ソフトを使って日本文、英文の比較をしながら、私なりに分かりやすく書き直したものをここに載せます。最後にアート・フェスティバルの公募について書いています。

カタログ 305ページ
カタログ 306 - 307ページ

以下に日本語訳を載せます。作品ビデオは上に貼っています。


小島健治「天使ガブリエルが伝えようとしている」

ロベルト・カンピン作:受胎告知 3枚組 トリプティックの中央部分

とてつもなく価値を持った言葉... 本来の聖書の言葉に時間を吹き込みます。計り知れない言葉の交流の瞬間である「受胎告知」。大天使ガブリエルとユダヤ人の少女マリアとの対話。マリアは驚きを表現した後、救世主の母となることを承諾します。人の思考の範疇では考えられない...... このシーンのやりとりは、ある時代には彼女に向けられた「金の文字」として描かれました。少なくとも少女と天使である立場からすれば、奇妙な挨拶であることは確かです。その言葉『AVE GRATIA PLENA DOMINUS TECUM(こんにちは、恵みに満ちたあなたへ、主は)』。ロベール・カンピンは聖書の言葉を放棄し、典型的なフランドル地方の中流階級の部屋を舞台に、華麗な家具、花瓶、燭台、本などを非常に緻密に配置し、油絵具によって明るさ、勝利の光を描いています。唇から言葉はなく閉じたままです。

Create Music from a Classic Painting / The angel Gabriel is about to tell

小島健治は、このオーク材のパネルに描かれた15世紀フランドル様式の油彩画で、波を感じ取り、音によって敏感に反応する様子を表現しています。見えない音を、見えるように聴かせてくれます。彼は、自分の作品制作のやり方に忠実に、アルゴリズムに従って作曲し、素材にはバイナリ(0,1)を選んでいます。そして、そうすることで、受胎告知の視覚と聴覚の関係を、刻まれたテキストによって継続させているのです。

彼は、絵画から得た色彩成分を、その過程を動画にし、音符に整理して、MIDI形式のコンピュータ・ピアノで演奏します。

Create Music from a Classic Painting / The angel Gabriel is about to tell

「受胎告知」は、計り知れないものが感じられる瞬間を絵にしたものですが、小島健治はそう言った思考とは無関係に、絵画そのものから隠れている音楽を取り出します。言葉の方向性を見ながら、絵画のビジュアルデータを読み取ります。

天使ガブリエルが今まさに語りかけようとしている所から、天使の手からマリアの手へと音が移動し、聖書の言葉への敬意を表すように、ドレープで本を保持しています。カンピンのこの作品は、福音書にある大天使ガブリエルの出現と言葉に対する、マリアの連続した反応を示す正確な身振りの語彙通りには従ってはいません。

Create Music from a Classic Painting / The angel Gabriel is about to tell

小島健治は作品の帯状の流れにある、手から手だけで画面を構成し、眼差しを排除しています。色彩を採取する正方形は、花瓶、燭台を最初に避け、服の色合いを、あれこれと選び出します。前のものから独立して、あるいは対になって、ある点から別の点へと飛び移ります。すぐに、それぞれ3ヶ所の出現に対して、3つの2進数の数値が表記されます。

「天使ガブリエルが語ろうとしている」の装置は、絵画を模倣することなく、楽器を模倣することなく、過去の形の愛すべき厳しさを響かせる、シンプルなものであることを意図していたのです。この受胎告知の投影の上に張られた、シンプルな布の上で絵が作られ、その音楽と組み合わされます。サンプリングの精密さと音の楽しさに目を奪われます。

キュレイター:シモーヌ・ドンペイレ

Create Music from a Classic Painting / The angel Gabriel is about to tell

作家は、このような(フランドル)絵画の方法は、後の美術史に影響を与えたもので、現在の新しいバイナリ(0,1)の芸術素材との可能性を重ねています。それはまた、フランドルの芸術家の実践のように未来を切り開くものでもあると述べています。

メディア、言語、文字、映像、音楽... 現在私たちの文明が発明したものは、すべて2進数に変換して記録されています。現代アートは今、視覚や聴覚だけでなく、ひとつの感覚の限界を超えた、新しい世界にアプローチしようとしています。出力形式さえ正確に計算されていれば、データは互換性があるのです。


翻訳終わり


これまで15回開催されてきた「International Encounters Traverse」は、日本のメディア・美術界にはほとんど知られていませんが、映像作品・パフォーマンス等、非常に興味ある現代アートを多数輩出しているフェスティバルです。2017年から作品カタログはオンライン化され、自由に閲覧できます。2019年には中国北京市と銀川市で作品の一部を展示、キュレイターによる講演をしています。

この下に、カタログと来年度の公募ページURLを貼っておきます。

2023年の公募ページ

2022年のカタログを見ると、私以外の日本人の名前らしい方はもう一人いますね。せっかくのインターネット時代ですから、ビデオ制作をしているアーチストはどしどし応募しましょう。私は2019年からこれまで3回参加しています。

応募には少し英語が必要ですが、現在は優秀な翻訳ソフトもあります。情緒的な書き出しは避けて、始めから何を伝えたいのか論理的に、決められた文字数を有効に使うことが大事です。それとソフト翻訳では日本語の曖昧さから来る意味の取り違えもありますから、よく読み直した方が良いでしょう。応募は無料で、採用された作品はネットで送ることができます。現地に行かなくてもベニューでの手配は、すべてフェスのスタッフが行ってくれます。

日本に住んでいても、どんどん海外で評価されましょう。


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