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【子どもの性別違和と生きる】ふむふむインタビュー#01

みなさん、こんにちは。
ふむふむです。

いよいよ始まりました!
ふむふむインタビューシリーズ第1弾です☆

今回は、LGBTQIA+の当事者を「支える側」の方にインタビューさせていただきました。
ゲストは、「X(エックスジェンダー)」や「Q(クイア、クエスチョニング)」といわれている当事者のお子さんがいらっしゃるお母さん【おかめなママ】です。

性別違和を抱える当事者の方の多くが聞かれているであろうベタな質問を、今回あえて親御さんである【おかめなママ】にぶつけてみました!
そして、親御さんならではの、「支える側」としてどのような想いや考えを持ち、どのように当事者をサポートしておられるのか、その胸の内を赤裸々にお話していただきました。

それではインタビュースタートです!


幼少期と現在

【げんのすけ】 
 よろしくお願いします!

【おかめなママ】 
 よろしくお願いします。

【げんのすけ】 
 まず、【おかめなママ】には、お子さんは何人いらっしゃいますか?

【おかめなママ】 
 4人です。前の家族の娘が2人、今の家族の娘と息子が1人ずつ。合計で4人です。

【げんのすけ】 
 ご自身の性別に関して悩んでいるお子さんは、何番めのお子さんですか?

【おかめなママ】
 今の家庭の長女に当たる子です。(【おかめなママ】からすると三番めのお子さん)

【げんのすけ】
 今はあえて、一旦「彼女」という言い方をさせていただきますが、彼女はどういうところで、何に困っているんでしょうか?

【おかめなママ】
 一番の悩みは、「(彼女自身の身体に)胸があるのがすごく嫌だ」ということですね。これは常日頃感じています。

【げんのすけ】
 なるほど。彼女は今おいくつですか?

【おかめなママ】
 19歳です。今年20歳になります。

【げんのすけ】
 一つ確認ですが、「長女」で、「胸があるのが嫌」だと思っているということは、身体的(生物学的)にも、戸籍上も女性ですか?

【おかめなママ】
 そうです。

【げんのすけ】
 ご本人は、男性になりたいと思っているんでしょうか?

【おかめなママ】
 本人は「男性になりたい」とまでは話していないですね。今の状況で「とにかく胸のあるのが嫌だ」ということしか相談されていないです。

【げんのすけ】
 そうなんですね。では、約20年間「娘」と思って育てていらっしゃる中で、「胸があるのが嫌だ」とご本人から聞いて、(【おかめなママ】としては)「ということは、(長女は)男の子になりたいのか?」という疑問を持つことはありませんでしたか?

【おかめなママ】
 本人は小さい時からサッカーをしたり、スカートを履かなかったりしたので、そういうことに対して「なんでかな?」と私自身は思っていたし、本人の弟と同じようなこと、いわゆる男の子のすることをしたがるのが、すごく不思議だったというぐらいですね。

【げんのすけ】
 ちなみにその弟さんとは、いくつ歳の差があるんですか?

【おかめなママ】
 2歳です。

【げんのすけ】
 お。ということは、歳の差も大きくはないんですね。物心つくころから、弟さんと同じことをしている、というような印象ですか?

【おかめなママ】
 そうです。

【げんのすけ】
 なんというか、ある種の社会的な「女の子らしさ」というのは、最初からなかったということなんですかね?

【おかめなママ】
 最初からないですね。

【げんのすけ】
 【おかめなママ】からすると(彼女は)3人めの娘さんですよね? 上のお2人は社会的にいう「女性」として育っていらっしゃるんでしょうか?

【おかめなママ】
 そうですね。

【げんのすけ】
 先にお二人娘さんがいらっしゃるので【おかめなママ】の中の娘像もあるのかな?と思うんですが、(彼女に対しては)上の2人の娘さんとは違う印象を受けましたか?

