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「深い河」 遠藤周作

人々の悲しみや苦しみ、その全てを包み込んで、ガンジス川は滔々と流れる。

多くの人にとって人生は不平等なものだが、死だけは誰にでも平等に訪れるということを指し示すかのように。

小さき弱き者のたった1人の苦しみすら、救えないなら、その人は愛を持って人々を救うことにはならない。

神父の大津は、貧しき見ず知らずのインド人のために生き、そしてゴミ溜めの中で、何の栄誉もなく、死んでいく。

他人から誤解され、憎しみを受けて死んでいく。

しかし、大津は最期に呟く。

「これでいい。僕の人生はこれでいい。」

無償の愛を他人のために捧げ尽くしたら、その人はボロ雑巾のように世の中から捨てられる。

自分の好きな人のためにすることは恋の行為であって、それは無償の愛ではない。

大津が人生の全てをインドの貧しき人々のために捧げるのは、それが神との祈りによる密やかな交流、喜びによるものだからだ。

もしそれがなかったら、大津の無償の愛はただの自己満足による、偽善に過ぎない。

遠藤周作は、ヨーロッパに於けるキリスト教を何とか日本人に合うように、生涯をかけて作り直そうとした。

弱いもの、苦しむものに寄り添うこと。
暗闇から光を見ること。
望みなきところに、希望を抱くこと。

深い河、おすすめです。
ぜひ読んでみてください。



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