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93○ 2/1 書き下ろし「それでも世界は回る」

「それでも世界は回る」


三十を過ぎてから漸く生まれたので
既に使い古しの脳が麻痺している
学校の教室の入り口とそこから覗く
私が座っている机の距離、から
先生との距離からシナプスの距離の
渋滞とか交通経済に基づいた緩和を
考える内に学生じゃなくなった
窓から射し込む光に
解決策を求めていたのは図星で
一向にたどり着かない摩天楼のよう
空白期間の拡大を
止めなければと呆けていた
漁港の側に住んで
このまま海が拐っていってくれないかと
不摂生で肉付いた腹に
包丁をあてがったりもした
煙草と女は密かに続いていて
そして朦朧として目を閉じた毎日
私が在っても
道端の雑草さえ用はなく
彼らは酸素を出し
俺は二酸化炭素を排出する
通り過ぎる時間の中で
いつも溺れてきたが中々死ねず
石段を四つん這いで上がっていた
ここからの景色は
まだ木々茂って見通しが今一だが
森の頭頂部を拝み
吹き抜ける酸素を浴びている



***



黄赤青(きせきせい)

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