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アバターとしての「人生」を選択すること ―バーチャルな人生の相談室配信より

質問の傾向について

6/1(土)に「アバター・身体・人生について、専門家さんと一緒に考えてみましょう」と題して、専門家さんとのお悩み相談室を配信しました。
スタンドアローンVR機器のヒットやスマホでのVTuber配信の浸透により、以前よりはだいぶアバターが身近になってきました。だからこそ、出てきた悩み・考え。
この悩みや考えは、これから到来するであろうアバター時代に必ず役に立つハズ。その意思のもと、配信と意見・考えのアーカイブを行っています。

質問の傾向としては下記の通り。
・VRという環境の特殊性について
・バーチャルとリアルの人間関係、自分の立ち位置
・「美少女」という存在について
今回はアバターと身体だけではなくその身体を使って生きる「人生」に関しての質問も多かったので、「からだ相談室」から「じんせい相談室」に急遽タイトルを変更した経緯があります。

SNS用の超ショートバージョンがこちらです。




全体のアーカイブは下記から(1:26:50)。質問項目ごとに観る場合は、コメントのリンクをご参照ください。

今回の結論は2点。
物理現実とバーチャルを橋渡しする接着剤のようなものが必要で、ヒントは心理学や神経生理学にあること。
そしてアバターや美少女は時間などを超越できる存在であることから、哲学者:ヤスパースの「限界状況」を突破して、違う人生を生きることができるかもしれないこと。

まず最初のご質問。

「VRで対面した時に抜け落ちる情報と問題なく伝わる情報って?」

VR空間で「バーチャルセクシー女優」として、人と接するお仕事をしているKarinさん。人と触れ合ったときに抜け落ちてしまう情報と伝わる情報とは何か?という、お仕事柄重要な質問でした。ふれあう方を楽しませよう・喜ばせようとする、とても素敵なお姿です。
下記、再生すると該当箇所に飛びます。

重要なのは、抜け落ちる情報を補完する想像力や妄想力。
平安時代では「言葉」で恋を成就していったように、ヒトは抜け落ちる情報を別の形で全力で補完しようとします。その補完に必要なのが想像力や妄想力。
情報が抜け落ちているからこそ、物理現実とは別の形で触れ合える面白さがあるのかもしれませんね。
小林先生によると、VRにおいてヒトはバーチャル空間を頭の中でも作っていて、想像力とPC上の空間を上手く同期できている人が上手なアバター使いであるとか。

2つ目の質問。再生すると該当箇所に飛びます。

「バーチャルでのコミュニケーションによって、リアルの人間関係はどう変化していくの?」

バーチャルと物理現実、双方の空間において「異なる姿で」コミュニケーションを取る場合どう接したらいいのか?という、すでに起こっている可能性の高い質問でした。
リアルとバーチャルで許されているそれぞれの「枠組み」がある。個人個人で違うその枠組みを対人関係において探って、チューニングしていく必要がまずある。
臓器移植において拒絶反応が起こらないようにすることを「生着」と言うそうですが、枠組みのチューニングのためにもまず自分と自分のアバターをどう生着させるかが重要。臓器を生着させる免疫抑制剤的なものがこれから必要となってくるだろう、とのお話でした。

3つ目の質問。再生すると該当箇所に飛びます。

「アバターをひとりの"人"として扱うことはできる?」

アバターで過ごす時間が長いほど、人間関係も別々になっていく。結果アバターの中にもさらにロール(役割)が出来てきて、アバターを分離させるべきか否か迷っている、というご質問でした。
これは「アバター」をどう解釈するかという考え方の問題であり、「新しい生を獲得した」と解釈してはどうか?という案が小林先生から出されました。
アバターは成長や時間など様々なものを超越できる可能性を持つことから、哲学者:ヤスパースの「限界状況(ヒトが超えることのできない力や状況のこと)」を超えてプラスにすることができるかもしれない。限界状況をひっくり返してアバターとしての人生を選択する「Vの者」となって、新しい生活環境や状況を作ることができるかもしれない。アバターにはその可能性がある、と。
バーチャル空間は時間性を突破できるため、アバターと美少女は基本的には老いることがない。だからバーチャル空間は美少女が住むには良い空間なのかもしれないというお話に、少し笑ってしまいました。

残り2つはTwitter経由で頂いた質問です。再生すると該当箇所に飛びます。

「なぜ美少女は神格化(アイドル化など)されるの?」「"美少女"と"女性"は違うもの?」

前3つの質問とは傾向が異なりますが、美少女アバターとしてどう生きるかという点において必ず出てくるお話ですね。
小林先生いわく、
・「女性」 年上で完成されたもの。欲望や権力は感じない
・「女」 生々しく感じる
・「(美少女に対する)美女」 人間界にまみれてしまった存在?
・「美少女」 男性にとって到達できない存在。老いない。男性を近づけない概念を男性自身が作っている。ヒトは美少女という概念を自分の中に飼っている
・「ロリータ少女」 現実の女の子に付与された属性のようなものなので、老いる

とのこと。小林先生の女性観が出ていて面白いですね。
この分け方は欲望の向いている方向と深さの違いが影響しているそう。
個人的には「美少女という概念を自分の中に飼っている」という点が注目ポイントでした。こう考えると、美少女/美少年アバターは美少女/美少年になったのではなく、概念を表出させているだけという意見も納得ができます。
(この話題は次のnoteの「バーチャル美青年になってみた」で考察しています。リンクはこちらから)

ちなみに「美少女」の正確な英訳は存在しないそうで、近いものとして「フェアリー・メイド(メイドさんのメイド)」だそうです。フェアリーの言葉が示すように、「身近ではあるけど違う世界の存在」として美少女が捉えられているのですね。そしてメイドが示すのは「役割」。美少女は何も持っていないが、機能を持っているように期待されてしまう存在として捉えられている
犯しがたい違う世界の存在と認識しているからこそ、何かを委ねて美少女になろうとするのかもしれません。

配信用新システム構築などのため、次回の考察系配信は7/27(土)になります。
アバターやバーチャル美少女を様々なジャンルから考えるために生み出された「バーチャル美少女学」を様々な専門家さんとともに考えていきます。
初回はサブカルを分析美学から読み解くことがご専門のナンバユウキさまに、90分まるまるアバターとVTuberについてお話頂きます。
こちらもどうぞお楽しみに!


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