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noteがきっかけで文学賞に応募してみた話

 二十年ぶりに書き上げた小説が、太宰治賞の一次選考を通過しました。千篇超の応募作のうち百篇ほどが通過しているので、私の作品は枯れ木も山の賑わいで入れてもらっただけだと思いますが、第三者に小説を読んでもらえたこと自体が感慨深いです。

私と小説

 重度の活字中毒なので、小一あたりから本を手放せない生活を送ってきましたが、自分で小説を書いていた時期もあります。同じ趣味の方はわかっていただけるかもしれませんが、書くことがストレス解消になるんですよね。別に仕事が嫌だから仕事の物語というわけではなく、全然関係ない話を書いているうちに、スッキリする…で、小説は未完で終わる。次に書きたくなった時には、また別のアイデアが浮かんできて…という感じでした。

 大昔に、一度だけちゃんと書き上げて、東京創元社だったか? の賞に応募したことがあります。ブラック企業で働いていて、この状況から逃れたい一心で小説を書いて、応募…。あえなく撃沈しました。今思えば、東京創元社が募集しているということは、本格ミステリの賞だったと思うのですが、私が書いたのは確かユルい青春ミステリ(謎解きはなし)でした。そもそも、横溝正史・江戸川乱歩・松本清張の大御所三人を除けば、島田荘司さんの作品しか日本のミステリを読んだことがないのに、ミステリの賞に応募するとは、どれだけ世間を舐めていたのか…。ギリギリのところまで追い込まれて、思考力が低下していたんでしょうね。その時の作品はフロッピーディスクに入っているので、今となっては読むこともできません。

noteとの出会い

 去年noteをはじめたのは、森鷗外の素晴らしさを伝えるためでした。鷗外のことしか考えていなかったので、ニックネームも適当にペット(とビートルズ)からもらったほどです。
 鷗外がきっかけでしたが、読んで下さる方々を意識するようになって、自分の文章が変わっていくのを実感しました。これまでは、まとめるのが苦手だったんですね(書いた小説がどれも未完なのは、これのせいでもあります)。断言したり、結論付けたりするのが好きになれない。どんなことでも色々な視点から見て、どれも一理あるなどと考えてしまうのです。もちろん、生きていく上では普通に決断も下していますが、文字にすると迷いが生じる。でも、せっかく時間を割いて私の文章を読んで下さっているのに、「こうも言えるけど、こうでもある」「一面から見ればこうだが、別の観点では…」などとグダグダ書きつらねるのは宜しくない。自分の中の迷いは迷いとして、ある程度まとまった文章を書きたいと思うようになったのです。
 この経験がなければ、今回の応募作を書き上げることはできなかったと思います。無駄な迷いを書きつらねて、締切にも間に合わず、結局未完で終わることになっていたでしょう。

 また、森鷗外の作品について書くうちに、書く内容も広がっていったのですが、文学作品について書くのって、けっこう時間がかかるんですね。どれだけ感動した作品でも、自分の内側から生まれたものではないので。その点、エッセイだと、何の下準備もいらず、スラスラと書けるのですが、残念ながら、私は自己開示があまりうまくない。何を書いても、理屈っぽく、退屈な文章になりがちです。
 架空の話=小説なら、少なくとも理屈っぽくはならないかなとも思ったのですが、本当の話ならまだいいとして、自分の作った話で皆さんの時間を無駄にするのもどうなの? と思ってしまって。

 ここで、ちょっとnoteの批判めいた話になってしまうのですが。去年の秋に、noteで短編小説のコンテストがありまして。フォローしている方と、フォローはしていないけどたまにチェックしている方々の作品を読んで、どれもいい小説だと感動しました。
 ところが、どれも入賞せず、公式マガジンにも入らなかったんですよね。
 入賞はともかく(審査員の好みもあるだろうし)、マガジンに入らないのはどういうこと? 絶対、評価軸がおかしい! と義憤を覚えました。
 一方では、好きな小説について色々書いてきたけど、私の好みって世間からズレているのだろうかと心配にもなりました。
 それが10月の終わり。自分の批評眼が世間とズレているのかどうか知るために、できれば評論の賞に応募したかったのですが、そんな賞はなかったので、ひと月先が締切だった文学賞に向けて、小説を書くことにしました。
 一次選考を通過しなかったら、自分の好みが一般的ではないと認識しよう。そう決めて臨んだ賞でした(noteの中の方がこれを読んでいらしたら、ホメーロスから村上春樹さんまで各国の名作を相当数読んでいますので、コンテストの下読みのバイトに雇って下さい 笑)。
 

 noteを始めていなければ、賞に応募する気にもならず、小説を書き上げることもできなかったと思います。途中ちょっと批判してしまいましたが、noteに感謝したいです。 
 二次選考が終わったら(残念ながら、二次は通過しないと思うので)、小説をnoteで公開する予定ですが、長い小説って、noteでは読みにくいですよね。フォローしている方の過去記事を順番に読むのさえ、けっこう大変です(ちゃんとマガジンにまとめて下さっていても)。読みやすい方法があれば、教えて下さい。
 


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