【おかめなママ】
 私の中ではやっぱり「スカート」なんですよ。私はフリルがついている服が好きで、よく子どもが小さい時は母親が服を買い与えているじゃないですか。私も一緒で、フリルがついた服を買って来ては本人にも着せていたのですが、ある時から(【おかめなママ】が買ってくる服を)着てくれなくなって。一度も袖を通さない服もあったかな?そういうのが何年も続いていたように記憶しています。 別に「おかしい」とかではないけれど、今思うと「なんで私は何年もそんなこと(本人が着ようとしない服を買い与えること)をしていたのか」と思いますね。当時はあまり深く考えていなかったか、「そのうち着るようになるだろう」くらいに思っていたのかもしれないですね。

【げんのすけ】
 「ある時から」嫌がった、とおっしゃっていましたが、それは何歳ぐらいからですか?

【おかめなママ】
 小学校に入ってからかな…。 決定的なのは、中学校の制服を作るときでした。中学校の制服のスカートをすっごく嫌がったんです。もう、本当に嫌がったんですよ。 それまでもずっとズボンを履いてきていたので、私としては、「そりゃあ嫌だよね」というくらいの感じだったかな。「うん、そりゃそうだよな」という感じでしたね。

【げんのすけ】
 ということは、小学校は私服だったんですよね?

【おかめなママ】
 そうです。 でも、今考えると、幼稚園の制服もスカートだったなあ。その時は(本人は)まだ何も言っていなかったけれど…。

【げんのすけ】
 遊ぶ内容や遊び方が男の子寄りだったり、友だちも男の子が多かったりしましたか?

【おかめなママ】
 本人が小学生の時は、男の子とばっかり遊んでいましたね。

【げんのすけ】
 その頃、お父さんは(彼女に対して)特に疑問は持っていなかったご様子でしたか?

【おかめなママ】
 疑問は持っていなかったですね。

【げんのすけ】
 (お父さんも)「そういう感じの子なんだろう」と思っていらっしゃった、という感じなんですかね?

【おかめなママ】
 お父さんにとっては(本人が)初めての子どもだったので、そもそも比較対象がないし、違和感がなかったのではないかと思います。

【げんのすけ】
 これもよくある質問ですが、ランドセルの色は赤でしたか?

【おかめなママ】
 
そうそう。 ランドセルをお友だちと「一緒に作りに行こうね」ということになって約束していたのですが、(本人はランドセルには興味を示さず)「もう勝手にやって」みたいな感じでしたね。

【げんのすけ】
 「赤は絶対嫌!」という訳でもなさそうでしたか?

【おかめなママ】
 特に何も言いませんでしたね。「興味ないから適当に作っといて」という感じでした。 結局、親(私)の勝手で赤色のランドセルを作ったけれど、(本人は)普通にしていましたね。(本人は)もともと物に執着心がなく、また、赤色が単純に好きでした。昔は「赤が似合うね」と言われていたからかな?


カミングアウト、【おかめなママ】の受け止め

【げんのすけ】
 ここで改めて質問させていただきたいのですが、【おかめなママ】は「(彼女のことを)女の子だ」という認識を持って育ててこられていたんですか?

【おかめなママ】
 特に「男女」について意識することなく、「(ひとりの)子ども」という感じで育てているかなあ。それは本人の弟に対しても同じです。

【げんのすけ】
 いつ、どういうきっかけで自分のお子さん(彼女)が持っている悩みに気づきましたか?

【おかめなママ】
 実は…いまいち、そこがあやふや(笑)。1年ぐらい前に本人にカミングアウトされたと思います。

【げんのすけ】
 どういう形でカミングアウトされたんでしたっけ?

【おかめなママ】
 本人が私に手紙を書いてくれました。

【げんのすけ】
 手紙にはどういう感じで、何が書かれていましたか? 例えば、僕(げんのすけ※)が手紙を書くとするなら、「実は男やねん」という内容になると思うのですが… ※げんのすけは女性の身体で産まれたが、性自認は物心ついたときから男性である、FtM(トランスジェンダー)の当事者。

【おかめなママ】
 (手紙の内容は)「自分でもよくわからないけど…」とか、「自分のことがよくわからない…」というようなことが書いてありましたね。

【げんのすけ】
 それは、性別についてですか?

【おかめなママ】
 性別についてですね。そんな感じで書いてあったと思います。

【げんのすけ】
 最初に、(本人の性別違和についての悩みに)お姉さんが気づいたんでしたっけ?

