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200年続くみかん農家へ脱サラ親元就農!貴志さんにお話しをきいてみた

県内で生産者さんをまわっていると、農家の跡継ぎ問題はよくトピックに上がる。この問題についても色々と取り組みを考えていきたいと思っていたところ、同じ会社で仲良くしていただいていた貴志課長が退社され、200年続く実家のみかん農家を継がれる予定だということを伺った。既に有給消化中で、ご両親の畑で見習いをしながらみかんの勉強中だという。貴志さんが会社にいなくなってしまったのは悲しいが、新たなスタートを切った貴志さんに今後のことを聞いてみたいと思い、有田市の畑をおとずれた。

農家見習いの貴志さんについて

貴志さんは現在、和歌山市内のご自宅から有田市のご実家に通う形で農業をされている。今まで、就農と聞くと農園のすぐ近くに住むようなイメージが強かったが、最近は田舎に通い農業をするパターンも多くなっているそう。有田市のご実家に到着すると、お父さんやお母さんも出迎えてくれた。

畑へと案内してくれるお父さんと貴志さん。貴志さんは5人兄弟の3番目。

「ちいさい頃から畑にいることが好きで、百姓の仕事を見るのも、やってみるのも好き。収穫の時期も必ず畑で手伝いをしていました。兄弟の中でも、一番楽しそうにやってましたよ。収穫の時期はチョキチョキとハサミの音のテンポがよくて、この子はみかん仕事がうまいな!と近所の人が褒めたほど!」と嬉しそうに教えてくれたのはお母さん。

もともといつかは就農、という話をしていたのかと思って伺うと、全くそうではないらしい。貴志さんが畑を継ぐと言い出した時はお父さんと2人、びっくり仰天したそう。(自分たちの代で専業農家は終わりかと感じていたというご両親は、既にみかん畑の一部を近所の方に譲る準備を始めていたらしい・・・!)

そんなご両親は、息子が継いでくれると聞いて、急いで畑の一部を買い戻した。お父さんも息子にひとつ残らずノウハウを伝えるのだと一層気合が入っている。

ご自身の強い意志で脱サラ就農!きっかけは?

会社でも課長として部下をまとめ、活躍されていた貴志さん。社内の新たな取り組みにはいつも積極的に参加し、優しくて周りからの信頼も厚い。
そんな貴志さんがみかん農家に転身されるきっかけは何だったのだろうか。

きいてみると、「続いてきたものをきちんと継続したいと思ったから。」という答えが返ってきた。

200年続いているみかん農家。先代が仕立ててきた木を自分の代から更に未来へも引き継ぎたいという想いが強くなる中、ご両親が現役のうちに学べることをすべて学びたいと感じるようになった。
貴志さんは現在47歳。挑戦するなら今だと思った、と話す。

みかん畑でのお父さんと貴志さん。

畑に通うようになって、みかん仕事の1つひとつの作業の意味や、作業を効率よく行うコツもつかめるようになってきているという。
畑に寝転がって四季を感じたり、父の仕立て上げた木のカッコよさに感動したりもする。

退職を会社に伝えた時、多くの社員が「応援しています。」と声をかけてくれた。まずは今年、自分を応援してくれている人たちにおいしいみかんを届けて、こっちでも頑張っているよという事を伝えたい、と話す。

農園のイチオシ品種「カラー」

そんな貴志さんの畑の自慢の品種は地元の人も「カラー」と呼んで親しんでいる「カラマンダリン」という品種。この時期に採れる柑橘の中では珍しい手で剥けるタイプで、温州みかんを2~3度上回る14度以上がスタンダードだ。貴志さんの畑でお父さんが1つ実をとってくれたので糖度を計ってみると、15.7度というおどろきの数値が出た。果肉もトロっとしていてジュースを食べているような感覚。果汁が滴ってくる。

15.~16度という糖度はブドウやメロン並み。甘さに定評があるのが「カラマンダリン」

お母さん曰く、こちらはタネが入っているのにファンが多いちょっと特殊な逸品。とにかく跳びぬけた甘さと、そのトロトロの果肉の食感は他のどの柑橘とも似つかない。

貴志さんの畑になるみかんの中でも上位の人気品種だが、冬の寒い時期に袋掛けの作業を行わなければならない非常に世話に手間のかかる品種でもあり、その分どの農家も、あまり多くは生産できていないというレア品種だ。
収穫時期も短いので、旬を逃さないようにしたい。

こんな風に黒い袋がかけられている。これならヒヨドリに見つかる心配もない。

さいごに

今回の農家訪問は、商品よりも「貴志さん」という人に注目してお話を聞いた。

200年という歴史の重さと、将来の農園への不安、そして百姓、という仕事の本当の楽しさや奥深さを思いながらも、自身の子供たちには農園の今後の話はしてこなかったお父さんとお母さん。貴志さんが自ら畑を継ぐと言った時の嬉しさは、きっと言葉では言い表せない。楽しそうに畑仕事の話をする貴志さんを見て、私まで嬉しい気持ちになってしまった。

オンラインマルシェを運営する上で、商品だけではなく、それを作る人の気持ちを伝えることを今後も大切にしていかなければいけないなと改めて感じた。


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