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「ラジオの記憶」㊱印象の書き換え---TOKYOFM『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』。

 昼食を食べ終わって、テレビなどを見て、少し時間が経ってから、食器を洗う。
 台所で、ラジオのスイッチを入れる。
 だいたい、TOKYOFMを聴くことが多い。


『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』

 午後1時半くらいは、以前は、AKBのキャプテンだった高橋みなみの番組を聴いていた。最初は、それほど期待していなかったけれど、そのうちに、ラジオに向いている人だと思うようになり、だから、その番組が終わった時は、残念だった。

 その次のパーソナリティは、山崎怜奈という人だった。最初は失礼ながら誰か知らなかったが、アイドルグループの人だと分かった。当初はぎこちなく、つい「先代のパーソナリティ」と比べてしまっていたのだけど、山崎怜奈は、比較的短い期間で、自分なりのラジオにしていったように思えた。

 所属するアイドルグループでは、いわゆる「選抜」に入っていなかったこともそのうちに知るようになった。それは乃木坂46で、ファンの選挙があるわけでもないから、それこそ「大人の都合」で、歌番組にも出たことがない、という事情も知るようになった。詳しくは語らないけれど、特に10代という若い時であれば、おそらくかなり悩んだこともあったに違いないのだろうと想像もするようになった。

 ラジオを聴いていると、どうして選抜されなかったのだろうと思うくらい、時間が経つほどにラジオに慣れていって、他の人が、この時間の番組を担当するのが考えられないくらいになってきた。

クイズ

 こうした番組は、2時間の間に、いろいろなコーナーがある。そして、それこそ、スポンサーの都合によって構成されている場合もある。

 毎週、火曜日にはクイズがある。

 クイズが出され、それも3択で、その間に曲が流れるから、食器を洗いながらでも、つい考えてしまう。

 そのときは、今は、すでに記憶があいまいになってしまったけれど、新幹線から見えるものに関してのクイズのはずだった。それも、東海道新幹線 東京―新大阪から、という限定だった。

 その区間ならば、何度も乗ったことがある。それも、かなり前から、それほど頻繁ではないにしろ、何十年にもわたって乗ってきた記憶がある。

 だから、自分でも考えた。

 そして、その答えの中で、自分の中では、ありえないと思ったのが、正解だった。

 それは、彦根城だった。

彦根城

 小学生の頃、岐阜県に住んでいたことがあった。

 それは父親の転勤のためで別に自分が望んでいたわけでもなかったけれど、そこの生活に慣れるしかなかった。

 同時期に、父親がクルマの免許を取得して、中古で自動車も購入し、おそらく最も運転をしたかった時期だったようで、日曜日になると、家族を連れて、いろいろな場所にドライブをしたがっていた。

 私自身は、家族で出かけることに、すでにそれほど乗り気でなくなっていた頃だったけれど、同時に、友人が多いタイプでもなかったので、約束もないから断る理由もなく、だから、一緒に出かけていた。

 お寺やお城、古くからある建物が多い地域でもあった。中には即身成仏をしたとされる僧侶のミイラがある寺院まであった。その頃でも、怪しかったのだけど「カッパの手」が保管されている神社も存在した。

 だから、ドライブも、その行き先によっては興味が持てるところもあり、そのうちに、お寺やお城などは好きになって、出かけた時は小さい手帳にスケッチをしたり、その由来をメモするようになった。小学生が小遣いで「禅寺と石庭」や「城と書院」といった本を買うようにもなった。

 そうした頃に行ったのが彦根城だった、と思う。

 天守閣で国宝に指定されているのは、それほど多くなく、すでに姫路城にも足を伸ばしていたし、犬山城は、比較的近かった。

 だから、彦根城も、国宝で、そういう意味ではちょっと気持ちが上がっていたのかもしれないが、つまりは、天守閣として建てられて、そして、それが保存されている、ということで国宝になっているはずだった。

 小高い山の上。近くには琵琶湖もある。

 クルマでやってきたせいか、そして、そこは滋賀県だから岐阜県からはクルマでもそれなりに時間がかかり、もしかしたら、後部座席で寝ていたかもしれない。

 だから、小学生の子どもの感覚としては、とても遠い場所に来たイメージだった。

 そして、山の上にあり、琵琶湖があり、城としては守りを固めるための場所だと思ったし、ちょっと下界からは隔絶されたような、小ぶりだけど上品な印象の天守閣だった。

 そして、そのイメージのまま、30年以上が経っていた。

印象の書き換え

 だから、彦根城は、どこか遠い場所にあると思っていた。

 それで、新幹線という、高度経済成長を象徴する、交通機関の王道のような電車からは見えるはずがないと、勝手に信じ込んでいた。

 それもあって、滋賀県を新幹線で通る機会も、これまで何度もあって、そのとき窓から外を見て、いろいろなものを目撃してきたはずなのに、彦根城が新幹線から見えると思っていなかった。

 それなのに、たまたまラジオで聴いた、それも、クイズの答えとして、その彦根城が新幹線から見えると知った。

 だけど、すぐには信じられなくて、食器洗いが終わってから、彦根城の位置を確認した。

 確かに東海道新幹線から、思った以上に近かった。これならば見えるはずだ。

 それに米原という「こだま」は停まる駅から、一駅だけ乗ると、その最寄駅からは、彦根城までは徒歩15分であることも知った。

 思った以上に便利な場所にあった。

 だから、もしかしたら、これまでに新幹線に乗ったときにも、自分の視界に入っていたのかもしれないけれど、ここから見えるような場所にあるはずがない。そんな思いがあったために、見えていたのに見ていなかった可能性もある。

 そんなことを思っていたら、彦根城の印象が、自分の中でだけ変わったような気がした。彦根城のホームページに動画もあって、そこには、開かれた場所に立つきれいな天守閣が映っていた。

 今度、もし新幹線で通りかかることがあったら、見えるかどうかは、確かめてみたいと思ったが、ラジオで聴く機会がなかったら、気がつくことがなかったと考えると、偶然は不思議でありがたいと思った。




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