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昨晩は片倉佳史さんと台湾の平たいライスヌードゥルについて対談しました。

 昨晩は粿仔(kóe-á クエアー)などの平たいライスヌードゥルについて話しました。日本語の中での「麺」という言葉は原料が何であれ、細長くヌードゥル状に加工した食品の総称ですが、台湾や中華圏では「麵(麺)」は小麦粉をこねて作る食品一般を指します。だから細長い物に限らず、餃子や中華パイ、中華マントウの類も「麺類」になります。日本人のイメージする「麺」は「麵條」と言います。台湾人が普段日常会話の中で「麵(麺)」とだけ言う場合は日本人のイメージする「麺」を指すことが多いので、台湾に長く住む人でも気がつかないことが多いかもしれませんが、台湾人が「麵食」と言った場合は確実に小麦粉加工食品全般を指しています。それに対して、米の粉と水を混ぜて蒸したものから生地を作り、加工した食品は細長いヌードゥル状の物でも「麵(麺)」とは呼びません。

 米(インディカ米であることが多い)を主な原料とするヌードゥル状の食品、つまりライスヌードゥルには様々な物があります。断面が丸いライスヌードゥルの代表は米粉(bí-hún ビィフン)ですね。他に米篩目(mí-chhî-muk=台湾客家語/bí-thai-ba'k=台湾ホーロー語)がありますが、他に断面が長方形になる平たいヌードゥル状の食材も数多くあります。平たいライスヌードゥルは台湾ホーロー系、台湾客家系、香港・広東系、雲南系などによって、それぞれ呼び名が異なり、さらに製造メーカーや製作者によって、各原料(米や澱粉などの添加物)の成分や製作方法、太さや厚さ、形状なども違ってきます。かなり幅広の物もあれば、かなり肉厚な物もあり、色味も真っ白い物から半透明の物まであります。純粋に米の粉と水だけでも作れますが、サツマイモやジャガイモ、片栗粉、タピオカなどの澱粉を混ぜることで、弾力が増し、切れにくく、ツルツルで口当たりもよくなり、台湾人の好きな食感であるkhiū-teh-teh(キウテェテッ)、つまり歯ごたえもあるけれど、心地よい弾力性も十分にあるという状態になります。しかし、米の粉の割合が多い方が香りがよく、美味しくなるようです。

 この平たいライスヌードゥルは、米粉や米篩(苔)目など断面が丸いライスヌードゥル同様にスープ料理や炒め物、そして和え物などに使用されます。台湾のレストラン、食堂、屋台などの飲食店で食べられる平たいライスヌードゥルの主な物に、台湾ホーロー系の粿仔(kóe-á クエアー/粿仔條=kóe-á-tiâu クエアーティアウ=ホーロー語発音)、台湾客家系の面帕粄(mien-pha-pán ミィエンパァパン/粄條 pán-thiàu パンティアウ=客家語発音)、香港・広東系の(河粉 ホーフェン=華語発音)、雲南系(粑粑絲 パパス=華語発音)や(米干 ミィカン=華語発音)などがあります。台湾本土系住民のホーロー系と客家系以外のエスニックのライスヌードゥルもよく見かけるのは香港からとミャンマー(雲南系、福建系、広東系華人や傣族など)からの移民が多いからです。

粿仔(kóe-á クエアー)/粿仔條(kóe-á-tiâu クエアーティアウ)/粿條(kóe-tiâu クエティアウ)
粿仔(kóe-á クエアー)/粿仔條(kóe-á-tiâu クエアーティアウ)/粿條(kóe-tiâu クエティアウ)
粿仔(kóe-á クエアー)/粿仔條(kóe-á-tiâu クエアーティアウ)/粿條(kóe-tiâu クエティアウ)
面帕粄(mien-pha-pán ミィエンパァパン)/粄條(pán-thiàu パンティアウ=客家語発音)

