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舞台人としての手紙

①コトバの認識…

「ブロードウェイ」というコトバに勘違いしてる人、多いけど。

厳密にはブロードウェイって…ミュージカルのことじゃありません。

ブロードウェイとは、メイン通りみたいな意味のコトバです。
NYだけでなく、シドニーにもバンクーバーにもあるし。

たまたまマンハッタンのミッドタウンに劇場が密集して、大劇場が「オンブロードウェイ」、中劇場が「オフブロードウェイ」、小劇場や実験劇場が「オフオフブロードウェイ」と分類されただけ。

ましてや「ブロードウェイ」のダンススクールは、プロのダンスカンパニーじゃありませんから…
(誰でも受講出来るオープンクラス)

「ブロードウェイ」という名称がブランドなので、ミュージカル鑑賞も観光資源。

日本人俳優が期間限定で出演するのも、観光ビジネスだから。

オープンクラスのダンススクールも、付随したビジネスでしょう。

シングルクラスごとの受講がメインなので、講師も次回来てくれる様「お客様」として扱います。

踊った気にさせてくれる人気講師は、レッスンをエンタメとして盛り上げてくれるわけですが、上達をさせてくれるわけじゃありません。

私が初めて海外修行した1984年頃にも、10年NYでレッスンしているのに、2回転すら出来ない"ダンサー気取り"の日本人もいましたからね(そもそも当時のNYのダンススタジオには、日本人は1人いるかいないかでした…)。

NYは演劇やダンスの巨大マーケット。

私が1番長く滞在していた1985〜1987年はB1・B2という観光ビザでも半年滞在出来たので…

滞在時は日本食レストランでアルバイトして、所属カンパニーが提携していたNYのユダヤ系エージェントが紹介してくれたケーブルTVの番組で、忍者の服装で踊ったり。オフブロードウェイ規模の劇場でリミテッドショウに出演したり。

その後もダンス修行に来たりしたけど、舞台公演は2002年のフリンジNYC(NY国際芸術祭)が最後(世界192団体中No.1の評価をいただきました!)です。

NYには、生徒の引率で2014年が最後ですから…もう9年も行っていませんね。

昔と違い、今はアメリカでは学生ビザがあってもアルバイトすら出来ません。

お金を落とす人に優しく
お金を稼ぐ人には厳しい
そういう場所なのです。

今や誰でもアメリカ(や海外で)ダンスレッスンを受けられる時代…

海外でのレッスン経験は特別じゃないので、経歴には書けても自慢出来るほどのことじゃありません。

その上で…
海外のレッスン環境の良さは、下手な人でも全力で自分を晒し、表現すること。

だから経験として、海外でレッスンするのはとても良いことだと思います。

周りを気にして…という人は少ないので、表現者としてのメンタルトレーニングとなるでしょう。

結局はどこにいても、自分が自分の先生であれば、上手くなるもの。

向き合うのは自分自身ですからね。

ブロードウェイとか
ウエストエンドとか
ハリウッドとか…

華やかそうなコトバに騙される人は多くて。

華やかそうに見えるエンタメ界だって…
○宝塚のイジメ自殺とか…
○ディズニーの労災問題とか…
○歌舞伎界のゴタゴタとか…

物事には光と影が必ずあるのです。
つまりは陰陽をしっかり観ること。ここが大切です。

進路に悩む若い人には、完全な環境は無いのだから、プラス面とマイナス面のバランスを考えて…

プラス面が多いと感じれば、決断すべし!と伝えたいですね。

②表現の大きさとは?

昔から映像の役者さんが、舞台に転向するより…舞台役者が映像に行く方が通用すると言われてきたのも…

○生の本番でNGを出せない中、鍛えられているから。
○広いステージ(小劇場も)で、空間を埋めて観客のココロを掴む訓練が出来ているから。

ビジネス面だと映像で知られているスターが、舞台やると集客になるので…

昔は売れなくなったタレントさんが、ミュージカルに出ていた時代もありましたね。

しかし表現メディアが多様化した今、ほぼ関係なくなっているので…映像と舞台を並行して出演する人も多い気がします。

おそらく現在の日本人俳優では、渡辺謙さんが、最も世界で活躍しているのではないでしょうか?

何せオンブロードウェイの名作「王様と私」で、英語の芝居で主役をやっているのだし…

日系2世とか帰国子女じゃなく…
しかも日本である程度キャリアを積んだ、中年以降にアメリカに渡っての活躍ですから。

もっと評価されて良いはずだし…日本人俳優が世界に出るきっかけにもなった存在だと思うのです。

さて、ダンスにおいても…

今は簡単に動画が撮れて配信出来るから、多くの人に観てもらえる時代です。

多くの情報を瞬時に入手出来るので、ダンス全体の進化が早いですよね。

でも、やはりスマホサイズでしかも縦型動画だと、そのフレームに収まる動きになりがち…

もちろん大きく動いても、撮影スタッフが撮影してくれるなら良いけれど。

固定でインカメ撮影がほとんどでしょ?

やはり動きがそのサイズに収まりがちなんですよね。

私は海外のダンス動画をSNSでシェアするけど…ほとんどが引きでダイナミックな動きをしてるものばかり厳選しています(ヨガとかは別)。

そして私がレッスンで指導してるのも、スマホサイズで収まらない、ステージサイズのダンスです。

ステージサイズで「空気を動かす大きな表現」が出来たら…映像から飛び出すくらいのパンチが放てるはず。

アニメーションとかポップとかは、寄りで(アップで)動きの見事さに惹きつけるダンスだから、スマホ動画と親和性が高いけれど。

ジャズダンスやコンテンポラリーダンスなどは、表現空間がもう少し広いから…

ステージを前提として訓練しておかないと、空間に負けてしまうのです。

映像(しかも縦型スマホ)サイズの踊り方に慣れてしまったら?

劇場で伝わるダンス表現は出来ません!

大は小を兼ねる…
ジャズダンサーは、常日頃大きく踊ることが大事なのです。

スマホは細部まで観えるけど…
舞台は観客がどこを観るか決めるもの。

観客の目とココロを惹きつけるのが「表現力」。

いつもいつも表現「術」でなく、表現「力」と言ってるのは、そういうことなのです。

結局、大きく踊る意識の大きさに、踊りの大きさは比例するのですから。

更に言うと…大きく踊るということは、繊細さを兼ね備えた表現の大きさです。

ステージ上で立ち止まり、目線を一瞬変えただけで、全観客がその方向を向いてしまう様な…それこそが本質的な表現の大きさです。

ダンスも演劇も、大きく動くとか、大きな声だから伝わるわけじゃありません。

エネルギーの質量の大きさということなんですね。

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