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宝物探しゲームに託した願いに涙腺崩壊

この記事は映画「永遠のこどもたち」のレビューです。

ラウラの愛息シモンが失踪して9カ月が過ぎても何の手がかりも掴めない警察に業を煮やした彼女は霊媒師に捜索を依頼しましたが霊媒師は「ラウラ、私たちのように死の近くにいる者は死者のメッセージを受け取りやすいの。あなたは強い母親よ。導いてくれるわ。シモンのためにどこまで行くか、決めるのはあなた自身よ。」と意味深なことを言い残して去って行きました。

失踪前のシモンは海沿いの洞窟からトマスを家に招き入れました。その家はラウラが子ども頃に育った孤児院でした。彼女はここに助けを必要とする子供達を世話するホームを新設つもりでした。それが彼女の長年の夢だったからです。

シモンはママに友達6人と宝物探しゲームをしていることを明かしました。そのゲームは盗まれた自分の宝物を見つけ出せたら自分の願いが叶うというものでした。

早速シモンの宝物が盗まれました。シモンとママは出されるヒントを頼りにあちこち探し回りコインを見つけ出すことができました。シモンはこれで自分の願いが叶うと大喜びしましたが、コインがあった場所はシモンに関する秘密書類の中でした。その書類には彼が長く生きられない難病に罹患していることと養子であることが記されていました。

このゲームの前にシモンは“ママはいつ死ぬの?”と訊ねました。ママが”あなたが大人になってから“と言うと”僕は大人になれない。友達の6人も僕と同じだ“と言いました。その事実をシモンに伝えたのは6人の友達の中の一人トマスでした。

ラウラが養子縁組でこの孤児院を去った後にここで忌まわしい事件が起きました。ある日トマスがいなくなり海で彼の遺体が発見されたのです。原因は孤児たちの意地悪でした。トマスは顔が醜く崩れていたため、人目を避け密かに育てられていました。孤児たちは洞窟の中で顔を被っていたマスクをはぎ取り外に出てくるか試したのでした。5人の孤児たちは罪に問われませんでしたが、何者かに毒殺されました。ラウラはこの孤児院で短期間働いていたベニグナの交通事故死からこの事件のことを知りました。しかも彼女はトマスの母親だったのです。シモンの失踪から9カ月が経っていました。

ラウラは霊媒師の言葉からシモンを見つけるヒントを得ました。そう、シモンがやっていたあの宝物探しゲームです。ラウラの宝物はシモン!ラウラは言います。「あの子を諦めることはできない。私はシモンと一緒にいたいの。あの子を捜し出したい。ただ会いたいだけなのよ。」

ここを一旦去ろうと提案した夫と言い合った日の数日後、突然、窓ガラスが割れました。窓枠の下にある据え付けの長椅子の板を取り外すと人形が5体並べられていました。ラウラはクローゼットから自分の人形を持ってきて空席の場所に人形を納めました。ラウラは孤児院で人気者だったのです。すると、ラウラの隣の人形の下に写真がありました。宝物探しゲームの始まりです。最後に手にした物は模様付きのドアノブでした。

ラウラは同じ模様のドアノブの付いたドアを探しますが見つけたのはシモンではなく、ベニグナに隠されたラウラの友達5人の白骨化した遺体でした。ラウラは彼らにシモンの居場所を教えてもらうためにある遊びを試みました。それは彼らが遊びたがっていると思ったからです。「達磨さんが転んだ」は孤児院に居たときによく遊んだ遊びです。先生の制服を着たラウラが鬼になって振り向くと当時のままの彼らが一人二人と少しずつ集まってきました。肩を叩かれたラウラが彼らを追いかけると階段の壁の物置の小部屋の所で姿を見失いました。小部屋の中を調べるとドアノブのないドアを見つけあの模様のドアノブを穴に差し込んでそのドアを開けて見ると、目の前には地下に続く階段がありました。その地下室はトマスの部屋でした。ここがシモンの居場所だったのです。階段の壊れた欄干の下に横たわっていたシモンの白骨化した遺体をを見てラウラは思い出しました。新しいホームの開設の日、ラウラはシモンに階下へ来るように言いましたが彼はママにトマスの部屋を見て欲しいと駄々をこねたため彼の頬を叩いて「好きにしなさい」と言って階下へ戻りました。シモンは程なくして姿を消しました。そのあとラウラはシモンを必死に探しましたが見つかりませんでした。ラウラはミスを重ねていたのです。ラウラが階段の壁のドアを開けたとき鉄製の支柱が廊下に倒れてかかって来たので力任せに押し返しドアをふさいでしまっただけでなく物音にも注意を払いませんでした。その結果シモンは9カ月の間トマスの部屋に閉じこめられることになったのです。ベニグナを責められますか?5人の友達を責められますか?ラウラの正義は完全に崩壊しました。

シモンの死体を抱いたラウラは子供達の寝室に行き窓枠の下の据え付けの長椅子に腰掛けシモンの顔を撫でながら「ようやく見つけたのに。やっとあなたを・・・」と言って大量の薬を飲み深い眠りに落ちました。

ラウラが次に目覚めたとき目の前に生前の姿のシモンがいました。ラウラはシモンに幾度もキスをして抱きしめました。シモンはママに言いました。「僕、コインを見つけたから願い事をするよ。ずっとここでみんなの面倒をみて・・・」。二人が8つのベッドの方へ目をやると、ベッドには女の子のマルティンとリタと盲目のアリシア、男の子で長髪のビクトルと顔の側面に機器を装着したギレルモがいました。そこに顔を被うマスクを手に持った素顔のトマスが寝室の扉を開けて入ってきました。彼はアリシアの手を取ってラウラのもとに連れて行き彼女の顔を触らせました。アリシアが「ラウラよ」と言うと子どもたちは“ラウラ”“ラウラ”と口々に叫びながら彼女のもとに寄って来ました。ギレルモが「大人になっている!ウェンディみたい」と言ったら子どもたちは大笑いしました。シモンが「おうち」「海」「永遠のこどもたち」と言うと、ママは昔話を始めました。子どもたちは座ってラウラの話に聞き入りました。ラウラはこれから7人の助けを必要とするこどもたちの世話をすることになります。それが彼女の長年の夢でしたから・・・

ラストのこの光景に涙が込み上げて来ます。それがあの世の光景だったからです。生きているうちに助けてあげられなかったのかと思えば思うほど切なくて涙が止まりません。この映画の原題「孤児院」は「シックス・センス」と肩を並べるホラー映画の傑作だと思います。

(See you)



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