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「わかる」とはどういうことか まとめ

2020年度の新卒研修が終了した。感染症の影響で研修のすべてをオンラインで実施したのが、改めて大事なことは研修を通して何をどこまで、理解していればいいのか設定することである。(当たり前だが…)とはいえ、何を持って理解している、わかっているというのか、言葉の定義が曖昧だと感じたので、以前購入した「わかる」とはどういうことかを読んでみた。概要を自分のためにまとめる。テキストにまとめられれば、誰かに伝えるためのアウトプットもできる信じて。

目次
・分かるための素材
・分かるための手がかり
・わかるための土台
・わかるにもいろいろある
・どんな時にわかったというのか
・分かるために何が必要か
・まとめ


分かるための素材

心の働きには大きく感情と思考の2つの水準が存在する。

・感情…心の全体的な動き。何となく好きor嫌いで本人もはっきりしない

・思考…心像*という心理的な単位を縦や横に並べ、それらの間に関係を作り上げる働き

*心像とは…心に思い浮かべることのできるすべての現象=心理的イメージ。但し視覚映像だけではなく、触覚・聴覚・嗅覚・味覚など視覚化できない心理現象を含む。

心像はどのようにして獲得されるか?

知覚(視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚)を介して新しい経験を受け入れることで獲得されていく。知覚の最も重要な働きは対象を区別すること。

例えば…視覚検査は「C」のようにどこかに切れ目が入れてあり、その切れ目が見えるかどうかを調べます。環が小さくなっていくと切れ目は見えにくくなります。区別できなくなるところが視力の限界です。

この違いがわかるという能力が知覚の基本です。わかるとは「分かつ」と書きます。わかるの基礎は区別である。その知覚をフルに活用することで、様々な対象を多面的に見る事で区別ができるようになり、同定*することもできるようになり、心像形成を行っていくようである。(*同定とは対象物が違う角度・側面から見ても同じ対象物であると判断できること。)

心像には知覚心像と記憶心像が存在する。

・知覚心像…客観的世界の出来事を取り込み、その現象を心象として自分自身の五感を通して、再構築され意識化したもの。

・記憶心像…知覚心像が何であるかを判断するための心像。心が保有している心像。

周りで起きた現象を知覚心象で捉え、記憶心象と照らし合わせる事で、対象が何かを判別することができる。知覚心象は単体では意味を持たず、記憶心象という裏付けが必要。

わかるための手がかり

各知覚に基づく心像は感覚処理様式ごとに作り上げられており、一定ではなく、不安定である。これらを統一するのが記号音であり、各知覚に基づく感覚処理様式に名前を付ける事で記憶心像に音声記号を張り付ける。この記号音とは日本語の50音である。日本人はこの日本語120程の音を約束事として記号音に用いており、日本人同士で120音を記憶心像として照らし合わせることで会話が成り立っている。

言葉の本質は任意の記号と一定の記憶心像の結びつきであるため、記憶心像が曖昧なままだと記号は音韻記憶として覚え込まれるだけになり、意味のない状態が生じる。記号自体は無意味で音韻と自分の中の記憶心像が響き合わないと意味が出現しない。

わかるの第一歩は…まずは言語体験。わかるためには自分の中にも相手と同じ心像を自分の中に喚起する必要がある。そして喚起するためには言葉(の音)と言葉の意味を正しく覚えておく必要がある。

分かるための土台

記憶の分類は大きく以下のように分けられるが個体としての記憶のみ取り扱う。

個体としての記憶
・意識に呼び出しやすい記憶(心像化できる記憶)
 → 陳述性記憶
  L 出来事の記憶 … 日々の出来事の記憶
  L 意味の記憶 … 生活に必要な様々な概念や約束事の記憶
   1.ことがらの意味(漢字や仮名・ローマ字、数字などが代表)
   2.関係の意味(数字や父母、関節など)
   3.変化の概念
・意識に呼び出しにくい記憶(心像化しにくい記憶)
 → 手続き記憶(手や体が覚えている記憶) ← 繰り返すしかない。
種としての記憶
・情動反応/反射

記憶がないとわからない。

我々の経験がすることはすべて出来事として記憶される。そのうち似たような経験が繰り返されると重なり合う部分が出てきます。それだけでははっきりしたイメージにはなりませんが、名前を付ける事で他と区別されるようになります。これが意味の記憶。意味の記憶は繰り返しの中から自然に作られがち。

一方で手順の記憶は言葉通り、手が必要で実践でしか蓄積できないので実践あるのみ。

記憶がないとそもそもわかる・わからないという反応自体出現のしようがない。

わかるにもいろいろある

・全体像がわかる…地図や時間のようなもの。全体像があって、現在地があって見当がつけられる。

・整理するとわかる…分類できるからわかっているのであって、分類できないとわからない(例:固体・液体・期待etc)

・筋が通るとわかる…時間軸や筋道が通っている(例:風が吹くと桶屋が儲かる)

・空間関係がわかる…文字通り。

・仕組みがわかる…文字通り。

・規則に合えばわかる…過去の原理原則に沿って現象を整理・操作する。(数学やマイナス、借金という概念)

どんな時にわかったというのか

・直観…言葉で説明できない文字通り。

・まとまること…自分の心像としてまとめ自分の言葉で表すこと。

・ルールを発見すること…文字通り。

・置き換える事…新しく取り込んだ情報を既知の情報に置き換える事。自分の言葉・自分の思考の単位に置き換える事。

分かるために何が必要か?

記憶と知識の網の目を作る

わかるためにはそれなりの基礎知識が必要。例えば動物の種類を6種類しか知らなければ、その粒度でしか区別ができないが、仮に600種類をしっていたとすれば区分も細かくなり、判断も細かくなる。このように知識は意味の網の目を作ります。網の目をつくるには記憶が重要で、しっかりした記憶を作らないとしっかりした網の目はできない。心理過程とはすべて記憶の重なりです。知識の網の目ができる事で何がわかっていて、何がわかっていないのかはっきりするようになる。

わからないことに気づく

これはわからない、ここまではわかったがここからわからないなど「わからない」ことに気が付く必要があります。知識の網の目があるとその網の目を通してモノゴトは整理されます。わからないことがあると網の目に引っ掛かり、「これは何?」と信号を発します。

全て一緒に作業に上げる(作業記憶)

自動販売機にコインを入れて、ボタンを押し、飲み物が購入できる等いくつかの心像を一つのつながりとして思い浮かべる能力は作業記憶と呼ばれている。作業記憶については比較すべき対象や遂行すべき過程を全部同時に意識して浮かべることができないとその課題を実行できないということ。

まとめっぽく。

わかるとは運動(₌表現活動 *発話・書字・構成)出来る事である。きちんとわかったかどうかはその内容を自分の言葉で説明してみるとはっきりする。頭の中にほんやりとしたものがあるだけではそれを形にすることは出来ない。表現の元となるのイメージをはっきりさせておかないと心の外へは持ち出せないのである。

何かをインプットの際は全体像を整理し、筋が通っており、仕組みがわかるように。意味記憶は何度も触れさせる、手続き記憶はひたすら実践。教えた内容が身になっているかは自分の言葉で説明させてみる。講義して満足しない、話させてみて、できているかどうかで判断したい。

言葉1つ1つの意味を大事に。

おしまい。

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