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『まいにち展 鹿児島睦』------「気持ちがいい場所」。PLAY!MUSEUM。2023.10.7〜2024.1.8。

 すごく印象的な器をつくる人。

 それが、陶器などに詳しくなくても、鹿児島睦(かごしままこと)に関する印象だった。

 展覧会をすることを知ったのは、友人からの情報で、それを知ったのは夏頃で、とても遠くに感じていたし、そのうちに会期に突入しても、年明けまで開催していると思っていたので、やっぱり油断をして、気がついたら、もう年末に近づいていた。

 少しあわてて、最初に教えてくれた友人に連絡をして、日程を決めた。
 もう十分に年末の頃だった。


立川駅

 久しぶりに立川で待ち合わせをした。

 立川駅に5つも改札があるのを知らなかった。途中で駅員さんに、時間を置いて、そのことを2度も聞いてしまったのだけど、最初の女性駅員は、かなり冷静に答えてくれたし、北改札への行き方も丁寧に伝えてくれた。
 そのあと、また大きい改札に戻り、また不安になって聞いた時は、男性駅員で、気のせいかもしれないけれど、少しうれしそうに、東西南北とグランディオ口があります、と答えてくれて、それは、やはり勘ちがいかもしれないが、改札の多さがちょっと自慢のようにも聞こえてしまった。

 私と妻が二人とも携帯もスマホも持っていないこともあり、少し混乱したものの、それでも無事に友人と会えて、そこから、目的地へ向かう。

「PLAY! MUSEUM」という名前も場所も知らなかったから、着くまでは不安だった。

駅周辺

 それでも、久しぶりに来た立川のモノレールをたどって歩く道は、整備されて、おしゃれな店が多く、飲食店もきれいだった。こんなに開けていた印象もなかったが、モノレールのレールを見上げながら、いい天気の下を歩くのも気持ちが良かった。

 昼前だったので、その道沿いの一軒の店に入って、三人で食事をした。

 私もおいしかったし、妻も友人もおいしいと嬉しそうだったので、よかったと思う。

 久しぶりに外食をして、おそらくは新しい店の中で、ゆっくりできた。

 こういう時間はやっぱり、大事だと思った。

 それから、目的の「鹿児島睦展」に向かう。

 そこに着くまで、ちょっと道を間違えて、少し遠回りをした。

 近くまで来ているのだけど、どうやって入っていっていいか分からず、警備のスタッフの男性に聞いたら、そこの駐車場の自動販売機の前にエレベーターがあります。2階で降りてください、と言われ、その通りに移動した。

 2階で降りたら、思っていたのと違う光景だった。

楽園

 そこは、屋外にあるショッピングモールのような場所で、いろいろとおしゃれできれいな建物が並び、興味深いショップがある。見ているとキリがなさそうだけど、目指す美術館が、すぐにあるわけではなかった。

 その中には、大きなビルがあって、そこの横にゆるやかに上っていく階段が設置されているのだけど、天気もいいので、空へ向かって続いているから、どこまでも天国に続いているようにさえ思える。

 緑もあって、ベンチもあって、ショップもあって、そこは楽園のようだった。

 最初、ここが美術館かも、と思った場所は、ホテルだった。

 なんだか、すごい場所だと思っていて、あれこれ歩いたら、やっと美術館があった。

「まいにち展 鹿児島睦」

 入り口付近はゆったりとしたスペースで、何かのモビールようなものが天井からぶら下がっている。
 柔らかい色合いで、空間ができているような気がする。

 入場料を払って、Mのシールを服に貼り、おみくじまで引かせてもらった。なんだか、楽しい感じがする。

 “役に立たないもの、美しいと思わないものを、家に置いてはならない”

 100年以上前、イギリスの芸術家・思想家、ウィリアム・モリスはこのように言いました。その思想はイギリスからじわじわと世界中に広がり、人々が日々の暮らしに目を向ける、ひとつのきっかけとなりました。 時を超え、九州は福岡で、陶芸家・アーティストの鹿児島睦(かごしままこと、1967年ー)も、人々の暮らしをよりよいものにしようと日々励んでいます。 この展覧会は、陶芸作品を中心に、テキスタイル、版画など多彩な仕事で注目を集める鹿児島睦、初の大規模な展覧会です。会場は、動物や植物をあしらったさまざまな色や形の約200点の器が、「あさごはん」「ひるごはん」「ばんごはん」のための大きなテーブルや壁面に並びます。そのほか、ファッション、インテリア、フードなどの領域でのコラボレーションから生まれたさまざまなプロダクツや作品を、「さんぽ」「おやすみなさい」など、日々の暮らしのシチュエーションで紹介していきます。鹿児島睦とその作品を通じて、私たちの日々の暮らしと、生きていくことに思いをはせる、そんな展覧会です。