【おかめなママ】
 ちょっと時系列がごちゃごちゃになっていて、覚えてないですね…(笑)

【げんのすけ】
 僕の記憶が確かなら、先に(本人の性別違和についての悩みに)お姉さんが気づいて、そのことをお姉さんが【おかめなママ】にお伝えしたのだと思います。ただし、その頃はご本人の性別違和に対する確証もない状況だったので、【おかめなママ】が僕に軽く話を聞きに来てくれたという程度だったかなと思います。そして、その後ご本人から【おかめなママ】に手紙が渡された、という時系列だったかなと…。

今までのお話をまとめると、【おかめなママ】は昔から特に男女を意識することなく育てていらっしゃったし、ご本人も社会的にみた、いわゆる「女性らしさ」がなかったということなので、お姉さんやご本人から(悩みを)聞いても、【おかめなママ】としては特に驚きはかったですか?

【おかめなママ】
 「あ~、納得。」「だからか!」という風に、つじつまが合った感じでしたね。

【げんのすけ】
 (カミングアウトを)聞いて動揺するとか、葛藤するというような感覚はなかったですか?

【おかめなママ】
 それはなかったですね。「ああ、そうだよね。」という感じでしたね。

【げんのすけ】
 「なんかつながったな」という感覚があったかと思うのですが、「じゃあ、今後(本人は)どうしていくんだろう?」という疑問はなかったですか?

【おかめなママ】
 それはなかったかな。 というか、その時点では特に先を考えてはいなかったかな。 本人自身が(今後のことについて)具体的な話はしていなかったし、とりあえずその状況でよかったのかな…と。 本人がそれまで一人で秘めていたことを私に言ってくれたことそのものに対して、その時点ではとりあえずよかったのかな…と。 そこから先は、正直2人とも考えていなかったですね。

【げんのすけ】
 「(本人が)胸を取る」と言い出したということは、より進んだ具体的な話かと思いますが、その話はどのタイミングで出てきたんですか?

【おかめなママ】
 半年くらい前かな。大学受験のときに、(本人が)体育教師になるという希望のもと話を進めていて、そうすると、実習でプールに入らないといけない、水着を着ないといけないということになったんです。ただ、そのことが本人にはすごくネックになっていて、思っていた以上にそれが嫌だったみたいで…。そしたら、高校の体育の先生が声を掛けてくれて、いろいろと相談をしていたようですね。 その話を聞いて、「そういえばそうだよな…」ということがわかったという感じです。

【げんのすけ】
 (本人からの)カミングアウトがあって、その時点では(【おかめなママ】と彼女の)お互いの関係や、【おかめなママ】から見た印象には大きな変化はなく、これまでと同様に生活が続いていた中で、改めて水着の話があって「そうだな」という気づきがあった。そこから彼女自身からオペの話が出てきた、という感じですね。

【おかめなママ】
 そうですね。


父の受け止め、理解の「差」

【げんのすけ】
 ところで、お父さんはどういう受け止めをされているのですか?

【おかめなママ】
 一時の気の迷い、ではないけれど…認めたくないというか、(本人の)「気持ちが変わるのではないか?」と言っていますね。 受け入れられていないと思います。

【げんのすけ】
 それは今もですか?

【おかめなママ】
 なんとなく、(お父さんが)他の人に話を聴いたりしているので、なるべく「(本人に)寄り添おう」としてくれているのかな、というところは見受けられます。

【げんのすけ】
 お父さんにも変化はあるということですね?

【おかめなママ】
 ちょっとずつ変化しているのかな…そう思いたいですね(笑)

【げんのすけ】
 
弟さんの受け止めはどうですか?

【おかめなママ】
 弟は多分知らないと思います。

【げんのすけ】
 弟さんを交えての話はしていないということですか?

【おかめなママ】
 はい。

【げんのすけ】
 お父さんより前に【おかめなママ】が(彼女の悩みについて)知ったんですよね? お父さんは【おかめなママ】が知った後で知ったと思うのですが、お父さんには誰から伝わったんですか?

【おかめなママ】
 多分、本人から手紙をもらったときに(私が)個人的に話をした記憶があります。

【げんのすけ】
 その時のお父さんのリアクションはどうでしたか?