 また、中国華南地域からの移民やその子孫が多く暮らす東南アジアのマレーシアやシンガポール、インドネシア、タイ、ベトナムなどにも台湾ホーロー系の粿仔條と類似した食品があり、地域によっては台湾ホーロー語とよく似た呼び名で呼ばれています。ベトナムの平たいライスヌードゥルのフォーは近年、日本人の間でもよく知れ渡っていると思いますが、シンガポールや香港などでは平たいライスヌードゥルを閩南語系(福建語や潮州語)の発音であるクエティアウの音訳からの漢字表記で「貴刁」と書く場合も多いです。

 台湾の屋台の看板や食堂のメニューなどでどう読むのか、または何の料理なのかわからないものに遭遇することがよくあると思います。中国語学習経験があったり、台湾に長く住む人にとってもどう読むべきか、何を指す料理名かわからないものが多く存在します。そういうものは大抵、台湾料理の名称で台湾語で読むべきものに多いと思います。 例えば今回紹介した粿仔(kóe-á クエアー)などはその代表でしょう。粿仔には粿仔條(kóe-á-tiâu クエアーティアウ)や粿條(kóe-tiâu クエティアウ)という言い方、表記もあります。粿(kóe クエ)は米の粉と水を混ぜて蒸したものから作る餅状の生地で、餅菓子の材料にも使われます。

代表的な餅菓子=紅龜粿(âng-ku-kóe アンクゥクエ) /客家語では紅粄 (fùng-pán フォンパン)

 この餅菓子を作る文化も東南アジア各地に伝わり、マレー語やインドネシア語に外来語として「クエ」 が取り入れられ、ケーキやお菓子類を指す名詞になっています。粿仔(kóe-á クエアー)の他に外国人、日本人には読みにくい料理に油粿(iû-kóe イウクエ)と呼ばれる屋台料理があります。小型で円版状の芋粿(ōo-kóe オォクエ=タロイモ餅)を低温の油で軽く揚げた料理です。

 油粿(iû-kóe イウクエ)の作り方は、❶先ずご飯をミキサーで水と混ぜ合わせ、液状にしておきます。 ❷次に容器にご飯を液状にしたもの、インディカ米の粉、サツマイモの粉、水、砂糖、 塩、白胡椒、そしてタロイモを角切りしたものを入れ、均等に混ぜ合わせ、液体にします。❸鍋を火にかけ熱した後、油を少量敷きます。手順2で作った液体を鍋に入れ、かき回しながら炒めて、餅状=粿 (kóe クエ)になったら火を止めます。 ❹両手に手袋をはめ、表面にラードを塗り、粿を掴み取り、大きな塊にして、それをクッキングシートを敷いた蒸篭(せいろ)に入れ、蒸し鍋に移して、タロイモが透明になるまで蒸します。粿が蒸しあがったら取り出して、放置して冷ます。 ❺食べる時、先に鍋に適量のラードを入れ、熱しておきます。その中に蒸し上がった粿を入れて、ラードの中に浸しながら、柔らかく、透明になるまで軽く揚げます。 ❻取り出して、白胡椒をふりかけ、お好みのタレ(とろみ醤油や味噌、チリソース、 砂糖、おろしニンニクなどを混ぜたもの )と細かく刻んだ芫荽(iân-suinn エンスイ=コリアンダー)をかけます。

油粿(iû-kóe イウクエ)
油粿(iû-kóe イウクエ)

 上の写真の屋台のメニューにも粿仔(kóe-á クエアー)が書かれていますね。この屋台の店主も店を手伝っている人もお客さんも皆んな台湾語でやりとりをしていました。例えばこの屋台のメニューの中で台湾語(ホーロー語)発音で呼んだ方がいいと僕が思っているものは以下の通りです。豬肝湯 (ti-koann-thng) / 烏白切 (oo-pe'h-chhiat) 油麵 (iû-mī) / 乾麵 (ta-mī)/ 青菜 (chhenn-chhài) / 米苔目 (bí-thai-ba'k) / 米粉湯 (bí-hún-thng) / 大腸湯 (tōa-tn̂g-thng) / 粉腸湯 (hún-tn̂g-thng) / 肝連湯 (koann-liân-thng) / 豬心湯 (ti-sim-thng) / 貢丸湯 (kòng-oân-thng) / 意麵 (ì-mī)


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