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人生で一番美味しいカレーを食べた日

私はカレーライスが好きだ。
給食のカレー、欧風カレー、インドカレーなどカレーと呼ばれるものはどれも大好物である。

しかしその中でもとりわけ好きなのは、母が作ってくれた我が家のカレーである。
こうやって書いてみるといい歳をして、実家の料理至上主義みたいで気持ち悪い。

しかしカレーについてだけは自分で料理するならば、小さい頃から食べていたカレーを作りたいなと思ってしまう。

カレーに関しては何故だか原点ともいえる味が一番だと思い続けている。

そんな中でこの前の休日に5歳の娘が「パパとカレー作りたい」と言ってくれた。予定のない休日で何をしようかと悩んでいたところ、娘から提案してくれた。

娘は私がカレーが大好きなことをよく知っていて「パパはカレー好きでしょ?一緒に作ったらパパ喜ぶと思って」と妙に大人びたことを言いつつ、料理好きな娘は張り切っていた。

それならば私が小さい頃から食べてきたカレーの作り方を娘に伝えようと思った。

そこで食材を買うところから娘と一緒にやってみたくなった。
一からのカレー作り。きっと娘はやりがいを感じてくれるはずと信じて、娘とじっくりカレー作りに向き合ってみることにした。

まず私はカレーの材料を紙に書いて娘に渡して、一緒にスーパーに向かった。

娘は「えーっとにんじん一つ、たまねぎ二つ…」などとメモを読みつつ探している。
「にんじんあった!たまねぎとじゃがいもも!」「野菜は近くにあるんだね、パパ!」と嬉しそうである。

私の作るカレーは牛のスネ肉を使う。スネってパッケージに書いてあるお肉を探してと伝えると、かなり時間はかかったが「スネって書いてあった!これでしょ、パパ!」と世紀の大発見のように喜んでいたので、私もなんだかテンションが上がった。

帰ってからはいよいよ調理開始である。
娘には「一人でできた」という達成感をもって欲しいのでなるべく私が手や口を出さないようにした。最初にピーラーで皮を剥いたが、ついついもっとこうしたらと思ってしまう。
でもアドバイスは最小限にして、娘に任せてみた。

野菜を切る時は、野菜が安定してまな板に置けるような形にしておいて、娘が一人で包丁で切れるようにした。

娘はパパが手伝わなくても一人でピーラーや包丁といった道具を使うことができたのがとても嬉しい様子だった。

私が小さい頃から食べてきたカレーは、最初に玉ねぎだけをじっくり炒める。
娘が「にんじんとじゃがいもとお肉は?」と聞くので、「お肉は別に炒めるよ。それでこの玉ねぎと一緒にお鍋に入れてたくさん煮るよ。にんじんとじゃがいもは、玉ねぎとお肉がよく煮えたら最後にちょっと煮るよ」と私のカレー作りのやり方を伝える。
「ふーん」と言いつつ、娘は真剣に私の話を聞いてくれている。

私の作るカレーは牛のスネ肉を使うので、最低でも2時間は煮込む。「この灰汁っていう白い汁を取ると美味しくなるんだよ」と伝えて、15分ごとにタイマーをかけて、何度も灰汁取りをした。娘はなるべく灰汁だけをすくうことに苦戦しつつも、一生懸命やってくれた。

いい感じでスネ肉と玉ねぎが柔らかくなったところでにんじんとじゃがいもを鍋に投入してしばらく煮込み、最後にルーを割り入れた。「パパ!カレーの匂いしてきた!」と娘はワクワクしている。
ルーがよく溶けるようにおたまで混ぜるのも楽しそうにやっている。

出来上がったカレーは私が食べたカレー史上一番美味しかった。
娘と作ったカレーは幸せを感じる最高の味だった。私はこれまでの人生でかなりのカレーを食べてきたが、間違いなくこれがベストのカレーだと断言できる。

娘は普段は超偏食で野菜は絶対に食べない。
しかしこの日はにんじんもじゃがいもも食べている。娘は「パパと作ったカレー美味しい、また一緒に作ろうね」といつになく嬉しいことを言ってくれる。

2歳の息子も「ねぇねのカレーおいちいね」と満足そうである。
それどころか「ねぇねのカレー!ねぇねのカレー!」と椅子の上に立ち、踊り出すくらい喜んでいる。

私が小さいころから食べてきたカレー。
それを娘に伝えて、一緒に作ってみたら娘も息子も大喜びだった。
家族の味って美味しいし、家族愛を体現するものなんだなって感じた。

娘はカレーを食べ終えると「またパパの好きなカレー、一緒に作ってあげるね」と言った。
妙に上から目線の娘の発言ではあるが、娘とカレー作りをして、美味しいカレーを食べて幸せを実感できた一日だった。

幸せのカレー。
また娘と一緒に作りたい。

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