【おかめなママ】
 他人事のようでした。「嘘でしょ?」みたいな、信じたくない様子だったと記憶しています。

【げんのすけ】
 お父さんのそのリアクションは、【おかめなママ】にとっては想定内でしたか?

【おかめなママ】
 そうですね。意外ではないですね。 ただ、「分からないよね…」という、お父さんの気持ちもわかる、という感じでしたね。

【げんのすけ】
 そこからオペの話が出るまでの間は、特にお父さんとは話はしなかったんですかね?

【おかめなママ】
 できなかったですね。

【げんのすけ】
 そのまま変わらずにきて、いざ具体的にオペの話が出たときは、誰からお父さんに伝わったんですか?

【おかめなママ】
 最初に本人が私に(オペをしたいと)言ってくれて、「(お父さんには)自分から話をした方がいいよ」と私が本人に言った気がします。 そして、(お父さん、【おかめなママ】、本人の)3人で話をしたような気がしますね。

【げんのすけ】
 3人で具体的な話をして、その時のお父さんのリアクションとしては、1回めに(【おかめなママ】から話を)聞いたときと変化はなかったですか?

【おかめなママ】
 そうですね…。「信じられない…」というようなリアクションだったと思います。

【げんのすけ】
 僕も当事者ですが、ただ僕の場合は母子家庭だったので、カミングアウトするのはひとまず母親だけで済んだのですが、(母方の)祖母には僕の母親が言ってくれたんです。自ら進んで「私(母親)が言うわ」と言って。本人(当事者)が自分のことを身内に言うのと、(本人から)聞かされた身内(※この場合は母親)が他の身内(※この場合は祖母)に言うのとでは、感覚が異なると僕は思っていて、また別のハードルがあるのではないかと思っているんですね。 僕がカミングアウトするなら、「受け入れてくれなかったらどうしよう…」と緊張とか」不安で吐きそうになるのですが。(笑)【おかめなママ】からお父さんにおっしゃった際は、どのような感じでしたか? やっぱり緊張しました?

【おかめなママ】
 本人の気持ちと同じくらいの緊張感をもって話をしたように思いますね。

【げんのすけ】
 緊張の内訳はどんな感じですか?

【おかめなママ】
 「分かってくれるかな?」というものでしたね。 なんとなく本人の気持ちを私はわかっているつもりなので、「嫌だよね」と共感できるからこそ、本人と同じ思いかなと思います。

【げんのすけ】
 お父さんに話を切り出すときも、”そわそわ感”はありましたか?

【おかめなママ】
 ありましたね。「ほらほら、言った方がいいよ」みたいな。お父さん無視して(お父さんに言わないで話を進める)…っていうのはやっぱり嫌だし、私は(本人から)いろいろなことを聞いていたので、先に理解している方だとは思っていましたが、(お父さんは)これまでの人生で、まるっきりそういう人に会ってもないし、考えたこともなかったような人なので。そんな人に「理解しろ」というのはすごくハードルが高いと思うので、お父さんの気持ちもわかりますね。

【げんのすけ】
 間に挟まれるポジションの人は、当事者自身とはまた違う独特の複雑な気持ちを持っているのだろうな、と僕自身の母親を思い出しながら思っていたんですが。僕の母親と祖母もすんなり理解し合えたわけではないようでしたし。

 これから先のことは、今話をしているところまでで止まっているということですか?

【おかめなママ】
 そうですね。


「支える側」を支える存在

【げんのすけ】
 【おかめなママ】と同じような状況で、「誰に相談をすればよいかわからない」という人もいると思います。 性別違和に悩むお子さんを持つ親御さんからの相談も、僕自身よく受けるのですが、「子どもが性別で分けられることを極端に嫌がっているが、誰に相談したらよいのかがわからない」という声はやはり多いように思います。 僕は当時者としての助言はできますが、【おかめなママ】から受け入れる側としてのアドバイスみたいなものはありますか?当事者のお子さんがいらっしゃるけれど、理解が追いついていない、または葛藤しているという親御さんへのアドバイスはありますか?

