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ギリシャと神奈川の狭間で(2024年2月の観劇記録)

2月は、ギリシア神話を基にした作品と、神奈川を舞台にした作品の2本を観劇。

↑これまでの観劇記録はこちら↑



エウリディケ

演出が白井晃さんなのに、世田谷パブリックシアター主催ではない不思議な公演。

ベースになっているギリシャ神話は何となく知っていたので、時代設定を現代に置き換えたという点に興味を惹かれて観劇。
しかし、抽象的なセットも相まって、あまり現代に置き換えた意図は汲み取れず、個人的には消化不良な公演だった。

観客は正直で、客席の埋まり具合とカーテンコールの反応が色々と物語っていたと思う。

幕開きの若い男女が愛を語り合うシーンが、個人的には観ていてむず痒いというか、冒頭から置いていかれた感じがした。
フライヤーの宣伝文は「愛し合う二人のあいだには、いつも音楽が流れていた。」だったけれど、物語の途中から父と娘のパートに結構時間が割かれるので、この辺りも何だかちぐはぐな感じ。

あと、演出なのか台本の指定なのかわからないけれど、正面を向いて台詞を言うシーンが結構多いのも気になった。

キャストでは、栗原英雄さんがベテランとしてどっしりとした存在感を示されていて印象的だった。
崎山つばささんの少しおバカっぽい地下の国の王も、味わいがあって良かった。



箱根山の美女と野獣 ・ 三浦半島の人魚姫

神奈川県内各地を巡演するKAATカナガワ・ツアー・プロジェクトの第二弾。
(第一弾の「冒険者たち~JOURNEY TO THE WEST~」は未見)

今回は二本立てということで、まず「三浦半島の人魚姫」。その後、休憩を挟んで、「箱根山の美女と野獣」が上演された。

特徴的だったのは、舞台の始まり方。
開演が近づくと、雑談をしながら舞台上にパラパラとキャストが登場。(客席に向かって「まだ始まってないですからねー」とか声を投げかけたりしていた。)
私が観た日は、長塚(圭史)さんが「今日は近くの元町中華街が春節で盛り上がっている」などと世間話をしていた。
その後、開始時間になると、長塚さんが今日はどういう物語を披露するか説明して、本編スタートという流れだった。

普段あまり演劇を観ない方もターゲットにした公演だと思うので、こういう肩肘張らない雰囲気作りはとてもいいなと思った。

三浦半島の人魚姫

人魚を探して、神奈川県内を歩き回る話。
物語はやや抽象度が高いが、50分程度の短い話なので集中力を切らすことなく観ることができた。

舞台という限られたスペースを活用して、神奈川を歩き回ることを表現している俳優の身体性を味わう作品なのかなと思った。

また、劇中では「三多摩」というような地元ネタも取り入れられていて、県内各地を回る作品ならではの内輪感も程よく感じられた。
(実際、こういった台詞に対して場内では笑い声が聞こえてきた)

箱根山の美女と野獣

「三浦半島の人魚姫」とは対照的に、キャラクター重視の物語だと感じた。
登場人物の設定がはっきりしていて(類型的とも言えるかも)、起承転結や笑いどころがわかりやすい物語に仕上がっていた。

私は舞台での銃声や大きな音が苦手なのだが、この作品では割と大きめの雷鳴のSEがあった。
役者の方が「これから大きな雷の音が鳴りますよー」と事前に告知した後に、音が入るのだが、演劇を初めてみるような子どもも対象とした作品のはずなので、「そもそもこんなにしっかりとした雷鳴のSEは不要なのでは?」とも思った。

↑銃声が苦手な話はこちら↑


観劇した日のアフタートークでは、長塚さんが2026年に第三弾を予定していると話していた。
公共劇場ならではの面白い試みだと思うので、ぜひ長く続けてほしい。

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