新年が始まって早いもので、もうすぐ２週間。
街中ではまだ少し〝おめでとう〟の華やいだ空気が留まっているようにも感じます。
昨年創立150年記念を迎えた東京国立博物館では、記念事業の展示と共に新年らしい特集が開催中です。

博物館に初もうで
「兎にも角にもうさぎ年」展

干支の兎が大集合のこの特集。
昔からペットとして、狩りの対象として…私たちに身近な存在であった兎が様々な造形になって登場します。
新年のおめでとうに相応しい特集を、楽しく軽やかに楽しみましょう。

染付水葵そめつけみずあおいに兎図大皿うさぎずおおざら
伊万里｜江戸時代・19世紀

幕末に焼かれた伊万里焼の大皿。
２匹の兎はレリーフ状に少し盛り上がっていて、背景は全面を藍色で彩色し、水葵と流水を白抜きで表しています。

２匹の兎はなんとも可愛らしいく、特に右側の兎は愛嬌ある表情と仕草がユニークです。

博物館獣譜はくぶつかんじゅうふ
明治時代・19世紀｜紙本着色、折本

東京国立博物館の前身の博物局のメンバーによって編纂された作品集。
獣類は約400も描かれているそうです。

今にもピョンと飛び出しそうな兎ですね。兎の毛一本一本までが生き生きと丁寧に描かれている作品です。

藍釉兎らんゆううさぎ
中国｜唐時代・8世紀

陶製の兎は王侯貴族の墓の副葬品でした。
前脚を立てて座るのは野兎の特徴で、娯楽としての鷹狩の獲物であった兎を表しているようです。

耳が短く、可愛いからは遠く離れた様相の野兎です。国や時代によってイメージの違いがあることが良くわかる一品ですね。

玉兎搗薬文磚ぎょくととうやくもんせん
朝鮮｜楽浪・1～3世紀｜土製

磚せん(レンガ)積みの墓に用いられた建築部材です。
兎が杵きねと臼うすで不老長寿の仙薬せんやくをつく様を表しています。亡くなった人が来世でも末永く平穏であるように願いが込められています。

兎が手も体もめいいっぱいに伸ばして作ってくれる薬は、とても効き目がありそうに感じますね。

十二天像じゅうにてんぞう(月天げってん)
室町時代・15世紀｜紙本着色

もともとはインドの神様であった十二天像じゅうにてんぞうですが、密教に取り込まれ仏教の守護神となりました。

ところで兎はどこ？

月天げってんの左手にある月輪がちりんの中にいました。
うっすらですが、立っているような兎が見えるでしょうか？

染付兎形皿そめつけうさぎがたさら
御深井おふけ｜江戸時代・19世紀

名古屋城内で作られた御深井おふけ焼の一種と思われる焼き物です。全体がガラス質の釉薬で覆われ、キラキラと発色しています。
桃のような形は兎をそのまま見て捉えたようで、くるりとした目がこちらを見ています。

金茶糸素懸威波頭形兜きんちゃいとすがけおどしなみがしらなりのかぶと
江戸時代・17世紀｜鉄製漆塗　張懸

大波を抽象的に表し、左右に兎の耳を付けた兜は、外形を張子はりこで作って兜本体に被せた張懸はりがけと言う技法のもの。兎は動きが早く多産であることから、戦国武将にも好まれたようです。

兎耳をつけて戦いに挑む…想像するとなんだか滑稽ですね。

火事装束かじしょうぞく　紺麻地波兎雨龍文様こんあさじなみうさぎあまりゅうもよう
江戸時代・19世紀｜麻、刺繍、切付、白上げ

江戸屋敷の武家女性のための、火事に備えた麻の単衣の装束です。火から身を守る縁起を担ぎ、波に兎、雨龍など、水をよぶ絵柄で、珍しい赤兎が描かれています。

火事が多かったといわれる江戸、武家の女性たちはこんな素敵な防災服で備えていたのですね。

波兎蒔絵旅櫛笥なみうさぎまきえたびくしげ
江戸時代・17世紀｜木製漆塗　蒔絵

携帯用の化粧道具入れは、全体を波と飛びはねる兎が描かれた躍動感ある造形です。謡曲ようきょく（能の脚本部分）の一節、「水面に月が映り、月の兎が波の上を走る」の伝説を取材しています。

波と兎の流れるような動きがとても斬新ですね。

仏涅槃図ぶつねはんず
鎌倉時代・14世紀｜絹本着色

釈迦が亡くなった時の様子を描いています。沙羅双樹さらそうじゅのもとで身を横たえる釈迦の廻りには、菩薩や羅漢、動物たちが集まり嘆き悲しんでいます。
兎はどこにいるでしょう？

人々や鳥や馬と共に悲しんでいる兎は、控えめに描かれています。

兎水鳥鏡とすいちょうきょう
岐阜県瑞浪市土岐町桜堂経塚出土｜平安時代・12世紀｜銅鋳造

軽快に飛び跳ね兎と羽を休める水鳥。対照的な兎と水鳥の様子が描かれた鏡です。平安時代の鏡には、草花や鳥や蝶など、自然の風物の模様が入った鏡が多く見られますが、兎もモチーフになっていたのですね。

生き生きした躍動感ある兎の様子が、とても良く表されている鏡です。

見立行平みたてゆきひら・松風まつかぜ・村雨むらさめ
鳥居清満筆｜江戸時代・18世紀｜細判　紅摺絵　３丁掛

謡曲「松風」の行平ゆきひらと、左右に松風まつかぜ・村雨むらさめの姉妹が描かれいます。添えられた句に福寿草などが読みこまれ、新年の喜びや祝いの言葉が述べられています。

兎は着物の柄になっています。

古代から愛されてきた兎たち、
その時々の造形作品に趣向を凝らされて表現されてきました。
全40点あまりの兎が一堂に会する特集、
ぴょんぴょんと明るい一年に導いてくれそうです。

そして、もう一つのおめでとうは「東京国立博物館創立150年」。
その記念事業として数々の事業が行われていますが、これもその一つです。

国宝「松林図屛風」
長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀

言わずと知れた等伯の傑作、さまざまな水墨技法によって表された松林からは、風の音や香りまで感じられそうです。
新憲法が施行された昭和22年（1947）5月3日に、東京帝室博物館から国立博物館となりました。 そしてこの年に、戦後初めて購入された作品のひとつがこの「松林図屛風」です。

創立150年を迎えた国立博物館、
今年も魅力的な展示が目白押しです。

来年は辰がいっぱいの展示かしら⁉
だいぶ気が早いですね。

＊各作品の説明は、展示解説を参考にしました。

最後までお読みくださり有難うございました☆彡