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『ジェダイだってあの体たらく』創作日記③ 現実を落とし込むことの難しさ

 フォローしているパッパルデッレさんが創作と、ご自分の創作の成り立ちについて分析する記事を投稿なさっています。 

 記事を読み、創作との向き合い方って人それぞれだなーと深く感じ入りました。
 内容を全部理解できたわけではないのですが、パッパルデッレさんは、私たちが生きるこの世界を理解するor把握するために創作をなさっているのかなと推察しました(違っていたらごめんなさい、パッパルデッレさん)。世界を理解し、それをもとに人間や自分自身を理解したいと思っていらっしゃるように感じました。

 実は、パッパルデッレさんとは出身大学の学科まで同じなので(多分)、似たタイプの知人がけっこういました。歴史学って、ばらばらに動いているように見える森羅万象に何らかの流れを見つけ、その流れを我がものとしてつかみ取る学問なんですね。だから、この世界のダイナミズムを理解したい人が集まってくるのだと思います。
 でも、私は彼らの議論を聞きながら、一応理解はするものの、腑に落ちる気がしなくて。
 世界の意味とかそういう形而上学には向かない性格だなとよく思ったものです(形而上学に興味がないのに、なんで大学で日本史を学ぼうと思ったのか…)。
 
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 私にとって、尽きぬ興味の対象であるのは、人間です。人の愚痴でも悩みでも、何でも進んで聞くので、お人好しのおばさんと思われていますが、別に人の役に立ちたいわけではなく、人間観察の一つとして、人の話を聞くのが好きなんですね。性格が悪い人でも「よくまあ、こんなひねくれたことを!」「こんなことを考える人がいるのか」などと思えるので、嫌いな人もほとんどいません。

 なので、創作も、私にとっては、人間を理解するための手段の一つです。誰かのエピソードを友達に聞いたり、ネットで読んだりすると、「いったい、どんな人なのだろう?」と興味がわき、その人が登場する物語を作りたくなるのです。

 モデルというよりは、インスピレーションのもとになる程度なので、その人について詳しく知る必要はありません。女友達の場合、その人がどんな人かをとてもリアルに話してくれるので、そこで満足してしまい、想像する気にならないことが多いです。 

 今投稿している『ジェダイだってあの体たらく』(我ながらひどい題だ)に登場する菊池と寺田も、それぞれ別の男性の知人から聞いた人物をもとにしています。 
 勝手な想像なので、もとの人物とは全く違うかもしれないのですが。
 また、現実世界では、二人は面識がないので、会話その他はすべて私の創作です。

 今のところ、創作ではなく、現実に基づいているのは、二人が働くホテルの描写だけです。
 数年前にこの物語を途中まで書いた時は、二人が私にとって馴染みのない業界で働いている設定にしました。
 菊池は元はいわゆるサラリーマン(中堅不動産会社の社員)だったので、それとはタイプが違う仕事、ハードな肉体労働で女性のバイトがいる仕事なら何でもよかったのです。

 でも、今回noteに投稿するにあたり、背景としてでも、全然知らない業界について、さも本当らしく書くってどうなのだろう? と悩んでしまって。
 その業界で働いている方が読んだら、嘘っぽい話だと感じ、その嘘くささが物語全体に及んでしまうのでは? と感じました。

 こういう悩みは、note特有の悩みだという気がします。太宰賞に応募した時は、締め切りが近かったせいもありますが、全然知らない世界を舞台にして適当なことを書いても何とも思いませんでした。
 もちろん、太宰賞で賞獲るぞーと思っている方々は、そんな手抜きはしないでしょうが、私の場合「一次選考を通過したらいいな」とぼんやり思う程度だったので、読んで下さる方々にまで思いが及ばなかったのです。

 応募後に読んだ文学賞についての記事には、「好きな作家が選考委員をしている賞に応募しよう」と書いてありましたが、現代小説を読まない私は、好きな作家と言われても…という感じ(まさか村上さんが選考委員をなさるわけもなく)。

 といっても、最終選考に残る作品(私が応募した第39回太宰賞の場合、1246作中4作品)以外は、選考委員には読んでもらえないのですから、あの人に読んでもらうのだ! などと勢い込まない方がいいのかもしれません。
 でも、選考委員の方々を頭から締め出してしまうと、私のように読み手に思いを馳せることができず、いい加減なことを書いてしまいます。

 その点、noteはフォローして下さっている方々のおかげで、いい塩梅に読み手を意識できる気がします。
 ただ、ホテル業界について書き始めてみると、よく知っているだけに、必要がないほど詳しく書いてしまい、何度か書き直しました。今の形も、もっさりしすぎなので、納得はしていないのですが、締切に間に合わせるために、見切り発車しました(この、とりあえず書き進めるという行為は、初心者にはとても大事なことなので、それだけでも賞に応募する意味があると思います。歯止めがないと、延々悩み続けることになりそうです)。

 また、現実を踏まえた描写が逆に誰かを傷つけるのではないかと感じる部分もありました。
 寺田に対するセクハラも、ほぼ実話で、ネットに投稿するのでなければ、セクハラ男の所属する会についてもっと詳しく書いたかもしれません。私は、菊池と同じく地元の名士が経営するショボいホテルの事務所で働いていたのですが、複数のホテルで働いてきた人たちの話では、荒れる宴会はだいたいどこのホテルでも同じで、同じ職種、同じ団体が問題を起こしているようなのです(私が働いていたのはけっこう前ですが、残念ながら、今も事情はあまり変わっていないみたい)。……といった、あまりにもリアルすぎることも、ちょっとネットには書きにくい。といった具合に、現実を創作に落とし込むのは難しいと、そのことを実感できただけでも、この小説を投稿してよかったと思います。

 ちなみに、直江夫妻の出身大学は、一橋と津田塾です。これも、ネットだと実名を書きにくい(だめんずな菊池に、一橋出身の漫画家倉田真由美さんの『だめんず・うぉ〜か〜』について語らせてみました)。


※『ジェダイだってあの体たらく』は前に途中まで書いた作品に加筆訂正したものです。大きく訂正したかった部分がようやく終わり、終わりが見えてきました。その15か16が最終回になる予定ですが、ここからは怒涛の展開なので、最後まで読んでいただければ嬉しいです。


 シティホテルで働く二人の男女が登場します。佳境にさしかかっていますので(笑)、よろしければ読んでみて下さい。こんな題ですが、恋愛小説部門に参加しています。


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