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知識は、時に「いい介護」を遠ざける

私は、高齢者介護の施設で働いています。
高齢者の方の生活を、手助けする仕事です。
この仕事をしていて、感じたことを、少し記していきたいなって思います。

就職当初、私たち介護職は、多くの場合、施設で研修を受けます。
それは、1時間程度で終わるものから1週間程度かかるものまで。

あるいは、介護の資格を取ってから、この仕事に就かれる方も多い。

こうして、知識体系を学んだ後に、介護現場での経験を深めていきます。

こうした「知識→実践」の方法は、介護に限らず基本だと思うしすごく有効だと思います。

しかし一方で、気をつけておかないといけないこともあるのかなと思うのです。

はじめに知識があることで、
自分のやりたい介護を見失ってしまう。
ことも、多いのでないと思うのです。

介護は、生活支援です。
心身に障害があって、普通の生活のできない方が
普通の生活が出来るように手助けする。
これが介護です。

ここで気を付けておきたいことが、
生活は、介護の教科書ができる前から存在していて、私たちが、現に毎日毎日実践しているものだということ。

つまり、生活の基礎知識は、案外みんな自分の経験の中にあるということ。
「私は、こういう生活を過ごしたいな」「こんな生活は嫌だな」
と思うようなこと。だということです。

そこに、利用者さんが加わって
「○○さんと、こんな生活を過ごしたいな」
これが、介護のはじまりかなと思います。

介護の教科書で教えられる、
「尊厳の尊重」「自立支援」「自己決定権の尊重」
といったことは、もちろん大事なんですけれども、
あくまで、他人の言葉です。

介護は、人間対人間の付き合いです。
だから、
素の自分で接することが、
すごく大切だと思います。


素直な自分が、どんな介護をしたいのか?

知識に従った理想を演じるのではなく、
素直な自分が、介護を行う。

すると、利用者さんは信頼してくれる。
すると、介護の仕事が楽しくなる。
すると、自分のやりたい介護に近づいていくことができる。

高齢者の方は、人生経験豊富です。
外面だけで、演じていても、すぐ見抜かれます。
「この子は、本心から世話したいと思って、私の世話をしてないな。私が大切な頼みごとをしても、きっと、めんどくさいと思って、適当に対処して終わるんだろうな」って。

多くの介護職は、多かれ少なかれ、介護に前向きな部分があって、この仕事に就くと思います。

でも、この部分を、引き出せずに、
「こんな介護が、やりたいわけじゃなかったんだけどな」と思って、
介護を楽しめなくなったり、辞める人
こういう人は、案外たくさんいるんじゃないかって思います。

これは、もったいないと思うんです。
「本心からやりたい介護」
「素直な自分がする介護」
といったことは、定期的に取り戻す努力をしないといけない。

そして、利用者様も、このことを求めています。
本音で接してくれる職員を、利用者様は信頼してくれます。

でも、知識が初めに入ることで、
教えられた知識通りに介護をしなくちゃいけない
と思って、自分のやりたい介護を見失う。

この落とし穴にはまって、
自分も利用者様も望んでいない方向に進んでしまう。

このことは、注意しておきたいなと思います。

そのために、介護にかかわる方は、想像してみて欲しいなって思います。
「自分は、○○さんとどんな日々を送りたいのか?」
「自分は、どんな介護をしたいのか?」
「どんな介護はしたくないのか?」
って。

その時に、知識もさらに力を発揮してくれるのだと思います。

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