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輝かなかったヒスイ -富山の縄文時代

北陸富山の縄文時代を知る旅‥
前回、富山市「北代きただい縄文遺跡」では、〝縄文土器でカエルを飼育していた〟というちょっと面白い仮説に出会いました。


その富山市を後にして、再び〝あいの風とやま鉄道〟に揺られること1時間、左手に日本海、右手に立山連峰と交互に景色を楽しみながら「富山県朝日町」のとまりへやってきました。
あと少しで新潟県糸魚川市、長野県白馬村とも接する富山県の東端の街です。

~ 鉄道名の〝あいの風…〟の由来は、4月~8月に沖から日本海沿岸に吹く風のことで〝夏の季語〟でもあります。~

そしてここには全国的にも有名な「ヒスイ海岸」が広がります。
縄文時代からヒスイの原石が海岸に打ち上げられていたと言われている宮崎・境海岸で、今でもヒスイを探しに訪れる人がいるそうです。が…残念ながらそう簡単には見つからないようです。

この「ヒスイ海岸」産のヒスイの玉類(ペンダント)や耳飾りは、各地の縄文遺跡から見つかっています。その美しさに加え、当時からパワーストーンとして人気があったようです。


さて今回の目的は、海岸から4㎞ほど内陸にある不動堂ふどうどう遺跡」
とまりからは街中を走るワゴンタイプの小さな「あさひまちバス」に乗ります。商店や病院と街のあちらこちらに寄りながら、やがて田んぼの広がる台地に。

そして現われたのは、私が思い描いていたとおりの〝立山連峰〟を望む縄文遺跡。

縄文時代中期(今から約5000年前)の集落で、近くには小川が流れ、竪穴住居や土壙墓、食料貯蔵庫跡が確認されています。

ぽつぽつと雨まじりのお天気、それでも〝立山連峰〟はこんなにも近くに感じられます。


再現されている竪穴住居の中でひときわ目立つのは、17m×8mもある大型竪穴住居です。これは冬の間のマツリの場や土器作りの場など、集会所や共同作業所であったいわば公共施設的なたてもの。

このような大型竪穴住居は雪国では多く見られ、〝厳しい冬時間〟を過ごすための工夫の1つであったようです。


立山連峰を望む不動堂ふどうどう遺跡」、ここでの暮らしはどのようなものであったのでしょうか。
すぐ近くにある「まいぶんKAN(朝日町埋蔵文化財保存活用施設)」へ出土品を見に行きます。


不動堂ふどうどう遺跡」
から出土した縄文土器は、新潟の「火焔型土器」と東北地方の土器、そしてそれに影響を受けたかのような土器が多く見られます。


ただ…あまり出土品は多くないようです。ヒスイやその装飾品が沢山あるのでは?と思っていましたが、それもありません。

同じ時代の近隣の遺跡からはヒスイの玉や耳飾、その製作のための遺物が多く見つかっていますが、不動堂ふどうどう遺跡」にはその痕跡は見られないようです。

不動堂ふどうどう遺跡」の調査はまだ一部のみ、ということでなので、〝まだ発見されていないだけ〟という可能性もあるということですが…。


ここに展示されているヒスイは、ヒスイ海岸から300mの台地にあった「境A遺跡」のもの。

ヒスイは光をあてると輝きます。
光にあたっていない下段の原石は、ただの白い石ころに見えてしまいますね。

ヒスイの原石がある海岸近くには遺跡が点在し、〝加工途中のヒスイ〟、その加工をするために使った〝蛇紋岩で作られた道具〟が多く見つかっています。

海岸にはヒスイと共に〝蛇紋岩〟も豊富で、蛇紋岩を材料にした〝石の道具作り〟が盛んな地域でもあったようです。
裏を返せば、〝硬いヒスイを加工するための道具=蛇紋岩の道具〟があったことで、ヒスイの加工品作りが盛んになったと思われます。



このように海岸近くの遺跡からは、ヒスイや道具の加工が盛んであった痕跡が多く見られますが、海岸から僅か4㎞しか離れていない不動堂ふどうどう遺跡」では、今のところ全くその痕跡が見られない…それは何故なのでしょうか。

〝僅か4㎞〟ではなく、〝遥か4㎞〟だったのでしょうか。

当時のヒスイは現在のダイヤモンド以上に高価であったと言われています。物々交換などの交易によって各地に広まったと考えると、産地であるこの地域はとても潤っていたと想像できます。

その価値を知った縄文人たちは、より近い集落の住人だけのものにしていた…とも考えられないでしょうか。

それとも他に?…真相に迫るには、遺跡がもっと調査されるその時まで待つしかないようです。



少々下世話な考えが浮かんでしまいましたが、縄文人も私たちと同じ人間とすると…そんなことがあったかもしれない、と思ってしまいます。

立山連峰を眺めながら暮らし、冬には大型竪穴住居で何を語り合っていたのでしょうか。



▪「富山の縄文時代を知る旅」 今回は3つの遺跡を訪ねましたが、〝富山〟〝立山連峰〟ならではの特徴を捉えることはできず‥またの機会に探っていきたいと思います。


参考図書
富山県埋蔵文化財センターパンフレット

最後までお読みくださりありがとうございました。


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