見出し画像

「川端龍子VS高橋龍太郎コレクション」を、地元の「大田区立龍子記念館」で見てきた。

 地元・東京都大田区に「大田区立龍子記念館」という施設があるのは知っていた。
 大田区に20年以上住んでいるのに、一度も行ったことがなかったのは、川端龍子という画家を、ほとんど知らなかったせいだ。その名前の読み方(りゅうし)も、この画家が、男性ということさえ分かっていなかった。

 他の都心部の区立の美術館と比べると、特定の作家に偏っている施設だから、それは仕方ないとはいえ、他の区の美術館がうらやましかった。

ひらがな日本美術史

 橋本治の書いた、この「ひらがな日本美術史」は、全7巻で、今まで知らなかった作家、名前だけ知っているけど作品を見たことがない人、さらには知っているつもりだった作品にも、新たに興味を持たせてくれるような書籍だった。

 その中で、川端龍子が取り上げられていて、ただ昔の人ではなく、今でも面白さを感じられそうな作品であることを初めて知り、見たいと思いながら、区立龍子記念館に行くのが、おっくうだったのは、他の場所で行われている個展や展覧会の方が、自分にとっては魅力的だったからだった。

 そのうちにコロナ禍になってしまい、外出自体をなるべくしなくなった。

 ごくたまに、アートに触れたいときは、できたら、いま制作されているような、新しい作品を鑑賞したい気持ちの方が強く、どうしても足が向かなかった。

川端龍子VS高橋龍太郎コレクション

 高橋龍太郎コレクションというのは、医師でもあるコレクターの高橋龍太郎氏の収集した2000点以上に及ぶコレクションで、自分も欲しくなるような作品ばかりで、「高橋コレクション」の関わる展覧会は、いくつも行った。

 それが、その高橋氏が、大田区にもゆかりがあるということで、そのコレクションと、川端龍子の作品がコラボレーションする企画が「区立龍子記念館」で行われる、というのは、個人的には、ちょっと夢みたいな気持ちだった。

 会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃の作品が見られるのは、自分にとっては、スターたちだから、ありがたい企画だったけれど、感染者が増大している時で、行けるかどうか分からなかった。10月になって感染者数が減ってきて、行けそうになった頃には、会期終了が迫ってきていた。

 平日の昼前に行こうと思ったのは、今のような感染が減少している状況であっても、できたら感染のリスクが少ない時に行こうとしたからだった。

「大田区立龍子記念館」へ向かう

 天気がいい。
 午前10時30分頃、家を出る。

 半年以上、一緒に妻と出かけていない期間が続いていたのに、この1ヶ月で二度目の外出だった。


 この前、楽しかった上に、少し救われる思いもあったし、地元で見たい企画だったから、と自分に言い訳をするようにして、出かけることにした。

 駅に着いたら、知り合いに声をかけられ、途中まで話をして、乗り換えた。次の電車に乗り換える前に、駅構内で、何かを買おうと思って、妻と相談したら、あそこにベーグル屋さんがあったと思うけれど、という場所は、ワッフル屋になっていた。

 そのままワッフルを一つずつ買って、また電車に乗って、降りて、今度は、バスに乗る。ちょっとバス停の番号が分かりにくくて、微妙に迷ったけれど、なんとか正解を見つけて、バスが来た。

 乗り込んだら、窓が開いていて、それで安心もしたが、私にとっては、初めての停留所で降りる。

 道のそばには、比較的大きい「大田区立龍子記念館」への案内板があって、行き先への不安は少なかった。

 天気がいい。

公園の光景

 午前11時半くらいだったので、少し食べて、作品を見ようと予定を立てていて、何度か行ったことのある妻に聞いたら、館内や館の外にも何かを食べる場所はない、ということだった。バス停を降りて100メートルくらい歩いた場所に、小さな公園があった。

 ベンチに男性が一人だけいる。太陽を浴びている。

 テーブルがある場所に妻と座って、ワッフルを食べて、持っていったポットに入れたコーヒーを飲みながら、話をしていたら、小さな女の子と母親と思われる女性がやってきた。女の子が滑り台の階段を登る。後ろから一緒に女性が登っていく。一番上に着いた。

 女の子は跳ねている。楽しそうだった。だけど、そこから、滑る場所へは進まない。
 怖いらしい。

 女性は、後ろ向きのまま、立って、滑り台まで進み、女の子が滑るように促している。
 手を握りながら、女性は後ろ向きのまま、滑り台を歩いて、女の子が怖くないよう、少しずつ滑るように、進んでいく。
 ずっと、後ろ向きに歩いて、下まで行ったから、女の子は、あまり怖くないまま、あれだけ滑るのを拒んでいたように見えたのに、滑り切った。

 これで、次からは、女の子は、滑り台を怖がらないかもしれない。

 すごく丁寧に女の子をサポートしているから、そこに感心をしてしまった。

 ワッフルを食べ終わり、歩いたら、思ったよりも、すぐに記念館に着いた。

川端龍子・会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃

「区立龍子記念館」の入り口には消毒のポンプがテーブルにある。
 さらに、健康に関するチェックシートがあり、それに消毒をしてくれている鉛筆で、印をつける。
 それを持って、小さな窓の受付に渡し、入場料金を払う。

 一般で、500円。ありがたい。

 65歳以上と、未就学児は無料。素晴らしい。


「大田区立龍子記念館」

https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition?23564


 最初に川端龍子の作品。「香炉峰
 透明になった零戦が、大きく描かれている。
 とても目をひく、魅力的な、それで、新しさも感じる作品だった。
 単純に戦意高揚だけに思えないのは、今の視点から見るせいだろうか。

