ノスタルジー

先日、仕事でわが母校の高校に用事があり顔を出す。

600mはある長い長い坂は健在で、校舎は卒業した頃とほとんど変わらずだった。

ちょうど部活動の時間帯だったが、狭いグランドにいくつもの部活が同時に活動している所も変わらずだった。陸上部はそのグランドの狭い隅っこで走っているのも懐かしい。

野球部から金属バットでボールを打つ音と叫び声も聞こえる。

過去に投稿したこともあるが、僕は元々高校入学当初は野球部に所属し、1年生の秋に陸上部へ転部した。

実はその野球部から転部する際に、唯一僕をひき止めてくれた仲間がいたが、僕は一切聞く耳を持たずに転部する。

その仲間が、母校の先生かつ野球部の監督になっていた。

再会した仲間と話をし、とても懐かしい気分になる。そして立派な大人になり指導している彼を見て、感慨深いものがある。 

その後、陸上部に顔を出す。自分が頑張った練習場所で、後輩たちが練習している姿をみて感傷に浸る。

とても懐かしかった。

高校陸上部のお話は、過去の投稿を良かったらどうぞ。

https://note.com/1811037amigo/n/n429fcaa565af

顧問にOBとしてあいさつをし、顧問のはからいもあり、最後の全体ミーティングで部員のみんなにあいさつさせて頂く。

伝えた内容はだいたい以下の通りだ。

「野球部に最初入部したけど、信じられないくらいの下手くそさで、監督からマネージャーになれと言われて陸上部へ転部しました。そんな中でも唯一ひき止めてくれた仲間が、偶然にも、今の野球部の監督です。そして、陸上部にスカウトしてくれた先生、オリンピックまで出場するほど有名になった後輩、ライバル、仲間、色々な人に出会って頑張った結果、インターハイ出場しました。大人になった今、あの時、頑張って良かったなと今の僕は思います。明日秋の新人戦の地区大会みたいですね。次に繋がる良い結果になるよう応援してます。」

冷静に見直しても、情報量と展開がすごいなと思うが、これが僕なのだからしょうがない。

偶然だが20年前に転部した日も、この日と同じ、秋の新人戦地区大会前日だった。

あいさつをした後で、同じ種目の後輩からアドバイスを求められ、過去の経験からできることを伝える。

実は大学は違えど毎回中四国の同じ大会に出場し、ニアミスし続けていた顧問とも色々な思い出話もする。

結構話し込んだので、そろそろ帰ろうとしたときに、まだお話していなかった子から「あの…」と呼び止められた。

「自分も野球部から転部しました。同じ境遇からインターハイまでいった先輩がいたなんて知らなくて…お話を聞いて勇気をもらいました。ありがとうございます。」と語ってくれる。

偶然にも、その転部をひき止めたのは監督になった仲間だった。

びっくりした。同じ境遇の子が目の前に現れ、僕の言葉に勇気が湧いたなんて…

辛い出来事や挫折は、大人になった今の自分なら切り替える手段もあるけど、切り替え方もわからない10代の頃に起きると、なかなかきついものがある。

「僕も先輩みたいになれますか?」という質問に「なれる!いける!」と即答で返事する。

僕は野球が好きだったからこそ、転部の前後はやっぱり辛かった。その質問をしてきた彼の心境まで手に取るようにわかる。 

僕は「選手として必要ないからマネージャーになれ」という監督の発言とその時の衝撃を今でも鮮明に覚えている。

完全に野球への情熱も興味も失い、心が折れた瞬間だった。僕は自分が思ってるほど、強くはなかった。


当時の陸上部の恩師にも転部当初は「死んだ魚のような目をしていた」と言われた。


顧問から才能があると言われ、インターハイに出るという目標ができ、だんだん「目がキラキラしてきた」と、いわれたこともある。

必要とされなかったことの辛さ、うまく行かないもどかしさ、誰かに認められたい、何かを成し遂げたい。

折れそうな心を必死に、「インターハイにいく!俺ならできる!」とほんとにいけるかどうかもわからないけど、なんとか繋ぎ止めて、前を向いて歯を食い縛った。

「見返してやりたい」という想いが、どうすればインターハイにいけるか必死に考えて、もがいてもがいて、泥臭く掴みとった。  

当時は友達もいるにはいたが少なく、勉強も恋愛も人当たりも要領よく出来ない自分が、唯一高校時代で誇れるものだった。

「いつか誰かに届け!」なんて思っていたけど、当時の自分の想いはちゃんと大人になった僕と、野球から転部した彼にちゃんと届いていた。

もはや後輩に僕の方が、ありがとうといいたくなった。野球部の頃の辛かった自分が報われたように感じる。

僕が最初から陸上部に入部していたら、たぶん、県大会か、うまく行ったとしても中国大会出場止まりだっただろう。

野球部で必要とされない悔しさがあったから、誰かに認められたかったから、何者かになりたかったから、必死に頑張れた。

転部した後輩も、野球部で報われなかった悔しさをエネルギーに変えて、陸上部で花を咲かせて欲しいと強く願う。

「きっとできる!乗り越えられる!」

また会えたら、そんな風に伝えてあげたいな。
 
そして、後輩も一花咲かせて、また次の世代に同じように「野球部での挫折から立ち上がって陸上部でインターハイに出場した。」と伝えてくれたらいいな。


僕は自分が弱い人間だと思っていた。もっと強くなれたらなんて思っていた。

最近、過去に乗り越えた出来事を振り替えってみると、自分が思っているよりもどうやら弱くはなかった。

強くはないかもしれないが、弱くはない。

それを過去の自分がちゃんと結果で示してくれている。

ちょっと進んで、立ち止まって、また進んで、そうやって乗り越えてきた。

そんな僕の出来事が、また誰かに届くといいな。


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