ショートショート『不満だらけの体たち』
※「碧き香り」は完結していますが、ここで小休止です。
碧き香りの人物の設定はリアルなものではありません。😀
不満だらけの体たち
「ぼくだって起きているあいだ、あちこち目を配って大変なんだぞ。ぼくがきちんとみているから道をまちがえずに歩けるし、文字を書いたり、手でなにかをつかんだり、パソコンだってできるんだろ」
手足のみんながぶうぶう文句を言いはじめました。もちろん、心のなかで会話をしているのです。手足たちはたくさん働くわりにはお礼を言われたこともないと言うのです。ぼくたち、頭と顔だって言い分がたくさんあるのです。
赤く充血させた目が言い、
「そうやそうなんやで! 口があるから食べたり飲んだりして生きていけるんや」
とがらせた口も言いました。
「そうよ、そうなのよ。耳があるから話ができて、人ともコミニュケーションできるんじゃないの」
耳をひくひくさせて耳が言いました。
「君たち、私のことも忘れていないかい?」
お尻がこそっと言いました。
「私たちがいるからいらないものを外にだせるんでしょ。臭いし、いちばん辛い仕事をしているんだよ」
手の指が鼻をつまんで、口は舌をだしてお尻をからかいました。まったく不満が多いものたちです。
「おっと、君たち、私たちのことも忘れては困るな。皮膚や髪の毛、爪だって大事なものなんだよ。私たちは体の中を守っているんだからね」
髪は長い毛をなびかせて、さらりと言いました。
「わいらは骨でごわす。なんといっても骨が屋台骨でごわす。わいらがいなければ立ってさえおられんぞな」
ボキボキ骨を鳴らして指の骨が言いました。
「ちよっと待ちなさいよ。忘れてない? 私たち内臓たちのこと。私たち、あんた方が眠っているあいだもずっと働いているんだから」
そうです、日頃は目立ちませんが、内臓のみんなもいたのです。あの者たちはやたらとねちっこいのです。内臓たちはよほどストレスがたまっていたのでしょう。胃は刺激物の取りすぎだとか、心臓はもっと運動しなさいよなどと、不満話が終わりません。内臓たち以外のぼくたちは、もううんざりしてしまって、タヌキ寝入りをすることにしました。内臓さんたちお疲れさま。ぼくたちはもう寝ます。おやすみなさい。
(fin)
星谷光洋MUSIC『海の星』
※トップ画像のクリエイターさんは「MariKusu」さんです。
ありがとうございます。
「note」のクリエイターさん。詩、小説、エッセイ、絵、写真など、すごい才能の人たちの集まりだと、日々、思います。それだけに、個人的にはメジャーで活躍して、たくさんの人たちに喜んでもらいたいと思います。
気にとめていただいてありがとうございます。 今後ともいろいろとサポートをお願いします。