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戸越銀座商店街の片隅のアクセサリー屋さんで指輪を買ったら友達が100人増えた

わかさんが私の記事を紹介してくださった。

そしてたくさん褒めていただいてとても嬉しい気持ちになっている。このようなことがあるとnoteで文章を書いていて本当に良かったなって思う。ただただ嬉しい。
そしてその紹介していただいたのは、記事のタイトルについての文章である。
私が架空に考えたタイトルの文章を読んでみたいとおっしゃっていただいた。
紹介していただき嬉しかったので即興で作ってみました。もしよろしければ読んでみてください。

以下フィクションの話です。また「私」は女性という設定です。

◇ 戸越銀座商店街の片隅のアクセサリー屋さんで指輪を買ったら友達が100人増えた


商店街が好きだ。商店街ってただ物を買いに行くだけではなく、お店の人との関係性があり、その商品をそのお店で買うありがたさを実感できる場所だと私は思う。

商店街はスーパーとは違い、そこに行けば手軽になんでもそろうということはない。
商店街はそういう意味では不便であるかもしれない。

野菜は八百屋、肉は肉屋、お米は米屋など必要なものを売っている店を探してそこに行かなければいけない。
効率的でないと言われればその通りかもしれない。

でも機械的に物を買うのではなく、商店街で物を買う時はストーリーがある。
「このキャベツは長野産で特に甘いよ」などというお店の人のセールストークを聞き、それなら買おうか、という気持ちになる。ただの商品一つにもその背景がある。そんなことを気付かせてくれるのが商店街なのかなと思う。

商店街って商品とともにストーリーを売る場所なのかなって私は勝手に思っている。


でもそれは私が商店街についてかけがえのない特別な経験をしたからそう思うのかもしれない。
そんな私だけのスペシャルな体験を今日は書いてみたい。


その日、私は戸越の踏切の前で泣いていた。


それはなぜかと言えば、陳腐な話だけど、彼氏にふられたから。

戸越に住んでいた彼氏の家に行ったら、ものすごく淡白な扱いを受け、なんでそんなに冷たいのと迫ったら他に好きな人ができたと言われた。

そう言われたらそれ以上執着するような彼氏でもなかった。大学の同じサークルで飲み会に行くとなんとなく隣の席になり、そこで仲良くなったと勘違いして惰性で付き合ったような彼氏。ファッションセンスが微妙で足が臭い。

そんな彼氏っていらないよなって思いつつ、単純に他人に拒絶されることが悲しくて、戸越の踏切の前で泣いた。

でもひと泣きするとすっきりして、もう金輪際来ないであろう戸越を最後に見てやろうという気持ちになった。
私の元彼の家は戸越の踏切を挟んで戸越公園の方にあった。だから戸越公園商店街には馴染みがあったが、有名な戸越銀座商店街の方には行ったことがなかった。

どうせ戸越に来るのも最後であるし、戸越銀座商店街に行ってやろうと、踏切の向こう側に行ってみた。

さすがは全国的にも有名な商店街である。活気がすごく人も多い。戸越公園商店街だっていい商店街だが、戸越銀座商店街は独特の華やかさがある。
私は足が臭いくだらない元彼のことはもうどうでもよくなっていた。戸越銀座商店街に来るくらいでどうでもよくなるって大して好きじゃなかったんだなってその時に気が付き、なんだか面白おかしいような気持ちにすらなった。

そんな中で私は路地の片隅にあるアクセサリー屋さんに入ってみた。失恋した私にお店が微笑んでいるような気がして、導かれるように入ってしまった。あんまり軽々しくこんなことって言いたくないが、こういうところに運命って転がっているんだと思う。

そこのお店にはハンドメイドらしきアクセサリーがたくさんおいてあった。
可愛らしい指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアスが所狭しと並んでいる。
レジの前に立っているおしゃれなお姉さんが作った物なのかなと見ていると、それぞれの作品の作風が違いすぎる。

お店のお姉さんは私に向かってさりげなく「趣味でハンドメイドしている人の作品を集めて、売っている店なんですよ。趣味でもレベルの高い物を作っている人っていっぱいいるんです」優しい口調で伝えてくれた。

ここにある商品は全国各地の個人がそれぞれの想いをこめて作った物であり、このお店のお姉さんを通して誰かのもとに運ばれるのかと思うとなんだかワクワクした気持ちになった。

私はそのお店で300円のかわいい指輪を買った。このかわいい指輪を作ったのはどんな人なんだろう、そしてこの指輪が売れたことを知りその人はどんな気持ちなるのかななんて考えた。

もう元彼などどうでもよく、商品ってただ買うだけのものではなく、人と人の気持ちを繋ぐ物なんだなって思い、高揚した気持ちで家まで帰った。

私は不器用でハンドメイドなどできそうもない。でも素晴らしいハンドメイドを作っている人がきっとたくさんいる。
私はその人たちのために何かをしたいと謎の使命感にかられた。

その当時はまだネットショップというのが今ほど盛んでなかった時代だった。ただ私は情報系の学部に通っていた大学生であり、インターネットを通して商品を売ることに可能性を感じていた。

そこで私は◯◯ブログでハンドメイド作家さん大募集というアカウントを立ち上げた。
私に儲けはいらないが、ハンドメイド作家さんの家に眠っている作品を私の記事で紹介して、それを見てくれた人に売ろうとした。

私は個人のハンドメイド作家のホームページやブログを探し、そのコメント欄に、私の記事でも紹介していいですか?ということを書きまくった。
怪しいと思われることも多かったが、「いいですよ」と快諾してくれる人もいた。

そして私のブログ記事を通して商品が売れることも少しずつでてきた。
ハンドメイド作家さんたちからは、私のブログを通して商品が売れると感謝のメールやコメントが届く。

その中でも嬉しかったのが「あなたはあなたの得にならないのに私の作った物を素晴らしい物って言って紹介してくれるのね。あなたは私の友達です。だって友達じゃなきゃ損得を考えずに何かしてくれないでしょ。ありがとう」というメールだった。

もともと友達が少ない私には心の奥がじんわりするような暖かい言葉。

このハンドメイド作家さんの商品を売るブログを始めて8年がたつ。
そして先月、私のブログを通じて商品が売れたハンドメイド作家さんがちょうど100人になった。

友達が100人になったのかなって暖かい気持ちになった。これからも長く続けてもっともっと友達を増やしたいと思っている。

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