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幼児用歯磨き粉のフッ素濃度と製品一覧

エビデンスを求めて三千里、着太郎 (@192study) です。

息子の歯磨き粉に長らくピジョンのぷちキッズをなんとなく使ってきましたが、果たしてフッ素は何ppmがいいのか、そして選択肢としてどんな製品があるのか気になっていたので、改めて調べてみました。

要約

結論だけ先に書くと以下の通りです。
・フッ素500ppm未満は虫歯の予防効果が確認されていない。
・6ヶ月〜6歳未満はフッ素が500ppmの製品を選ぶ。
・2020年6月現在市販されている500ppmの製品は8商品。
・500ppmで特定の香料がないのはピジョンの「ジェル状歯みがき ぷちキッズ キシリトールの自然な甘さ」の一択。
・500ppmでフッ素単価のコスパが最も良いのはサンスターの「ドゥークリアこどもハミガキ」。

ピジョン「ぷちキッズ」

ぷちキッズの成分は公式ECサイトの商品ページによると以下の通りです。

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「無着色・無香料・パラベンフリー・ノンミント。食品用原料成分使用。」を謳っているようです。

自然派がやり玉に挙げるプロピレングリコール(PG)湿潤剤として含まれていますが、「おしり拭きに含まれるプロピレングリコール (PG) の有害性」という記事でまとめたとおり特に問題ないかと思われます。ただし、少し古いですがパッチテストで即時型反応を示した報告 (渡辺ら, 1984) もあるので、万が一合わない場合は製品を切り替えてみても良いかも知れません。

サンスター「Doクリアこどもハミガキ」

ドゥークリアこどもハミガキの成分公式ページによると以下の通りです。

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香味料としてサッカリンNaが含まれていますが、サッカリンは日本で認可されている人工甘味料6種類のうちの1つです。
過去に発がん性が疑われて禁止されたことからイメージが悪くなっていますが、現在は安全性が確認されているようです。

また、防腐剤としてパラベンが含まれていますが、パラオキシ安息香酸エステルの総称で、飲料向けの防腐剤としても使われているようです。
前述のぷちキッズの商品ページでも「パラベンフリー」などと記載されているように危険な防腐剤の代名詞として扱われていますが、こちらも安全性に問題はないようです。

望ましいフッ素の濃度

日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会が「フッ化物配合歯磨剤に関する日本口腔衛生学会の考え方」として知られる「進化するフッ化物配合歯磨剤のフッ化物イオン濃度、応用方法およびう蝕予防効果」と題する資料を作成しており、その10ページ目に記載されている「表3 フッ化物配合歯磨剤の年齢別応用量とフッ化物イオン濃度」が参考になります。

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この中で「500ppm未満の濃度のフッ化物配合歯磨剤にはう蝕の予防効果が認められていない」との記載があり、500ppmよりも少ない歯磨き粉を使用することは虫歯予防の観点では意味がないようです。

フッ素の中毒量

フッ素というとなんとなく怖いイメージですが、どの程度のフッ素濃度になると危険なのでしょうか。

実は医学的にも厳密にはよく分かっておらず色々なデータが存在しているようですが、例えば「歯みがきをはじめたらフッ素入りの歯みがき剤を使ってみよう!!」では治療・入院を必要とする推定中毒量として5mg/kg(体重)を想定した以下の表を作成しています。

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2020年現在の市販の500ppmの歯みがき剤は30g〜70gのため、1本丸々食べてしまった場合のフッ素摂取量は最大で15mg〜35mgになります。分量の多い製品の場合、1本丸々食べてしまった場合は体重3kg〜7kg急性中毒が現れることになるので、保管場所には気をつける必要がありそうです。

また、慢性中毒は以下の通りです。

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歯みがき後に口をゆすがないスウェーデンのイエテボリテクニックを実践している場合は、摂取してしまうフッ素量が多くなってしまうので気をつけたい所です。また、味付きのものはそのまま飲み込んでしまう可能性が非常に高いので注意が必要そうです。

フッ素中毒については真面目に調べ出すと根拠となる数字が若干きな臭い感じがしてきたので、後日改めて調べて記事にしてみようと思います。

市販品の調査データ

では、実際にどの商品を購入すればいいのでしょうか。近年はフッ素濃度を記載する商品も増えましたが、未だにパッケージやWebページに明示していない商品もあり、どれがいいのか分かりにくくなっています。

そこで、いくつか調査データがあるので新しい順にご紹介します。

歯みがき剤フッ素濃度ガイド(2018年1月)
比較的新しい資料として、雑誌「歯科衛生士2018年1月号に「歯みがき剤フッ素濃度ガイド」というとじ込み付録があります。残念ながら絶版になっており、現物の購入はできません。

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小児用歯磨剤(および歯磨剤類似商品)のフッ化物配合に関する調査(2012年)
学会誌に掲載されている調査として、日本ヘルスケア歯科学会誌 第13巻 1号 p.53-58 に掲載の木村慎一(2012) による「小児用歯磨剤(および歯磨剤類似商品)のフッ化物配合に関する調査」があります。

調査・検証_1186_幼児用歯磨き剤の商品_生活_Redmine

市販の子ども向けフッ素入り歯みがき剤一覧(2009年?)
国立保健医療科学院の歯科口腔保健の情報提供サイト「歯っとサイト」に啓発資料のページがあり、その中の「母子歯科保健」の「フッ化物配合歯磨剤の使い方」として「静岡県・F歯磨剤(補足資料)」と題する資料がリンクされており、この「歯みがきをはじめたらフッ素入りの歯みがき剤を使ってみよう!!」という資料に「市販の子ども向けフッ素入り歯みがき剤一覧」が記載されています。

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同啓発資料ページから「静岡県・F歯磨剤(下敷き)」としてリンクされている「市販されている子どもむけフッ素入り歯みがき剤の数々」です。

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2009年市販小児歯磨剤調査報告(2009年7月)
日本ヘルスケア歯科研究会小児歯磨剤調査部会による「2009年市販小児歯磨剤調査報告」(2009年7月) の製品一覧。

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フッ素500ppm含有の歯磨き粉

前述の資料などを参考に、2020年6月現在、既に流通していない商品などを除いたフッ素を500ppm含む歯磨き粉の製品を一覧にまとめました。情報はすべて公式サイトを目視で確認しています。

なお、「ライオンこどもハミガキ」と「ドゥークリアこどもハミガキ」は公式サイト内にフッ素濃度の記載がありませんでしたが、前述の資料から500ppmと判断しています。

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