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印象深い女性その1 〜50代のスペイン人女性〜

出会い

学生の頃、1ヶ月ほどアメリカの語学学校に行きました。
日本人も多くいたのですが、何故か私のアサインされたクラスは6人全員の国籍が違っており、面白かったです。

20歳くらいから上は50代までと幅広く、ベトナム、ペルー、チェコスロバキア、スペイン、ベルギーと日本人の私でした。

どの人もとても個性が強くて面白かったのですが、
「若さ=美」
という信仰が強い日本にいた私にとって、いい意味でそれは間違いであると気がついたのはここで出会ったスペイン人女性でした。

パーマがかかった髪を無造作に束ね、もともとのパッチリした目にマスカラとブルーのアイシャドウがよく似合い、それに合わせるかのようなブルーのネイルもかわいくて。

彼と一緒にバカンスも兼ねて来ているという彼女は、大体30歳くらいかな、という印象でした。

私の感じていた若さと幸せの相関関係

当時まだ若かった私は、おそらくメディアなどの影響もあって、人は若ければ若いほど人生が楽しくて、30、40、50と年齢を重ねていくに従って人生はつまらないものになるようなイメージがありました。

おじさんたちが飲み屋で青春時代を懐古しては昔話自慢を繰り広げるような。

女性も若い方がちやほやされるし、体型が崩れてシミやシワが出てきたらもう女性としてもオワリ、みたいな冷たい印象がありました。

もしそれが本当なら、若さの真っ只中にいる今が楽しくなければ将来はもっとつまらないんじゃないか、なんて余計な心配も出てくるわけです。

若い時って選択肢が多いですが、だからこそ迷って楽しいと思えない時期もあると思いますし。

「25種類より、3種類だけ用意された方がジャムの売れ行きが良かった」
というような実験を聞いたことがあります。
選択肢は無限にあればあるほどいいわけではなく、ある程度制限されていた方が決断しやすいんですね。

ちょっと話が逸れましたが。

「若い方が人生は楽しい=若い方が幸せ」
たぶん無意識の中に、こういう思い込みが作られていたと思います。

でも、当たり前のことですが年齢と幸せが比例しているわけないんですよね。

寿命という観点でも、全員が等しく80歳まで生きるというならある程度揃った統計も出せそうですが、生まれて間もなく亡くなってしまう子もいれば、120歳まで生きる人もいます。

70歳になり、若くて羨ましいと思った30歳の人が交通事故に遭って先に亡くなるかもしれません。
息子を介護している90歳の女性は、
「長生きは辛い」
と話していました。

結論からいうと人の幸せは各人が決めるということになりますが、過去に幸せだった人も不幸だった人も、今見えるのは「今の幸せだけ」

先に結婚した同僚を羨ましいと思っていた友人は、それから数年後に結婚し子宝に恵まれ、先に結婚した同僚は不妊に悩んでいる話を聞いて、
「人生ある一つのポイントだけで勝ち負けって決まるもんじゃないんだな」
と話していました。

スペイン人女性の背景

話を戻しまして。

クラスのあと、みんなで食事に行った時に話して驚いたのですが。
30歳くらいかと思っていたそのスペイン人女性は、実は50歳でした。

私の見る目がなかったのかのかもしれませんが^^;
更には、お子さんが3人いて全員成人しており、一番上の息子さんが30歳だと言うんです。
もう、人生のトップ5に入るくらい驚きました。

人種が違うので骨格も違うのでしょうが、
「50歳だと筋力が衰えてきて目の上の筋肉も落ちてくるんじゃないの?
 すごい目力だけど、目を開ける上瞼の筋肉も強いのかな?」
20歳の私は、そんな検討違いのことを考えたりしていました。笑


実は一緒に来た彼とは10年ほどの付き合いで、お子さんは前の旦那さんとの間にもうけたんだそう。

旦那さんとは死別か離別か聞きませんでしたが、スペインでは(というよりキリスト教は)離婚をすることが非常に難しいため、正式に離婚はしていないとのこと。

話からも、彼女がとてもいいお母さんで、若くして母になったのできっとたくさん子供たちと遊んであげたんだろうなと想像できました。

50歳の女性より、20歳の女性の方が良い?

何をもって良い悪いを言うのかにもよりますが、恐らく色んな経験を経て自分の軸を確立しているように見える彼女は、年齢関係なく人として素直にうらやましいなと思える魅力がありました。

「ワインは若いものより熟成されている方が旨味がある」
「シワではなくこれはヴィンテージラインよ!」
「女性は年齢を重ねた方が魅力が増す」

こんなセリフを目にするたびに、
「ものは言いようだけど、やっぱ肌にはハリがある方がいいし、シワもない方が綺麗じゃない?」
と思っていました。

でもこの彼女を見て初めて、
本当に人生経験が女性を美しくするのかもしれない。」
そう思えました。

学校ではカジュアルな服装を楽しみ、日が暮れる頃にはドレスアップして彼と食事に出かける。
英語がほとんど話せないその彼は、ギターが上手でみんなの輪の中で弾いてくれたり。
彼とギターの音色に聞き入っている彼女の嬉しそうな表情は、見ているこちらもあったかい気持ちになりました。


いい人生とそうでない人生は最期になってみないとわかりませんが、彼女は自分の時間を自分の好きなことや人にたくさん使っているんだろうなと思います。
なんというか、そう思わせる雰囲気が滲み出ているというか。

同じ時間でも、自分がやりたくないことや一緒にいたくない人に時間を費やすのと比べると、過ごす時間の「質」はかなり違ってきそうです。

私は彼女の年齢まで、質の高い時間を積み重ねていけるだろうか?

人種も住んでいる国も違うので、ロールモデルというには少し違うのかもしれませんが、年齢を重ねることにネガティブなイメージしかなかったので、若い時期に彼女に出会えたことは本当にラッキーだったなと思います。

「どんなに綺麗でも愚痴ばっかでつまらない20代より、もっと話したいと思える50代の方が断然魅力的だわ!
機嫌よく今を生きている人が、結局一番輝いているんだな」

特に、
「右へならえ」
「母親はあまり悪目立ちをするものじゃない」
「求められていることを察知するべし」
こういう無言の同調性を求められる場面って、日本だと会社でも子育てでも割とあったりすると思うんですが、それなりにその場をこなしながらもたまに彼女の鮮やかな青いネイルを思い出していました。

過去に引っ張られず、未来を不安に思いすぎず、他人と比較せず。

1週間や1ヶ月といったちょっと先の予定にウキウキしながら今日することをひとつずつこなしていく。
ちょっとそこまでの外出でも好きなピアスをつけてマスクの下を笑顔にしたら、なんでもない日もなんかいい日になっている気がする。

結婚生活はそこそこ苦労しましたが、今は心身のバランスも良くて毎日が結構楽しい♪
20歳の自分には
「割といい感じに生きてるよ!」
と伝えられそうです。

50歳になったら、青いネイルをしてみようかな ^^

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