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ブランドを知れば100倍楽しくなる、サツマイモのお話

4種のサツマイモの販売を開始した。「シルクスイート」「紅はるか」「安納芋」そしてブランド名が「紀州金時」という金時芋だ。スーパーの野菜売り場に並んでいるサツマイモは単に「さつまいも」のみの表記であることが多いので、あまり意識することはないが、ブランドによって特徴や生産地、風味や硬さ食感が異なることを知っていればお取り寄せも、少し楽しくなりそう。

そう思ったので、本日はサツマイモについて書いていこうと思う。タイトルのお写真にも登場しているのは、200年続くサツマイモ産地で5代目農家の小杉さん。むちゃくちゃ良い笑顔。

サツマイモは熟成されてから出荷される

サツマイモは掘り起こされたから、1ヶ月程度熟成されてから出荷されるのをご存知だろうか。(私は知らなかった!)産直サイト=採りたてのものを一番新鮮な状態で届けることが使命だと思っていたが、サツマイモに関しては熟成期間がキーらしい。
熟成とはさつまいもを一定期間丁寧に保存し、さつまいも内のでんぷん質を糖質に変える作業・工程のこと。全国のサツマイモ産地では「30日以上熟成ルール」たるものが設けられており、その熟成期間を経たものだけが市場に出荷できるそう。
熟成されたサツマイモは皮の色も鮮やかになり、甘味がぐっと増す。

熟成を重要視しているのは小杉さんも同様。単に1ヶ月熟成したからGOする、という作業ではなく、芋の個体差や品種の特徴を考えながら、おいしく熟成されたサツマイモから順に発送してくれる。完熟した芋は、焼いたときの蜜の染み渡り方でも見て取れる。焼き芋がおいしく作れるかどうかは、テクニックよりも熟成が上手くいっているかどうかが大きい気がする。品種によっても適した熟成期間が異なるので、プロの農家さんが熟成具合を見極めて発送してくれると安心。

ブランドサツマイモについて

サツマイモの出荷プロセスを説明したところで、いよいよサツマイモブランドのお話に入って行こうと思う。実は、品種で言うと農林水産省の品種登録データベースで116品種が登録されているというサツマイモ。産地ごとに異なるブランド名で販売していることも多いのですべてを紹介することはできないが、今回は5STAR MARCHEでも販売している4ブランドを説明したいと思う。

シルクスイート

2012年に苗の販売が始まったまだまだ10年選手のシルクスイートは、名前を聞いたことのある方も多いかもしれない。ほんのりした甘さが特徴の「春こがね」と、なめらかさが特徴の「紅まさり」のかけあわせ。そのしっとりとろりとした口あたりが「シルク」という名前の由来だ。

食感がとろけるように感じられるのは、お芋の繊維が少ないから。この特徴から、お菓子作りにも幅広く用いられている。

スプーンですくわれているシルクスイート。むちゃくちゃ美しい!

紀州金時

和歌山県和歌山市の「水軒(すいけん)」という地区で古くから栽培されているブランドさつまいもが、こちらの「紀州金時」。品種としては鳴門金時と同じだが、水軒地区の細かい砂地で作られた金時芋は皮が薄くてすべすべ。昔ながらの品種だからこそ、その独特の甘みのを引き出すための熟成期間がとっても重要になる。5代目小杉さんも、先代から引き継いだ教えを大切に、出荷するものの管理を徹底されている。
こういった、あまり消費者に見えていない部分はどんどん発信していきたい。そして、小杉さんの紀州金時はほんとうにおいしい。冷めても美味しい。

安納芋

ねっとり蜜芋の代表といえば、やっぱり安納芋。生の状態でも他のサツマイモと比べて水分が多く粘質性が高い。これを焼くとまるでカスタードクリームのような食感になるので、焼き芋好きの方は既に指名買いされている方も多いのではないかと思う。
私は毎年、石油ストーブの上で小粒の安納芋を焼いているが、皮がはじけて蜜があふれ出る安納芋の焼き芋は最高。
小杉さんに、焼いた安納芋のお写真を共有してもらったがもうこれだけでどれだけ甘いのか分かる。すぐにでも食べたい。

まんべんなく蜜が染み渡っている安納芋。おいしそう。

紅はるか

糖度が60度以上になることもあるというのが、こちらの紅はるか。熟成された紅はるかは、焼くとイモ全体に蜜がまわるほどだ。食感はねっとりというより、しっとり系。焼き芋屋さんにも特に好まれる品種で、甘いだけでなく、お芋としての味も濃厚なので食べ応えも抜群だ。
ねっとりした食感の安納芋に対し、紅はるかはしっとりほくほく。食感の違いは食べ比べしても楽しそう。

焼きたての紅はるかは皮までしっとりするほど蜜が多い!

塩水に一晩漬けて焼き芋にすると・・・

記事を書く流れで、社内でも「焼き芋って、食べる?」というリサーチをしてみたところ、手軽に炊飯器やレンジを使う派が30%、オーブンで焼き芋にする派が15%、焼き芋屋さんや、スーパーの石焼き芋を楽しむという方が10%、その他サツマイモは丸焼きにはせず、スイーツやおみそ汁の具、てんぷらなどお料理にのみ活用するという方が半数近くいた。

じっくり低温で焼き上げるのが糖度を上げるコツとして知られているが、トースター800Wで30分、の方法で焼き芋を作られている方が多かった。

面白いと思ったのが、「少ししょっぱい、と思うくらいの塩水に一晩漬けてから朝焼くと、浸透圧の問題からなのかよりしっとりおいしく焼きあがる!」という情報。
ネットで検索してみたところ、同様のレシピが多数紹介されていて驚いた。今年はこの焼き方にトライしてみたい。

「産地を守る」ことの意味。

かつては「水軒で採れるさつまいもはおいしい!」と、産地としても有名だった水軒だが、小杉さんが小学生のころと比べても農家さんが確実に少なくなり、現在は数えられるほど。「水軒」と呼ばれる地域も地名としてはなくなってしまっている。
そんな中でも、地元和歌山市周辺や飲食業界では、未だに「水軒のさつまいも」が知られており、評判が良いのだと知った小杉さんは、「産地の継続」を目指して就農された。

実際にサツマイモを生産される中で、「明治時代以前からサツマイモが作られていたのには理由がある。」「やっぱりここで作ったサツマイモはおいしい。」という事に気づいた小杉さん。
紀の川が運んだ砂は細かく上質でさらさらとした質感、水はけが抜群に良いし、和歌山の温暖な気候とも相性が良い。「紀州金時」というブランドで販売されている金時芋は、品種としてはなると金時と同じだが、水軒の砂質のおかげで皮の表面がすべすべしていて、見た目も良いのが自慢だ。

産地を守る、ということは、風景を残すということと深くつながっている。実際に、昔ながらの雰囲気が残る地域の風景の裏には、こうした生産者さんの想いや努力があることも少なくない。10年、20年先も水軒のサツマイモ畑が見られるように、5STAR MARCHEとしてはもちろん、私個人的にも和歌山県人として、消費者として、応援していきたいと感じる。

芋屋宮助の小杉さん。水軒のサツマイモ畑にて。

まとめ

いい季節になってきたので5STAR MARCHEで販売するサツマイモと、生産者小杉さんに関する記事を公開した。スーパーで購入できるサツマイモのようなお野菜でも、産地や生産者、ブランドの特徴について知識を深めることで気づくことが沢山ある。記事をご参考に、是非お取り寄せを楽しんでいただきたい。

▼芋屋宮助さんの商品一覧はこちら

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