 次に会田誠の作品。「紐育空爆之図」
 ニューヨークを零戦が爆撃をしている作品。
 絵を支えているのは、黄色いビールケース。意図的に安っぽさのようなものを出しているのだと思う。
 久しぶりに見て、これを、1990年代後半に描いたのは、今でもすごいような気がする。

 それから、鴻池朋子。「ラ・プリマヴェーラ」
 色が鮮やかな植物と、思春期が描かれた絵画。

 さらに映像作品も展示している。
 動画を、何人もがじっと見ている。

 それと対応するのが、川端龍子「草の実」。これは、会田誠が評価しているという作品。
 売店で、扇子になっていた。黒いバックに、植物が描いている。大きな屏風絵。顔料にプラチナなども使っているらしいが、渋い上に、シャープな印象があり、思った以上に、古くない絵画だった。

 さらに、会田が評価している「爆弾散華」は、自宅が爆破された後、終戦の年に描かれていて、ほぼ草花だけを描いているのに、何か、幅のある絵画だったし、ジャーナリスティックな作品でもあったと思った。

 山口晃。天明屋尚。それぞれの作品に呼応するような川端龍子の絵画や仏像を、並べている。

 そんなに広くなかったのだけど、ゆっくり見られたし、初めてきちんと見た川端龍子の作品は、とても新鮮で、よかった。

 1時間弱で、見終わった。

 川端龍子の作品のクリアファイルを買って、館を出て、またバス停まで歩く。

 天気がいい。

グルメバーガー

 行きよりも、かなり短い時間で、バス停に戻った気がした。
 時刻表を見ながら、次のバスを待つ。
 そうしたら、道路の向かい側のバス停に「蒲田行き」というバスが来ていた。

 あ、あれに乗れば、まっすぐ蒲田まで行ける

 そう思って、道路を渡り、妻にも少し走ってもらって、そのバスに乗る。

 そこから約30分。時間的には、行きと同じ路線よりも少しかかったかもしれないが、バスで走ると、知らないところを走り、そして、地元に近いはずなのに、ここらあたりは、地図でいうと、どのくらいの場所なのか分からない、といった話を妻ともしながら、あまり飽きずに進んで、途中の蓮沼駅前で降りたのは、目的地を考えたからだった。

 比較的、地元に近いところに「グルメバーガー」ができたのを知り、行きたかった。今日は、午後3時までに入れば、ランチタイムだったのだけど、今は午後1時30分くらいだから、昼食には、ちょうどいい時間だ。ここで食べるために、さっきは軽く食べて、展覧会を見て、それから、新しいグルメバーガー屋さんを目指した。

 コロナ禍になってから、外出し、外食をした時の「グルメバーガー」と言われるハンバーガーが、美味しかったからで、かなりパターン化されている行動だけれど、今日も行きたいと思った。

 滞在時間や、店の作りなども含めて、感染予防のためにも、ちょうどいいような気がしていたせいかもしれない。

 少し迷って、ハンバーガー屋を見つけた。
 古い民家を、リノベーションしたと思われる建物。
 2階に案内される。
 
 きれいに仕上げているが、基本は、自分たちが普段住んでいるような民家のような作り。

 ソファー席の、テーブルの上にあるタブレットで注文をする。

 私は、KAKUMEI チェダーエッグ。
 妻は、KAKUMEI シンプル。

 ランチタイムだったから、サイドメニューで、妻は「おばんざい」で、私は「フライドポテト」。飲み物は、私は「お金持ちの家の緑茶」という名前で選び、妻は、ジャンジャエール。

 二人で、合計2200円。

 年齢を入力するボタンもあったので、それも押した。

忘れ物

 ソファー席に妻と並んで座って、ゆっくり食べて、空いていたこともあり、ゆったりと過ごせた。

 店内に流れる音楽が、やけに懐かしい曲が続いたので、もしかしたら、さっき、年齢を入力したから、その年代に合わせた曲を流しているのだろうか、といった話をしたり、そばにあった雑誌や、少年ジャンプをパラパラと見る、という久しぶりの行為もできて、なんだか満足して、店を出た。

 地元に近いところに、こういう、意欲もある店ができて、ちょっとうれしかった。
 グルメバーガーを食べるのに、そんなに遠くに行かなくても済むのは、ありがたかった。

 店を出て、どっちが、蒲田駅だっけ?
 そんな話をしながら、歩いていると、声が聞こえた。

 お客さん。

 駆け寄ってきたのは、私に向けてで、呼ばれたのは私で、手にはメガネを持っていた。グルメバーガーのお店のスタッフだった。

 お忘れでは?

 と聞かれて、本当に自分のもので、どこで忘れたのだろうと思ったが、何しろ、お礼を伝えた。これを、忘れたら、困るところだった。

 こちらのミスなのに、そして、少し走ったにもかかわらず、自然に渡してくれて、それも、ありがたかった。

ケーキ

 駅に着いて、いわゆる駅ビルの地下で、夕食は、妻と私はお互いに食べたいものを買った。
 私がトンカツ。妻は握り寿司。

 それから、ケーキも買って、家に戻った。
 ずっと楽しかった。

 いい誕生日だった。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。



#芸術の秋   #最近の学び   #アート   #川端龍子

#区立記念館 #会田誠 #鴻池朋子 #天明屋尚 #山口晃

#グルメバーガー   #大田区立龍子記念館   #美術

#毎日投稿   #誕生日   #絵画   #高橋龍太郎

#高橋龍太郎コレクション


 










 

この記事が参加している募集

最近の学び

記事を読んでいただき、ありがとうございました。もし、面白かったり、役に立ったのであれば、サポートをお願いできたら、有り難く思います。より良い文章を書こうとする試みを、続けるための力になります。