経営の技法 #64
7-6 デュアルラインを使いこなす
デュアルラインは、1人の従業員に対して上司が2人いるということになり、従業員から見ても、会社から見ても、最初は扱いにくくて面倒くさいシステムのように思われるが、特に海外の関連会社の管理上、活用が期待される。
1.概要
ここでは、以下のような解説がされています。
第1に、デュアルラインは面倒だけれども有効である、と問題提起しています。
第2に、その効用は、本書7-5「専門家のネットワーク」と同様、と説明しています。
第3に、デュアルラインには、負担が大きいこと、責任の所在が曖昧になること、の欠点がある、と説明しています。
第4に、この欠点を克服する方法として、法務部門の工夫を紹介しています。
第5に、デュアルラインを機能させるために必要な配慮などのポイントを紹介しています。
2.専門家のネットワークとデュアルライン
グローバルな企業で、デュアルラインと共に見かけるのが、専門家のネットワークです。
例えば、日本のジェネラルカウンセルは、日本のCEOだけでなく、本社側のジェネラルカウンセルにもレポートラインがつながっており、これがデュアルラインです。
そのうえでさらに、同じリーガル内での横のつながりも作ります。本書でも指摘したとおり、例えば国ごとに事業内容が異なったり、商品が異なったりする場合には、横で連携しても直ちに業務に役立つわけではありません。
それでも、横の連携を作る理由は、法務部の運営と似ています。それは、経営上の理由です。
例えば、仲間がいることによる忠誠心、帰属意識、モチベーションなどの醸成が考えられます。
3.おわりに
これは、責任ある立場になるほど孤独になり、その孤独感が判断を誤らせる危険を恐れているのが、少なくとも法務部の場合、最大の理由と思います。
最初は、偉くなったことを称えてモチベーションにする、という程度の認識でした。
しかし、ときに経営に厳しいことを言い、ときに部門の運営で人間関係に悩み、ときに自分の出した法的判断の誤りに気付くなど、一国のビジネスの法的問題を全て背負っています。仕事でかかわりが無くても、あの国の法務は大変だったらしいから、あの国のジェネラルカウンセルに声をかけておこう、お互い様だよね。
このように、重責と孤独感を和らげ、重大な任務を適切に全うしてもらうために、同じ立場のコミュニティーを作るのです。
※ 『経営の技法』に関し、書籍に書かれていないことを中心に、お話していきます。
経営の技法:久保利英明・野村修也・芦原一郎/中央経済社/2019年1月
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