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松村みね子訳「かなしき女王」と伊吹武彦訳「夜のガスパール」

 捨てられない本というのが出てきた。学生時代に神田の古本屋で見つけた本。一つは松村みね子訳「かなしき女王」。これはアイルランドのフィオナ・マクロウド短編集である。松村みね子は芥川龍之介の恋人とかいうのが頭にあり、その名を実際に見つけて驚いて買ったのだった。奥書には本名の片山廣子とある。大正14年(1911)第一書房刊。買った当時の書店のカバーがそのままついていて、神田神保町田村書店と書いてある。今もあるのだろうか。(あった。電話番号もカバーに書いてあるのと同じ〜〜すばらしい)

もうひとつは伊吹武彦訳ベルトラン「夜のガスパール」。古本屋の店頭にたくさんの文庫本と一緒に無造作に置いてあった。昭和26年(1951)三笠書房刊。三笠文庫。子供の頃に習っていたピアノの小柳芳子師のリサイタルのプログラムにラヴェルの「夜のガスパール」があり、その中の「スカルボ」の曲について、解説に「月光の差し込む部屋を転げ回る一本足の妖怪スカルボ」と書いてあった。なるほど、そんなイメージが感じられたが、全体はどんなストーリーなのだろうと長年思っていたところこの本を発見したのだった。

神田をフラフラしていたのは1968、9年のことだった。



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