【おかめなママ】
 私もその件に関しては、一番上の娘が【げんのすけ】を紹介してくれたから、私も【げんのすけ】にすがっているんだと思います。 正直、どうしていいかわからなかったです。 ある意味そういう当事者の先輩がいたから話を聞くことができたし、そういう人がいてくれるということが心強かったです。 誰もいなかったら本当にわからなかったと思います。

【げんのすけ】
 「ネットでワードを検索しよう」という感覚はなかったですか?

【おかめなママ】
 その年代ではないからね(笑) 本人からのカミングアウトを聞いてから、一応(ニュースとかを)耳で拾ったり、様々な情報に対して耳をそばだてたりするということはありましたが、最初の時点で「ネットで調べよう」という考えには至らなかったです。

【げんのすけ】
 本人から聞く以前、随分前からニュースで(LGBTQIA+が)話題になったり、テレビにタレントが出演していたりすることもあったかと思いますが、その辺りの情報についても、カミングアウトを受けてから意識してみるようになったんでしょうか?

【おかめなママ】
 そうですね。意識するようになりました。以前なら完全にスルーしていただろうし、情報が流れていることすらキャッチできていなかったと思います。 だいぶ意識が変わったし、アンテナが立ったように思います。 人間は、自分の興味があることにはきちんと意識がいくようになっていますしね。 今は、勝手に目についたり、情報が入ってきたりする感じですね。

【げんのすけ】
 もし、僕のような当事者と関わることができていなかったら、今どうなっていると思いますか?あるいは、どうしていたと思いますか?

【おかめなママ】
 一番上の娘が35歳くらいで大人の考えができて頼りになるので、また「今風」の普通の常識を持っている子なので、そういう考え方についても相談できるんです。だから、まず最初にこの娘に相談したのもそういう理由からですね。いろんな場面でその娘と話をして、ときどきアドバイスをもらうことがあります。

【げんのすけ】
 当事者に触れる機会がなくても、自分が信頼できる人、かつ知識や見識がある人、視野を広く持っている人に相談していたということですか?

【おかめなママ】
 そうですね。

【げんのすけ】
 ご本人からカミングアウトされたときに、【おかめなママ】ご自身も一人で考えたり模索したりすることがあったとしたら、しんどかったと思いますすか?

【おかめなママ】
 まず、驚きというか、ハッとすることが大きすぎて、「じゃあどうしよう」という次の一歩がなかなか踏み出しにくかったんじゃないかなと思います。

【げんのすけ】
 やはり、カミングアウトされる側も誰かに相談したい、ということですね。

【おかめなママ】
 そうですね。

【げんのすけ】
 友だちや少し離れた人ならば、(その人自身に)特に偏見がなければ「いいじゃん」「本人がよければいいよね」で終わるようなところかもしれませんが、当事者と関係性が近くなると、より「我がごと」になるのと思います。そこはやはり、相談するならより当事者と関係性が近い人に相談したいと思いますか?

【おかめなママ】
 やっぱり他人(関係性の遠い人)には話せないかな。 親子共に付き合いがあるママ友もいるけれど、そういう人には話ができないかな。

【げんのすけ】
 それはなぜですか?

【おかめなママ】
 ちゃんと伝わればいいんですが、例えば面白半分とか、情報が歪んだ形で周りに伝わったら嫌だから…面白おかしく言われてしまうと…

【げんのすけ】
 (【おかめなママ】にとっては、上の)娘さんの存在が大きいということですね。

【おかめなママ】
 はい。大きいです。

【げんのすけ】
 それが、今の【おかめなママ】のように「どしっ」と構えていられるようなポジションにつながるんですね。

【おかめなママ】
 身内だからですよね。お父さんとやりとりができれば一番いいと思うのですが、まだ理解の違いがあるからできず…。でも娘だったら私よりも理解があるので、やりとりができるという安心感がありますね。 当事者の姉でもあるので、身内として真剣に捉えてもらえるし。

