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ディスレクシアの「英語学習」について  (1)日本と英語の違い

ひらがなは読めても英語の学習に困難さを示すディスレクシアの子供たちがいます。つまり、小学生のうちは気づかれず、中学で本格的に英語の学習が始まった段階でディスレクシアが表面化する。こんな事例があるようです。

ディスレクシアの子供もたち特有の英語学習の難しさについて言及します。

まずは日本語と英語の違いについて。

1)ひらがなの「文字」と「音」の関係

まず、言語を問わず、文字は話し言葉の音の単位に基づいて作られています。例えば、「かに」という言葉は「か」と「に」という2つの文字で表されます。(ひらがなが準拠する音の単位を「モーラ」と言います。)

俳句や短歌で考えるとわかりやすいですね。俳句は五・七・五という音の単位で作られます。日本語にはおよそ108種類の単位音があと言われています。この数は清音や濁音・半濁音、拗音などを合計した数と同じです。

以上をまとめると、ひらがなの学習とは、108種類の音を聞き分け、それに対応する文字、つまりひらがなを覚えることなのです。なんだかすごいことをやっているように感じますね。

音の単位が大きければ対応する文字の単位も大きくなり、文字との対応学習が容易になります。日本語の話し言葉は大きな音の単位からできているため、対応する文字を覚えることは、他の言語に比べて比較的容易だと言われています。

もう1点、ひらがなの文字と音の関係で、ひらがなの学習を容易にさせている点があります。それは音と文字の対応規則についです。「カ」という語音は文字「か」以外とは対応しませんね。また文字「か」は「カ」としか読みません。つまり、ひらがなは音と文字の間が一対一の固定的な関係であると言えます。ただ、「オトーサン」は「おとうさん」とか書き、「へ」「は」「を」は発音とは異なる文字を書きます。例外はありますが、文字と音の対応関係が固定的であるという点は仮名文字の学習を容易にさせているのです。

2)アルファベットの文字と音の関係

英語の話し言葉の音の単位は「音素」といいます。音素は日本語のモーラに比べると、音の単位としては比較的小さいのが特徴です。例えば、ひらがな「か」が対応するモーラ音「カ」は日本語を母国語として話す人は1つの音の単位として認識しますが、英語を母国語にしている人は2つの音素"k"と"a"があると認識します。つまり、同じひらがな1文字でも英語は2文字の組み合わせになるということです。私たち日本人にとってはなかなか理解しづらいですね。

さらに、アルファベットでは文字と音の関係が固定的ではないというのが特徴としてあります。ひらがなは同じ文字に複数の読み方をすることはありません。しかし英語は、音素"k"は文字"k"、"c"、"q"のいずれでも表すことが可能です。同じ音が複数の文字に対応するということです。文字と音の対応関係が不規則な単語もたくさんあります。(例えば、know, sight, thoughなど)。

上記をまとめると、ひらがなとアルファベットは文字と音の関係の仕組みが異なり、第一にひらがなは音の単位のサイズが大きく、アルファベットは小さい。第二に文字と音の対応がひらがなは規則的ですが、アルファベットは不規則だといえます。これらの違いをみただけでも、ひらがなは仕組みが単純で学習が容易そうだが、アルファベットは難しそうに感じます。

次回はディスレクシアの英語学習の困難さについてより深く言及していきます。

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