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初心にかえり思うこと

任地に新隊員が配属されることになった。
昨日から任地訪問に来ている。
感心事がいまの私と全然違うことにハッとさせられる。
なにが買えるのか、電気や水の供給状況はどうか、ネットが使えるか。
タクシーの乗り方、レストランでの手の洗い方、星の見え方。
心配したり、驚いたりすることが、すごくフレッシュで6か月前、自分が初めて任地にやってきた日のことを思い出す。

任地にはだれも先輩隊員はいなかった。
隊員が派遣されていたのは10年以上も前のことで、事務所にも何の情報もなかった。

不安でたまらなかった。
怖くてたまらなかった。

でもここに来ることは自分の望んだことだったし、海外に慣れているつもりだった。
だから必死に精一杯強がってふるまった。

ここでどうやって暮らしていったらいいのか。
ここでどんな活動をしていったらいいのか。
考えると不安でたまらかったし、そんな風に弱っている自分が情けなくて悔しくてたまらなかった。

なににおびえているのか、
なぜ楽しめないのか、自分を責めた。
自分で自分を追い込んでいた。

「なにもできなくてもいいんだよ、そこでひとりで暮らしてるってだけで偉いんだよ。すごいことなんだよ。だからなにもできなくても大丈夫だよ。」
そんなやさしさにあふれたことばに号泣した日のことが昨日のことのように思い出される。

あれから6か月が経ったのか...
たくさん泣いて、たくさん揺れて、たくさん悩んだ6か月間だった。
6か月前と大して変わっていないような気もする。
でもあのころのような不安や恐怖はなくなった。

町にはたくさんの知り合いがいる。現地語も少し話せるようになった。自分のペースで仕事ができるようになった。

一番変わったことは、できるだけ長く任地にいたいと思うようになったこと。
赴任した当初は、首都に行く機会を心待ちにしていたし、任地に帰りたくないと思った。
自分が任地にいる意味が見いだせないでいた。
職場にも地域にも自分の居場所がないように思えてならなかった。

でもいまは違う。
少し任地を離れれば、町の人、職場の同僚から「どこに行っていたの?どうしてたの?」そう声をかけられる。
それに住民に働きかけるチャンスを1回でも失うのは惜しいと思うし、気になる住民がたくさんいる。そう思うと仕事を休みたくないと思ってしまう。

6か月前はこんな日がくるなんて想像もできなかった。
相変わらず華やかな活動はできていないし、自分が必要とされている存在なのかはわからない。でも自分の歩きたい道、進みたい方向が見えるようになったことが一番大きな違いなんだと思う。

私は人付き合いが得意ではないし、言語能力が高いわけでもない。だから胸を張って“友達”と呼べるひとはいない。
でもよくしてくれるザンビア人がたくさんいる。時々はイヤな思いをすることもあるけれど、たくさんのひとに助けられ支えられながらひとりここで暮らしている。

こうして穏やかな気持ちで過ごせる日々もいつまで続くかはわからない。
またすぐに次の壁にぶつかるかもしれない。
でもこの6か月を乗り越えられたからもう大丈夫な気がしている。

任地に赴任して1か月が経ったころ、大学時代の後輩から協力隊応募について相談が来た。
ちょっと前まで相談する立場だったのに、相談を受ける身になったのか、と思った。

思い描いていた姿とはだいぶ違うけれど、協力隊に応募することを決めて、試験を受けて、合格して、派遣前訓練を受けて、ザンビアに赴任して、任地で暮らして6ケ月が経った。

なにも変わっていないようでも、時間は経っていて、見える世界は変わっていて、少しずつ前に進んでいる。

一つ一つの変化を心にとめて、2年という限られた時間を大切にしたいと思っていても、意外と変化に気づかないこと忘れてしまっていることがたくさんある。
だからこうして文字にして、ことばにして、時々読み返す。

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