【げんのすけ】
 今ご本人はオペ前ということもあって、「本来の自分」にどうなっていくのか、いろいろと模索している途中経過なんだと思います。 誤解を恐れずに言うと、テレビやYouTube等で公表して表に出てきている人は、大抵がすでに(オペや戸籍変更等が)全部終わっている人が多いように思います。いろいろなアドバイスや気持ちのもちようなどはは発信してくれているんですが、「あなたはやりたいこと終わったからそう言えるよね」と、そう受け取る当事者(特にオペやカミングアウトの経験がない方)の方もいらっしゃるんだろうなと思ってしまうところがあります。 なので、今まさに悩んでいる人、解決へ向かう途中にいる方(当事者やご家族)からすると、今回の【おかめなママ】のお話はリアルタイムだし、ものすごく貴重で勉強になると思います。実際、僕も改めて勉強になること、気づきがたくさんありました。


世の中に求めること

【げんのすけ】
 さて、ここで話は変わりますが、今、【おかめなママ】が世の中に求めることはありますか?

【おかめなママ】
(本人が)自分でネットやSNSを使って、自分だけで抱えずに(当事者の)仲間を探すことができる環境にある、というのが私としてはすごく安心しています。一人で抱え込まないで済む点が安心材料かな。そういったネットワークを本人自身が持てていることが、「今の世の中でよかったな」と思うところですね。一昔前だと一人で抱え込むしかなかったから。(今本人には)実際に相談できる友だちもいるみたいなので、そういう友だちとの話も私もなるべく聞くようにして、安心することができています。 手術についても不安ではありますが、「この子もしたよ」と言われると、何となく安心できるかな。そういう風に、いろいろなネットワークを通じて本人が集めてくる情報もシェアできたらいいのかなと思いますね。 (私もこうして安心できている現状があるから)「そういうことをお父さんにも言って」って(本人に)言っているのですけどね… 何もしなければ、自分で動かなければそういう情報は入ってこないし、「自分とは関係ないもの」と思ってしまう。極端な話をすれば、別に理解しなくても生きていけるし。たまたまそういう子が周囲にいたから理解しただけであって…。でも、理解したからこそ一生懸命話を聞こうと思うし、だから人や情報が集まってくるのかなと思いますし。 とは言え、私には相談できる人がいるから本当に安心、すごく安心です。 相談できる人は限られてしまうので、それができる人がひとりでもいてくれる、ちゃんとした先輩がひとりでもいてくれるということは、本当に大きいです。 なかなか自分で探せるものでもないし、そもそもその人が信頼できる人かどうかはわからないし…。私の場合はたまたま上の娘の知り合いに当事者の方がいたというのが幸運でしたね。 だから、今の世の中でよかったなと思いますし、良い意味でオープンに様々なネットワークが構築できる世の中であり続けて欲しいと思います。

【げんのすけ】
 【おかめなママ】のお気持ちがよく伝わってきました。 本日は貴重なお時間をいただき、また「当事者をサポートする側の方」の視点から、貴重な胸の内やお考えをお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

【おかめなママ】
 ありがとうございました。



いかがでしたでしょうか。

当事者には当事者としての悩みやさまざまな想いがあることはもちろんのことですが、当事者を「支える側」の方にも、やはりそれぞれの悩みや想いやがあるのだな…と改めて知ることができました。

今回【おかめなママ】にお話しいただいたことは、あくまでもひとつのケースです。

そもそも当事者の方が家族にカミングアウトするか否かという点もありますし、「支える側」の方が『家族なのに理解できないのはダメだ』『受け入れないのは親として”失格”だ』という訳でもないと思います。
親子ですし、家族ですから、理想としては理解し合えたほうがよいのだとは思います。ただ、当事者自身も、自身の在り方と向き合うにはものすごい時間と労力が必要なことが多いように、その家族も、その事実を理解し、受け止めるには、時間と工夫が必要なんだと思います。カミングアウトされた側の人が『わかってあげないとダメなんだ!』と自分を追い込んだり、受け入れられないことに対して自分を責めないでほしいと思います。

つまり、「支える側」の人もそれぞれのペースで良いと思います。

もしこの記事を当事者の身内の方や家族の方がご覧になっていたとしたら、「正しい家族の在り方」などというものにとらわれないようにしていただけると良いなと思います。

今後も「ふむふむインタビュー」の更新、「ふむふむウェビナー」を開催予定です!
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