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ラジオの記憶㉑「藤井隆の凄さ」を、ライムスター・宇多丸に教えてもらった。

 TBSラジオの歴史を変えた、とも言われている「アフター6ジャンクション」……通称「アトロク」は、2018年から開始して、コロナ禍の時代になっても続き、4年目を迎えている。

 先日、藤井隆がゲストとして出演していた。

 パーソナリティ・ライムスター宇多丸氏が、「ウィークエンド・シャッフル」(以前のラジオ番組)の時から、ずっと評価が高かったのが藤井隆で、今回は、自らがプロデュースした、フットボールアワー・後藤輝基のカバーアルバムをリリースするタイミングで、番組に登場した。

「藤井隆」という人

 藤井隆という人は、不思議なポジションにいると思う。

 最初は、突然、踊り出して「ホット、ホット」と叫ぶような、いわゆる「一発屋芸人」のように登場し、歌もヒットし、その後に「マシュー南」という「キャラクター」として番組を担当したあたりから、これまでの芸人の中だけの人ではないという感じが強くなってきた。

 そして、その異質感が決定的になったのが自主レーベルを設立して、活動を始めた時だった。

 最初にカバーした曲の選択も独特だと思ったのだけれど、その凄さのようなものを改めて知ったのは、ラジオの番組だった。「ウィークエンド・シャッフル」で、「国産シティポップ最良の遺伝子を引き継ぐ男」と、藤井隆の音楽活動のことをライムスター・宇多丸氏が絶賛に近い評価をしていたからだ。

 このアルバムを聞いて、気持ちよかったのだけど、それほど強い印象が残らなかったのは、「国産シティポップ最良の遺伝子を引き継ぐ男」という言葉で期待が高まりすぎていたのか。もしくは、自分の音楽に対する理解力などが不足していたのかもしれない。

プロデューサーとしての力

 再び、藤井隆の音楽活動のことをよく聞くようになったのは、芸人の後輩でもある麒麟・川島明の声を生かすように歌ったり、サックスの演奏のプロデュースをして、川島の声の力を改めて伝えてもらった気がしたときだった。


 さらに、2022年になって、フットボールアワー・後藤輝基をプロデュースして、「アトロク」に登場し、ライムスター・宇多丸氏とも話をしていた。

 麒麟・川島の時よりも難しいのでは、と勝手に思っていたのは、フットボールアワー・後藤は、「ゴッドタン」というテレビ番組で、笑いと切り離せないギターと歌唱のイメージがついてしまっていることだった。それは、後藤本人も知らないうちに意識してしまうから、完全にシリアスに歌うのは、より困難に思えた。

 ただ、「アトロク」での、藤井隆のプロデュースに関する話を聞いて、その凄さが、やっとわかった気がした。

 僕はレコーディングっていうものをそんなにたくさんやっているわけじゃないんですけど、ああいう現場って「もうちょっとキーを高めに」とか、あるいは「もうちょっとリズムを詰めて」とか、音楽的要素で指導していくような勝手なイメージがあったんですよ。そしたら藤井さんは「いや後藤くん、違うねん」と。「この曲は大御所の役者さんが『歌ってくださいよ』と言われて、当日なんとなく覚えて歌った歌がものすごくよくて、『これでいいの? じゃあね』と帰っていく曲の雰囲気やねん!」って……わかれへん(笑)

 この言葉↑は、吉田豪氏が後藤輝基へインタビューした記事から引用したものなのだけど、これと似たことを、ラジオ番組でも語っていた。

 これは、音楽のプロではないのだけど、イメージの力が豊かで、その上で笑いの意識が強いはずの芸人にとって、かえって、「歌う」ことへ集中できるような「指導」のようにも思えた。

 自分にとって理解し難いことを言われて、それを想像しようとするときに「自意識」の働きが弱くなるはずだ。それを、よく知っているのが藤井隆で、それはプロデュースとしては、独特でありながらも、その人の力を最大限に引き出す方法だと思った。

 音楽の時には、笑いを忘れられるのが藤井隆の凄さかもしれない。

 そして、そのことをライムスター・宇多丸氏によって、初めて気づくことができた。




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