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『3、百年経っても読まれる小説の書き方』

書きたいことを書いていれば、テーマは自然に、あっちからやって来る。しかし、「書きたいことを書く」のはなぜか非常に難しい。みんな書きたいことを書けばいいのに、わざわざそれを書かない。

誰にだって書きたいことがある筈なのに、書きたいことを書いていないから、途中で書けなくなったり、テーマが見付からなかったりする。

YouTube「百年経っても読まれる小説の書き方」


長編小説を書き終えて、梗概を書いている段階で、ストーリーの不要な部分を全部削っていくと、突如そこに意外なテーマが現われる。あれ、私のテーマってこれだったんだわ、と驚くことがある。

テーマというものは宙にふらふら浮いているくらいのもので、捕まえてみてやっと分かる、くらいな感じで、なにも人生の深淵を覗くような、社会の闇をえぐる様な、大層なものでなくてもいい。


例えば、最近書いた私の小説『サラブレッド』で書きたかったのは、ふざけたエッチな男前の騎馬警官のことで、私は警察フェチだから最近の作品には、絶対警察が出て来る。書きたいことを全部書き終わってみて、初めてテーマが浮かび上がった。非常に意外なことにテーマは、パールハーバーに散った、若き特攻隊員達の生のやるせなさ、だった。

いつか誰かのネット小説を読んでいて、まだ書き始めの稚拙な作品ではあったけど、私はこの人には才能があるな、と思った。どうして才能があると思ったのか自分でも分からなくて、驚きつつ、もう一度読んでみた。その人には「書きたいこと」があって、だから小説を書いている、ということがよく伝わってきた。

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89、夏目漱石 『こころ』この聖書を超えた小説を書こう。ダイジェスト Vol.4


面白い事に、その逆もあって、同じ小説を読んでいても、読む人によって受け取るテーマが違ってくる。私の先生である夏目漱石の『こころ』。日本で今まで一番売れた小説であり、日本人の「聖書」と呼ばれている。

この作品のテーマは、普通は、明治時代に入ってきた個人主義、個人としての人間の罪、原罪、について日本で初めて書かれた作品である、とまあ、そういことが語られる。

しかし、私にとって『こころ』のテーマはそんなところには全然なくて、私が思うに、この小説は……

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