見出し画像

ラジオの記憶㉚「最終回らしい、最終回」-----TBSラジオ『たまむすび』。

 この季節は、新しくなることも多いが、同時に、終わることも少なくない。

 テレビやラジオも、最終回を迎える番組も多いのだけど、ひっそりと去っていくように終わる方がおそらく多数派で、その最後まで注目され続ける番組は、やっぱり稀だと思うが、ラジオでは、その代表格が、TBSの「たまむすび」のはずだ。

たまむすび

 メインパーソナリティが、赤江珠緒。途中で、1年間の産休を取りながらも、リスナーからの要望が強く、それ以降も、金曜日だけが独立するという変化はあったものの、番組が継続したという、おそらくは、まだ珍しいパターンだと思う。

 そして、11年間、番組が続いたが、公式発表によると、赤江珠緒が子育てにもっと時間をさきたいという希望もあって、終了するのが決まったのが、2022年のことだった。

 それほど熱心なリスナーではなかったが、午後の時間帯に、この番組を聞くことも少なくなく、曜日によって、パートナーが変わったり、コーナーによって、そのカラーも変化するのだけど、いつも、赤江珠緒の声は、明るく感じた。

 どんなことを話しても、声自体が笑っているように思えた。もっと昔で言えば、植木等が、そんなふうに表現されていたのを、どこかで読んだことがある。

 そして、うっかり、ということが日常的で、それが魅力的にも聞こえる赤江のことを、曜日ごとに、漫才で言えば、ツッコミと言える人たちが、うまく支えて、番組を広げていくような印象があった。

最終回

 その最終回は、2023年3月30日だった。

 そして、最後の20分ほどは、木曜日は「おもしろい大人」として、さまざまなゲストを呼ぶのだが、この日のゲストは「赤江珠緒」自身という設定で、だから、話す時間は、かなりたっぷりとあった。

 だいたい、こんな話をした。
(番組を聞いて、メモと記憶を元にしていますので、細かい点で違いがあったら、すみません)

 最後は、ストレートな思いをきちんと伝えようと思った。泣いたら、どうしよう。
 そんなことを言ったあと、赤江珠緒は、その昔の、アナウンス研修のノートを引っ張り出して、紹介する。それはアナウンサーの基本的な心構えのようなことだ。


1、 明るく元気
2、 人の心の痛みがわかる人になりましょう。
3、 滅多に人の前で泣かない。ただし、嬉し泣きは除く。

 だから、泣いたとしても、嬉し泣きなら、と思いますが、卒業式風に、話します。

 赤江はそう言って、「答辞」として、話す。

「この番組は、幕を下ろすことになりました」。その冒頭の言葉で、もう涙ぐんでるのがわかる。

 それから、この番組に関わった人たち、ほぼすべての名前をあげ、それぞれに対して、コメントをして、御礼をする。

 その繰り返しで、時間が経っていく。

 ビビる大木。武井壮。小田嶋隆。カンニング竹山。下川恵那。町山智浩。山里亮太。ブルボン小林。伊沢拓司。アートテラー・とに〜。春風亭一之輔。博多華丸。錦織一清。ジェーン・スー。居島一平。吉田豪。

 博多大吉。ピエール瀧。土屋礼央。ナタリー。安東弘樹。外山 惠理。玉袋筋太郎。桐畑 トール。堀井美香。吉田秋世。海保知里。笹川友里。毒蝮三太夫。伊集院光。そして、小田嶋隆の週刊ニッポンの空気をつないでくれた皆さん。スポンサーの皆さん。(放送では、敬称をつけていました)

 スタッフの皆さん。最初から最後までチームに恵まれたこと。それが私の何よりの原動力でした。

 何より、番組を聞いてくださったリスナーの皆様。感謝の言葉が見つかりません。


 さらに、赤江自身の、様々なミスなどを述べ、「生きるって、恥ずかしいことだらけだと、この仕事を始めて、改めてわかりました」。

 さらに、こうした言葉を続ける。

「世界は捨てたもんではない、と思いました」。

「この時間は、私の一生の宝物です」。

「20年、神輿に乗ってきました。これから、自分の足で行きます」。

「世界は広くて深い。とリスナーが教えてくれた」。

「これから、面白い大人になれたら、と思っています」。

「これからも、皆様の午後1時が、朗らかで明るいものでありますように。と願っています」。

「11年間のお礼です」。

「2023年3月30日。卒業生。たまむすび代表。赤江珠緒」。

「……いえました。全部、いえたかな」。

 ラジオのリスナーにも分かるほど、泣きながら、鼻水をすすりながらでも、赤江は、20分弱、話し続けた。

パーソナリティとしての凄さ

 こうして、長く、最後のあいさつをして、ほぼすべての関係者にお礼を伝えて、これだけ、最終回らしい最終回にするのは、すごいという気持ちだった。ただ、CMが入り、それが明けた時には、再び、いつもの「陽キャ」に戻っていた。

 パートナーの土屋礼央が、赤江に対して、「もっと自分をほめたらいいのに。自分に厳しいから」といった、真っ当な言葉をかけたあと、赤江自身は、照れもあるのだろうけど、「やっぱり、珍しく感傷的になっちゃって、今日は、この景色も最後か、などと思って、トイレから写真とっちゃたりしたもん」というようなことを話し、笑いにつながっていたけど、こういう言葉を最後に言えるのは、なんだかすごいと思った。

 
 そして、次の日の夜のTBSラジオの番組「アシタノカレッジ」で、武田砂鉄が、赤江珠緒について、触れていた。

 最後に、あらゆる人の名前をあげ、途中で、いろいろあって降板したピエール瀧の名前も出していたのに、何人かは「週刊ニッポンの空気をつないでくれた皆さん」として、固有名が挙げられていなくて、その中に、武田砂鉄が含まれていた。

 だから、こうして、言われるのを分かっていて、わざと外したんじゃないか。といったことを武田砂鉄は、話していたのだけど、こうしたを作れるところもすごいと思い、しかも、「たまむすび」のパートナーの一人の博多大吉が、赤江珠緒が戻って来れるようにポッドキャストを始めるというのだから、やっぱり、すごい力を持ったパーソナリティなのだろう、と思った。



(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



#ラジオ番組    #パーソナリティ    #ラジオ   #コンテンツ会議
#たまむすび   #赤江珠緒    #最終回   #答辞   #御礼

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

記事を読んでいただき、ありがとうございました。もし、面白かったり、役に立ったのであれば、サポートをお願いできたら、有り難く思います。より良い文章を書こうとする試みを、続けるための力になります。