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渋谷で能を観る

 何ヶ月か前に、フォローしている杜若さんが渋谷能の記事を書かれていました(杜若さん、いつもありがとうございます)。

 能を鑑賞なさったこと、ありますか?
 私は、中学の課外学習で『邯鄲』を観たのですが…。ご飯が炊けるまでのうたた寝で、自分の人生の夢を見るという中国の故事に基づく曲目なのですが、能の世界観に全くついていけず、おまけに隣のクラスの担任が大いびきでうたた寝していたので、先生のいびきの印象しかない鑑賞になりました。
 また、私が通っていた中学高校はリアル『花より男子』な校風だったので、伝統芸能の家元の息子たちもいたのですが、能の家元の息子が、中学生なのにキザな女たらしという…。普通は、家元の息子や上場企業or有名企業の創業家の子どもなどは厳しく躾けられた感じの良い人たちばかりなので、能のイメージが大幅ダウンしてしまいました。
 そのせいで、大学時代には能研究会に所属している友達もいたのに、発表会を観に行くこともなかったんですね。

 でも、青空文庫で戦前の日本文学を読むようになり、能を始めとする日本の伝統芸能に興味を持ちました。読み手側も伝統芸能を知っている前提で書かれた文章が多いので、知らないと、小説の根幹にかかわる部分を理解できないような作品もありますし。
 ということで、能を鑑賞したいなと思っていた時に、杜若さんの記事を読んだので、これはもう行くしかないなと。 

 渋谷能は、セルリアンタワーの地下にある能楽堂で年に四回開催されるようです。手軽に能をということなのか、一度に一演目。後から知ったのですが、普通は能二作と狂言一作を一日で上演することが多いみたいです。一度にそんなにたくさん観るのは私の集中力が保たないので、その意味でも、手軽な渋谷能を鑑賞できてよかったです。
 また、年四回の公演、第一夜は宝生流、三夜は金春流、第四夜は和泉流、私が鑑賞した第二夜(9/29開催)は喜多流の公演でした。
 曲目は『班女』。能には、狂女物というジャンルがあるそうで、『班女』も一応その一つ…とはいえ、狂うというよりは、恋愛体質の人なら、これぐらいにはなるよねと感じる程度の話だったので、古典によくある「現代人とは全く違う人たちの話」とは思わずに鑑賞できました。
 能は演劇よりは、バロックオペラに近い気がします。独特の様式、演技と音楽が一体になった不思議な世界観…。これほどの非日常を味わえる空間は、そうはあるまいと感じました。作り込まれているのに、私のような素人を排除しない芸術でもあり。台本があったので、セリフを追うこともできましたが、外国人など日本語がわからない人でも、十分楽しめると思います(実際に観るまでは、トミー爺が能好きって、日本語わかるの? と不思議に思っていたのですが)。
 始まる前には簡単な解説、終わった後は出演者トークもあって、理解を深めることができました。
 第三夜も、鑑賞できればいいなと思っています。

読んでくださってありがとうございます。コメントや感想をいただけると嬉しいです。