もういちど生まれる

「大学ってそういうところだ。無責任を背負って、自由を装っている。」
わたしはもうすぐ大学を卒業する。この本のこの言葉が自分の中の大学生活を表しているようで、ものすごく胸に響いた。
まだ大人では無いことを言い訳に、人に多少の迷惑をかけても、自分の利益だけを考えても、「学生であるから」許される。そんな当たり前で屁理屈なことを、私達は知っている。自分達の特権とさえ思っている。そして、時間や時間を使って得たお金を自由に使えるから、私はこんなに自由で、楽しくて、充実していることをそれぞれがみんなSNSでマウントをはりあう、そんな4年間だった。誰が1番いまを楽しんでいるか、誰が1番馬鹿になれているか、そんな無言の競争だったような気がする。
無責任で自由を装いながら過ごした大学生活で、私達はもう一度自分自身を形成し直すのだろう。

この本は、それぞれが自分のコンプレックスや悩みを抱えながらも前に進んでいた。自分自身と向き合い、もがきながら進む姿に、自分を重ねずにはいられなかったけれど、自分はこの主人公達のように、前に進めているのかは分からない。きっと分かるのはもっと先の話で、進んだ先にも道があって、きっとゴールには届がないんだろう。日常の中で人に劣等感を感じることも、自分のいいように解釈することで優越感を感じることも、この先もきっと無くならないだろうけど、自分の納得がいく人生を送りながら、やっぱり誰かに必要とされたり憧れられる存在になりたいな。そんな願いは贅沢だろうか。

あっという間に月日は流れ、学生服を見てやっと懐かしいと思えるようになり無責任を背負って自由を装ってきた私達も、自分が思うより遥かに大きな責任を背負いながら自由を手に入れる。そしていつか、自分より大切なものが見つかるのだろうか。人を素直に認められる時がくるのだろうか。大人では無い私にはまだ分からない話だけど、大人ではないいまの私が見られる景色を目に焼けつけて、大人になりたい。
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