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冬と修羅(KOME KOME WAR)  川柳88句


Ⅰ.または如何にして誤配するのを止めたか  二十六句

散文に書かれなかったはせさん治

年暮るる安孫子素雄の都市と都市

実在のジャズマンに出す茶封筒

次元超え石屋に雪のあたたかさ

水蒸気革命の日に義眼拭く

コンセント屋が公式の零を換え

砂漠色安部公房のクリスマス

肉弾の句意と通底するパイプ

寺田屋のパイプカットを疑って

びろびろと蟹星雲を疑惑する

伯耆屋のスチームパンクつづく村

メスメルの論文に似た鯨幕

四季過ぎて砂の惑星暮れてゆく

独鈷杵を持たない筈の劇中歌

聴覚に東孝が分裂し

紅茸を誌上句会と思わせる

雪催小野田少尉をみて帰る

豚まんを他者の言語のなかに置く

貝を獲る冬の時代の仏映画

無を覚えネクロノミコン書き足さず

狩人がひとり溺れる昼の月

他人らの勘ピューターが零覚え

バッターの姓名知らず鶴凍る

凍蝶を総員想う映画村

外伝に囲碁教室を覆う影

ヤンソンが鰤を煮込んで居る宇宙

Ⅱ.あるいはSHAKEでいっぱいの海  三十六句

カッテージチーズを性に結びつけ

気球乗る或る少年の倫理の書

暗室に高知東急の複製画

火の海のペンフレンドが打つ鼓

あぶ刑事の換字のままに老いてゆく

冬の日々ニコラ・テスラを書いて読む

冒頭のさなぎがふえてゆくルパン

レッド(ホット)・チリ・ペッパーズらも猿を買う

猿買って日本列島投影図

うつくしい人がばったを飼っている

無をこするアル・パチーノの薬指

うな丼の強迫つづく冬の街

高い城ふたりみじかく手話交わす

うどん粉と記したはずのカッシーニ

火事の町母のオペラの終わりけり

二子玉に靴ひもほどく相撲取り

まざまざと相対性の金魚視る

天使旗を掲げ吉原接骨医

スパルタンXに視る外宇宙

アントニオ猪木の家にまた微震

マタマタの歩める先に母と母

磁力無き飴舐め尽くす堀辰雄

地の涯に仏字新聞切り分けて

天才の姦淫中に初氷

季語さがす春樹の訳のチャンドラー

雪の檻右翼雑誌をまとめ買う

縦笛をイングリッドが持ち上げる

分子へと分子つながるクリスマス

新木場のローテーションに病み上がる

きくらげの限界をみるマスクマン

絵画内岸田劉生勃起せず

闇のなかレレレと言って それっきり

地下鉄のワーズワースに昆布茶点て

プラレール研究会の伏字剥ぐ

ジャイアント馬場に粉雪家畜人

双頭の鷲が左京と右京哭き

Ⅲ.そして、突きを躱す舟  二十六句

醜型を畏れたままの大輪廻

この世からわが死につづく蟹を飼う

わが死後にバーモント在り暦買う

散文で書かれた芦屋雁之助

金的に応えるチーズバーガーズ

歯科医師に試作をされるズーラシア

ナウシカの大陸に麩をあてはめる

象狩ってアンテナショップ無音なり

力士立つ絶対零度パズルから

考える人らのクッパ大魔王

シンデレラ・マンが落とした阿弥陀籤

饒舌のヴィデオ・スターに星が降る

換喩してタツノコプロの阿呆船

ブッチャーが冬の時代に吹く喇叭

天草の乱を口述して寒波

娑婆に出て手に取るものが亀でなし

木星の時代はじまるクリスマス

コバルトを重ね上皇誕生日

冬ざれてゲームセンターあらしの句

屈葬のメタフィクションをするわれら

自慰の記を神の視点で書く花袋

偽漁師が文明堂の渦を抜け

ヨブ記読み聞かせする日の抜け忍者

冬の蛾を極私研究する画商

雪止んで宮城野部屋の私小説

戦場にたけしの居ないクリスマス


#川柳 #現代川柳
#詩歌 #文芸 #創作 #虚構 #NoWar


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