松下幸之助と『経営の技法』#327

1/7 たゆまず努力する

~すぐにうまくいくことなど滅多にない。根気よく、辛抱強く、地道な努力を続ける。~

 やることなすことが裏目にばかり出る。懸命に努力しているのに、どうもうまくいかない。そのような状況に陥って頭を悩ますことが、長い人生には時にあります。
 そんな時に大事なのは、やはり志を失わずに地道な努力を続けること、およそ物事というものは、すぐにうまくいくということは滅多にあるものではない。根気よく辛抱強く、地道な努力をたゆまず続けていくことによって、はじめてそれなりの成果があがるものだという気がします。
 私が22歳で独立し、自分で考案したソケットの製造販売を始めた時もそうでした。4カ月ほどかかってつくりあげたソケットも、売れたのは当時のお金でたった10円足らず、仕事を続けるどころか、明日の生計をどうするかという状態にまで追いこまれてしまいました。もしその時に、もうダメだということでその仕事を諦めてしまっていたら、今日の私も、松下電器という企業もなかったのはいうまでもありません。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

2つの会社組織論の図

1.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 まず、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者は投資対象ですから、しっかりと儲けてもらわないと困ります。逆に、投資家はそのような経営者の資質を見抜くことが必要です。
 ここでも、昨日1/6の#326と同様、逆境を乗り越える能力が必要、と説かれています。たしかに、勇んで取り組んだ事業で手応えがないのは、「折れてしまう」ところですが、そこを踏ん張ることが、経営者に求められる強靭性でしょう。
 その際の後ろ盾は、ここでも「志」です。便利なものを皆に使ってもらいたい、という志のようです。
 1/6の#326では、世間に信念を伝えるような意味の「志」であり、その基準で見れば、開業当時の松下幸之助氏には「志」がなかったことになるのですが、もっと現実的なレベルで社会貢献したい、という「志」はこの段階からあった、ということになります。

2.内部統制(下の正三角形)の問題
 次に、社長が率いる会社の内部の問題ですが、この点も1/6の#326で検討したことと同様です。苦境に陥った途端にバラバラになってしまう組織では、経営者一人が頑張っても苦境を乗り越えられません。経営者は、一人で頑張るだけでも大変な苦境の中で、従業員たちをまとめ上げてリードする能力と精神的な強靭さが必要であり、それには、組織運営の能力が必要なのです。

3.おわりに
 報われない「犬死」のような努力もある、ということを分かっていても、苦境にあるときは努力の重要さを言ってもらうと心が落ち着きます。精神的な救いを与えるのが宗教や神ですから、経営者やビジネスマンの精神面を支えてくれる松下幸之助氏が、経営の神様と言われる理由も、理解できるように感じます。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。



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