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9回の特攻出撃から生還を果たした特攻兵がいた

体当たりしろという上官の命令に抗う21歳の若者

三連休の初日と3日目は仕事でしたが、真ん中の日曜日は自宅で読書。読み終えたのは『不死身の特攻兵  軍神はなぜ上官に反抗したか』(鴻上尚史著)です。鴻上さんの本が好きで何冊か読んでいますが、これも良かった。

第二次世界大戦の末期に、特攻機で敵の艦隊に体当たりをした特攻作戦のことはよく知られています。本書の目的の入り口はこの特攻作戦であり、「はじめに」には下記のように書かれています。

海軍の第一回特攻隊は「神風特別攻撃隊」と名付けられ、零戦に250キロ爆弾を装備して体当たりしました。陸軍の第一回特攻隊は「万朶隊」は九十九式双発軽爆撃機に800キロの爆弾をくくりつけ体当たりをするというものでした。
それでも、9回出撃して、体当たりしろという上官の命令に抗い、爆弾を落として9回生きて帰ってきた人がいました。名前は佐々木友次、その時彼は21歳の若者でした。

『不死身の特攻兵』はじめにより

なぜ特攻作戦は決まり、なぜ誰も止めなかったのか?

「はじめに」に続いて、「第1章 帰ってきた特攻兵」「第2章 戦争のリアル」「第3章 2015年のインタビュー」「第4章 特攻の実像」と進みます。3章のインタビューは存命だった佐々木さんとのものです。

出撃しながら9回生還した佐々木さんの心になかにあったものとは?終戦を迎え、命からがら日本へ戻り、たどり着いた郷里で待っていたものとは?このあたりは実に生々しく描かれ、本当なのかと思えてしまいます。

そして、当時の軍部はなぜ特攻作戦を決めたの?か、特攻作戦は止められなかったのか?、その背景には何があったのか?、兵士たちはなぜ逆らわずに従ったのか?・・それらをさまざまな史実をもとに克明に描いています。

命令する側と命令に従う側の論理

80年近く前の話ではなく、ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ など、いま世界で起きている紛争や戦争でも同様だと思います。愚かだとわかっていながら、誰も止めることができない現実がそこにはあります。

鴻上さんは自分自身も劇団の演出家であり、集団を率いて、集団の長であることを前提として、「命令する側」の在り方について次のように書いています。僕も経営者なのでこの一文は響きます。

「精神」を語るのは、リーダーとして一番安易な道です。
職場の上司も、学校の先生も、スポーツのコーチも、演劇の演出家も、ダメな人ほど、「心構え」しか語りません。心構え、気迫、やる気は、もちろん大切ですが、それしか語れないということは、リーダーとして中身がないのです。
本当に優れたリーダーは、リアリズムを語ります。現状分析、今必要な技術、敵の状態、対応策など、です。今なにをすべきか、何が必要かを、具体的に語れるのです。

『不死身の特攻兵」P261〜262

変化のスピードが早く、先行きの見えにくい時代において、経営者は何を基準に意思決定したらいいのかを突きつけられた一冊です。ぜひお読みいただければと思います。

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