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トランスクリエーションの極意:ナイキとTwitterが描く、ローカルとグローバルをつなぐメッセージ戦略

今回は、「Twitterリブランディングの秘話」シリーズ第3弾!前回は、ブランドパーソナリティの日本語化についてお話しましたが、今回はタグラインの日本語化に焦点を当ててみたいと思います。

トランスクリエーションとは?

まずはおさらいですが、トランスクリエーションとは、翻訳(トランスレーション)と創造(クリエーション)を組み合わせたコピーライティング手法のことです。言語や文化の壁を越えて、ブランドのフィロソフィーや魂を正確に伝えることを目指します。

Twitter Japanのタグライン「今日も何かが起きている。」

前回の記事で紹介した Real, Straightforward, Unfiltered の日本語化に続き、タグライン 「What's Happening」 をクリエイティブディレクター/コピーライターの曽原剛さんに数々のアイデアを出してもらいました。その結果、「今日も何かが起きている。」というタグラインに決定しました。

マーケティングリサーチから分かったことは、Twitterのユーザーが求める体験は、スタジアムでサッカー観戦しているかのようなライブ感、緊張感、スリル、高揚感であるということです。「今日も何かが起きている。」はまさにそれを表現していると感じたため、このタグラインを採用しました。

ナイキのCMから学んだトランスクリエーションの成功例

グローバルを対象としたブランディングにおいて、私は言葉の正確性よりもブランドの思想や魂を正しく表現することに重きを置いています。私はトランスクリエーションというアプローチを信じており、単なる翻訳ではなく、そのブランドを理解した上で新しいクリエイティブなアイデアを提案することに注力しています。このアプローチに基づく事例を紹介します。

これは、私が2005年に東京に住んでいたときに目にしたナイキフットボールのCMです。「いつか遊びがモノをいう。」というタグラインに強く惹かれました。なぜなら、このCMは部活でサッカーをする10代に向けて作られたもので、日本の部活で教えられる汗と血と涙のスポ根魂とは真逆の思想だったからです。

このタグラインは、ナイキのクリエイティブエージェンシーであるワイデン+ケネディ東京のチームが手がけたものです。英語のタグライン
「Play to Win」 は、勝利至上主義的なニュアンスが強い言葉ですが、そのままのニュアンスで日本のターゲット向けにクリエイティブを作っても共感されなかったでしょう。そこを理解して、日本の部活動に合わせてナイキブランドの哲学をうまく言い換えて伝えたチームには脱帽です。

Twitterのリブランディングプロジェクトで学んだ教訓を活かす

15年前にナイキの「いつか遊びがモノをいう。」のCMを見て、当時の気づきと学びをもとにブランドタグラインの「What's Happening」の多言語化に挑戦しました。

「What's Happening」という英語表現には様々な使われ方があります。例えば、カジュアルな挨拶として使われることもあります。日本語に翻訳する際には、シンプルな表現でありつつ、深みにはまる複雑な試みとなりました。曽原剛さんは、「今日も何かが起きている。」という我々ブランドチームの想像を超える味わい深いコピーを提案してくれました。

同じく世界中のマーケターと連携しながら、9カ国語のタグライン「What's Happening」を開発し、我々はグローバルキービジュアルとして表現しました。

リブランディング発表時はまだコロナ禍で、全ての社員がリモートワークをこなしていたため、それぞれのホームオフィスで飾ってもらうために、パソコンの壁紙として世界中のオフィスのローカル文化を「What's Happening」のタグラインと共に表現したアートを配布しました。後にこのアートはオフィスで飾られ、名刺やグッズにも活用されました。

最後に:グローバルマーケターとして大切なこと

グローバルマーケターとして、各国の言語や文化をリスペクトし、それらをクリエイティブ表現に落とし込むことが重要です。そうすることで、世界を一つに繋ぐブランドを築き上げられるのです。人間らしさや人情味をブランドに取り入れることが、世界中の人々と共感を生み出す鍵となるでしょう。

次回は、「Twitterリブランディングの秘話」シリーズ第4弾として、最近日本でも注目されるようになった EVP(Employee Value Proposition) 「従業員価値提案」についてお話ししようと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!

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