(「PLAY!」サイトより)

 かなり広いテーマで、だけど、入り口あたりから、その期待を静かに高めるような気配は確かにあった。

 広いテーブルの上に、こちらが勝手にイメージしている鹿児島睦の象徴である器が並ぶ。

 こうして大皿や小皿やつぼのようなものまで一斉に並ぶのを直接見たのは初めてだったのだけど、その印象は、絵画がたくさんあるのに近い。そこに描かれた植物や動物は、模様というのではなく、そのまま全部がキャラクターのようだった。

 特にネコなどは、明らかに「かわい」かった。

 どれも、ピカピカした感じではなく、古びたというよりも、同じような意味合いだけども、ビンテージという表現が似合っていて、だから、いろいろな場所に合いそうだし、さまざまな料理を盛りつけても、違和感が少なそうだった。

 妻や友人の方が熱心に見ていたと思う。

作業場

 器だけではなく、パッケージなどもあって、例えば千歳飴の袋は、とても魅力的だったし、テキスタイルや、何より波型のプラスチック製の屋根に使われる材料は、うちの軒先にも似たようなものが使用されていて、どちらかといえば、貧乏なもののはずなのに、それらに作品の表示や説明の文字を載せたりするなど、会場の設置も、心地よくいられるような工夫があちこちにあったように思う。

 何しろ、全部には気がついていないほど、さりげない気遣いのような会場になっていて、器の色付けの具合によって、その器がより美しく見えるように照明が暗い場所もあったりしたし、最後の部屋は、鹿児島睦の舞台裏、というか、雑誌で言えば、編集後記のような印象だった。

 そこには、鹿児島が影響を受けたものや、娘さんの作品や、これまでの年表のようなものも並んでいた。

 経歴をたどると、クリエイティブとビジネスをどのように両立させるか。といったことを考えながら、そうした環境で仕事をしてきたようだし、時には週末にはバーテンダーとなって、福岡の経済人との交流があった、といったこともあったようだから、いろいろな意味で有能な人なのだろうとも思った。

 作業風景の動画もあった。

 器を一枚一枚、さまざまな技法によって制作しているという説明の文章も会場に邪魔にならないように、だけど必要な人にはきちんと説明されているようなのだけど、その映像が流れている。

 器をひっかいて、線を引いているけれど、その道具が歯科医が使うものだったり、傘の骨だったりするのも分かって、そして、これだけ一枚ずつ一つ個性的な作品のように仕上げていて、その器が「かわいい」のであれば、当たり前だけど人気があるのも分かるような気がする。

 その上で、一緒に見にいった友人の指摘で改めて気がついたのだけど、土という材料を使う陶器の制作現場のイスの座面が白かったし、別に昨日買ったわけでもないのに、白いままだった。

 それは、考えたら、すごいことだと思ったのだけど、作業風景を撮影している映像で、器の制作が一段落し、これで、この日の作業が終了、といった動きになってから、さらに画面の中の鹿児島氏は動き続けていた。

 それは、後片付けと掃除だった。

 あちこちをきれいに拭き取り、イスの脚までふいていたのを見たときは、きれい好きを超えて、とにかく整っていないと嫌な人なのかもしれない、と思い、なんだか感心した。こうした動画を見た記憶もあるけれれど、通常は作品を仕上げて終わりのことが多かったせいもある。

ショップ

 展示を見終わったのだけど、その外のショップも、その続きでもあって、もしもっとお金があったら、際限なく買ってしまいそうなほど、魅力的だった。

 それでも、少しだけ購入して、それから、私と妻と友人の3人で並んで、美術館のスタッフの方に撮影してもらった。

 ロッカーは、暗証番号を合わせて、そして開ける方式で、カギはないタイプで、それも含めて新しい感じがした。

 それで、その建物を後にして、さらに、このグリーンスプリングスという場所の、いくつかのショップを見た。

 だけど、本当はもっとあちこちゆっくりと見てまわりたかったけれど、時間も限られているので、そこから去ったけれど、もっとそこにいたい気持ちになった。

 こんな楽園みたいな場所が立川にできた。

 それを、今日まで知らなかった。


 帰ってから、「まいにち展」でもらったおみくじを開けた。
 かわいい動物だった。




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