貧乏子沢山について

昔から貧乏人は子供が多いと言われるが、男性の年収と婚姻率には明確な負の相関があるので、少なくとも貧乏な男性は子供を持っていないということが統計上は言えます。一方で女性は年収が高くなるとかえって婚姻が困難になるということが言えそうです。

年収が低い男性が結婚できないということは主に家庭の大黒柱が男性であることを考えると、イメージに反して収入が低い世帯の子供は多くないということが言えるでしょう。そもそも低収入同士の男女の結婚は成立しないし、子供も作るのが難しいわけです。実際のところは貧乏人は子沢山ではないと思われます。

世界的に近代化を進めると出生率が低下する傾向が見られます。経済成長はコンドームという言葉もあります。ですから、国家レベルで物質的に豊かになって出生率が上がるという経路は無いでしょう。

貧乏人の子沢山で私が最も印象的なのはアーミッシュです。世界最大の経済大国であるアメリカ合衆国において、移民当時の生活様式を保守するプロテスタントの集団です。彼らは一夫一妻で男女の性役割分担をして生活し、生殖は避妊しないで自然に任せるので、出生率は先進国の人間としては驚異的とも言える5や6といった数値を記録しているようです。

彼らは移民当時の生活様式を守っているわけですから、一般のアメリカ人よりも非常に貧しい生活をしていると考えられます。しかし、子沢山なのです。彼らこそがイメージ通りの貧乏子沢山です。

国家規模の統計上の低収入の人の未婚、子無し傾向とアーミッシュの間にある差は、アーミッシュが先進的資本主義社会の受容を拒否していることにあると考えられます。同じ国の中にいても、全く別の文化で暮らしているようなものです。これが貧乏人の子沢山の実相であり、近代国家の同化政策、労働力化に応じない貧しい人々の子沢山としたほうが望ましいです。

アーミッシュの集団内で見れば、仕事ができる男性が結婚し家族を維持できている傾向は一般的な他の集団と同じように見られると思われます。

18歳になるときに一度だけ俗世に出て自由な生活を試す機会を得るものの、殆どが故郷でアーミッシュとして生活することを選択のだそうです。つまり男性が都会に出て魅力的な仕事を探すこと、女性が都会に出て魅力的な結婚相手を探すことを封じ込めることに成功していると言えましょう。

出生率の低下による自然減と人口の流出による社会減のダブルパンチで過疎化が進む地方が、過疎をどうすれば止めることができるか、そもそもどうして過疎が進んでいるのかということについて、大いに示唆に富んでいます。

ヤンキー子沢山という言葉、イメージも一般的に広く流布しているでしょうが、現象としては近いことだと思われます。地球規模に拡大した資本主義社会から切断された価値観の世界に囲い込めば、経済的な豊かさを引き換えにして子供は増えるのだと思われます。


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